今回は、
タイワニーズ(故郷喪失者の物語)
野崎剛 著 発行所は株式会社小学館
著者は、1968年生まれのジャーナリストで、1992年朝日新聞社
入社、2016年4月からフリーとあります。
「タイワニーズ」とは、
本人や家族に多少でも台湾との血統的なつながりがあれば、
タイワニーズに当てはまる、と定義し(P298)
「大日本帝国から戦後へと続く日本、分断された中国、そして
出身地の台湾という東アジアの境界を行き来しながら、失われて
しまった自分の帰属すべき祖国・故郷を探し求めてきた人々が
タイワニーズでなのである」P310
構成と、登場人物を列挙すると
第1章 政治を動かす異邦人たち
第2章 台湾で生まれ、日本語で書く
東山彰良、温又柔
第3章 芸の道に羽ばたく
第4章 日本の職を変革する
羅邦強、安藤百福
第5章 帝国を背負い、戦後を生きる
続いて私の感想です。
私は知っている外国のなかで、一番台湾が好きです。
書籍やメディア、映像の世界だけでく、実体験としても少し
台湾を知っています。
非常に親しかった子供時代の友人の母親は、若い頃台湾で
聞かせてくれました。
当時はお嬢さん扱いだったそうです。
また、仕事やプライベートで、20代から50代まで、一人旅、
取引先の人、私的な友人、妻等々と台湾を訪問したことが
あります。
昼の世界と夜の世界、固いも柔らかいも、そこそこ経験
しています。
取り上げられているタイワニーズのなかで、直接ナマで知
について、少し書きます。
本書の邱永漢のサブタイトルは
国民党のお尋ね者が「金儲けの神様」になるまで です。
んだ超エリートであり、独立運動の大幹部で台湾のお尋ね者
であり、戦後初の外国人初の直木賞作家であり、そして日本
で恐らく初めて「金儲け」の正しさを理論的に堂々と説いた、
経済評論家でした。(P264)
そこで、娘の邱世嬪の評価も交えて、彼の実態を書くと、
若い頃の私にとっての邱永漢は、
「野心家の時間割(人生の商社となるために)」、「ズルきこと
神の如し」に代表
される、昭和の時代のエリートコースを熟知したうえで,あえ
て別のコースを歩んだ成功者の意識でした。
本人にとっては、自分は順風漫歩のマルチプレイヤーでなく、
文学者としても経済人としても「挫折者」であり、深い虚無感
を抱えていたことを、今回改めて認識したのでありました。
陳腐な表現ですが、
「誰しも生きていくのは大変であり、心の闇はみな持っている。
私も、今後とも、かっこ悪く、ずたずたになっても、死ぬまで
生き抜いていくべし」
と改めて思った次第です。
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