中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦前の中高年がざっくばらんに書きつける日記

「旅のラゴス」(読書感想文もどき)私も「一ヵ所に留まれない人間」にあこがれ

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旅のラゴス

 今回は、筒井康隆「旅のラゴスです。

新潮社の文庫版です。2014年1月の発刊ですが

作品自体は、昭和61年9月に徳間書店より刊行とのことです。

私はあまり小説は読みませんが、 

直近、さる書評に取り上げられていましたので、手に取ってみ
ました。
筒井康隆氏の文章は、久しぶりです。
ストーリとしては、

突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得した

世界で、生涯をかけてひたすら旅を続ける男ラゴスのことを書い

ています。

波乱万丈と書くと陳腐な表現ですが、ラゴスが王様になったり、

奴隷になったりします。

旅は、未だ十代と思われる若い頃から、70歳を超える老境、

「死への旅」と思えるころまで続きます。

  筒井康隆氏を一番読んだのは、高校生から大学受験の浪人

のころでしょうか。

私にとっての筒井康隆は、SF御三家の小松左京星新一に並ぶ
人であり、この三人ともよく読みました。
特に、「時をかける少女」には、思い出はあります。
また、エログロナンセンスの金字塔、プラスティックコメディ
の代表ともいえる「俗物図鑑」も特に印象深いものです。

最近では「誰にも解るハイデガー文学部唯野教授の最終講義)」

です。

 脱線です。いつも思うのですが「誰にもわかる」という言葉

は曲者で、皆それぞれ、感性も理解度も違う、本当に均等に

「誰でも解る」ということがありえるのだろうか、といつも

思います。

 「旅のラゴス」に戻ります。

極めて常識的な主人公、温かみのあるラゴスに好感が持てます。
文中から引用すると
「あんたはね、自分が正直でいい人間だということを知らない間
に撒き散らすみたいにして周囲の者に教えているんだよ。
それを感じとれない人間だっているんだろうけどね。
でも、たいていの人間はそれを感じることができるんだよ。」(P69)
(正直なラゴスへのコメントを女は続けます)
「褒めてるじゃないよ。それにそれは雰囲気なんてもんじゃない。
もっと確かなものだよ。ことばほど確かはないにしてもね。
それにそれは、ずいぶん危険なんだよ。
悪い奴につけこまれるからね。」(P70)
  
旅の顛末やSF的表現の巧みさ面白さはそれぞれ読者に楽し
んでもらうとして
「死への旅」になるかもしれない最後の旅の部分でラゴス
ことばを再度引用します。
それにわたしは、そもそもがひとっ処にとどまっていられ
る人間ではなかった。
だから旅を続けた。それ故にこそいろんな経験を重ねた。
旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。
たとえ死であってもだ。
人生と同じようにね。」(p249)
 
ここで中高年の独り言。
私のこれまでの旅はどうだったのだろうか、おそらく人生の
折り返し地点はとうに過ぎているだろうが、これからも死ぬまで
旅をつつけたい。
物理的に身体の移動を伴わなくても、良い。
納得のある旅とか贅沢は言わず、他人にどう思われようが、気
にしていない、ただひたすら旅をしていくだけ」というのが
今の私の気持ちでしょうか。

 

さて、最後になりますが、

解説を、科学史家・科学哲学者の村上陽一郎氏が書いています。 

個人的に村上陽一郎氏も、追っかけています。

解説からの引用ですが

「その旅は、むろん「死」への旅立ちには違いないが、自らの根源、自らの生を実現することが、本質的に自己完結的な営みでなく、

むしろ、他者に向かって開かれているものだ、ということを、

主人公は確信しているようにみえる。」(p257) 

 

あくまで私の理解度の話であり、勝手解釈になったやも知れません

が、今回は過去になかった筒井康隆体験でした。

 
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