中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

「分断の時代」(読書感想文もどき) 日本の役割大、同感です。

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分断の時代(混迷する世界の読み解き方)

分断の時代 

混迷する世界の読み解き方

岡部直明/著  

日経BP 2019.10
日経BPマーケティング(発売)

 1.概要紹介と若干のコメント

 今回は、直近の世の中の動きについて、政治と経済、両方の視点から分析したもの、ホットな本です。

日経ビジネスオンライン』連載を加筆し書籍化したもので、

直近記事は2019年7月、書籍としては2019年10月の発行です。

 目次を追うと、概要が見えてきますが

序章 漂流する「主役なき世界」の行方

第1章 米中「新冷戦」が招く世界経済危機

第2章 「新冷戦」がもたらす核の危機

第3章 トランプ大統領で米国の時代は終わる

第4章 「BREXIT」は英国の落日

第5章 混迷のEU、たゆたえども沈まず

第6章 資本主義が危うい

第7章 文明は世界を変えられるか

第8章 分断を超えて―日本の選択ー

 

日経ビジネスだから、というわけではないでしょうが

こじつけや変な勝手解釈は感じられません。

「いまを知る」うえで、フロー記事を追っておくのは大変だし、

漏れもあります。

そこで、一人の著者が自分の主張をまとめとして、書籍化したもの

の通読によって、より理解が深まります。

著者の主張は、

  • 分断の時代にあって日本の役割は重い
  • 日米同盟は重要だが、トランプ蜜月は危険
  • 新冷戦を防ぐために、アジア太平洋に融合の枠組み設立が肝心
  • TPPとRCEP(東アジア地域包括的連携)を結合し米国を呼び込むことが日本の指名
  • 核兵器なき世界」の先導が唯一の被爆国としての日本の責任

 2.個別論点ピックアップ

以下、個別キーワードを取り上げ、私のコメントを入れます。

太字化は私、( )内が私のコメントや同感

 新冷戦の時代は、国際政治と国際経済の接点をどう読み解く
かが最も重要
 国際政治と国際経済の垣根を超えて、世界を見てきたジャーナ
 リズムの出番 (P5)
 
(著者の見解である)トランプ大統領の「7つの大罪
  ① 保護主義・排外主義
  ② 地球の敵
  ③核の危機
  ⓸米欧同盟の亀裂
  ⑤民主主義の危機
  ⑥FRB乗っ取り
  ⑦極右ポピュリズムの蔓延 (P17)
 
 アジア太平洋の「扇の要」である日本は、最大の同盟国である
米国と最大の貿易相手国の橋渡し役を担っている(P26)
 
 アジア太平洋での貿易と金融の「大結合」は、アジア太平洋を世
界の成長センターとして維持させるのに、極めて有効だろう。
米中新冷戦を防ぐことにつながるはずだ。(P28)
 
 大統領の強権で企業の計画をくつがえさせることになれば、
資本主義の土台が揺らぐ。(P31)
 
 トランプ氏は排外主義の本質を簡単に変えるとは思えないが、
だからこそ国際社会と連携して粘り強く説得するしかない。(P35)
 
 国際社会の「法と秩序」を無視する戦略は、国際信認を失うだけ
(P39)
 
(著者の具体的処方箋)
 保護主義の危機を防ぎ、自由貿易を立て直すには、TPPと東アジア
 地域包括的連携(RCEP)を結合させるしかない。(P48)
 
(分析レベルはともかく、以下の論調は至るところで聞きます)
 米中のハイテク覇権争いは、おそらく「終わりなき闘い」になる
 だろう。
 ハイテク覇権争いが軍事技術とからんでエスカレートする恐れ
る。(P75)
 
  冷戦終結の証しである中距離核戦力(INF)全廃条約が2019年8月に
失効したことで、新冷戦下で核軍拡競争が再燃する危険性が高まっ
ている。(P104)
 
(誰が世界一の権力者?の構図は変わらない)
 米大統領選しだいで、地球環境問題を中心に世界の流れが変わる
可能性あり。(P141)
 
「合意なき離脱」は英国自滅の道であり、欧州だけでなく、世界を
混乱に陥れる。(P173)
 
 英国人の欧州観には、劣等感と優越感がないまぜになっている
ようにみえる。(P181)
 
EUへの期待として)
「グローバル・ルール・メーカー」としての存在感は絶大だ。
単に自由貿易を唱えるだけでなく、地球環境問題、個人情報保護、
デジタル課税など人々の生活や個人の尊厳に寄り添ったルール作
だけに、先進的で説得力がある。(P226)
 
(アマゾンを意識?)
 これまでの産業革命で起きたイノベーションは財やサービスの創
 造だったが、いま起きているのは一市場を超えた流通業という
 大産業分野の「総取り」である。(P253)
 
 いま起きているのは、資本主義と民主主義の複合危機なのである。
この危機を座視することは許されない。( P255)
 
 変化の激しいグローバル経済にあって、独占と強権が最も効率的
なしくみとなっている。
 独占化は所得格差・資産格差を拡大させ、中間層を衰退させて
 いる。
 独占企業の勝者総取りを防ぐため、国家・地域、中央銀行は連携
 を強化するとき。
(P269)
 
(日本の処方箋を述べていますが、増税は不可避でしょうね。)
1  財政規律を取り戻すには、
       歳出削減、増税
2  通貨安に依存しない
3  近隣諸国との緊張を避けるため防衛予算は抑え、
   GDP比1%の原則を守る。(P326)
 
 本物のビジネスマンなら長期的視点を重視。
トランプ流の外交は目先のディール(P327)
 
(反トランプ極まれり、でしょうか)
 地球の敵との蜜月は、恥ずべきこと。
 トランプ大統領との距離をどうたもつか、
 世界はそれを見守っている (P323)
  
3.まとめと私見
 冒頭にも書きましたが、「いま」をとらえるとき、著者の主張が
ぶれないで時系列で記載され、一定のまとまった分量の情報は、
きわめて有効でした。
 どの世界の本もそうですが、「文中に知っていることがたくさん
ある」と読みやすいものです。
 というか、すべてが初耳であれば、その本は読めないでしょう。
 (別の入門書とかで、脳を鍛えてから再挑戦が必要。)
 そして、漏れてている知識、著者のほかでは、聞かない私にとっての初耳見解が、非常に参考になります。
著者の「反トランプ」は、よく解ります。
 
 本日は、2019年11月6日です。
昨夜のNYダウは米中貿易摩擦への懸念後退から、最高値圏で推移、
ナスダック指数や、SPS500指数もそう。
陳腐な表現ですが、「株価は世相を映す鏡}
株価が大統領選に与える影響は大きい。
米国大統領選挙までもう1年ですね。
 著者は「反トランプ」に期待ですが、今後株価が大崩れしない限り
選挙においてもトランプが強いのではないか?というのが私見です。