古典の裏
「知ってるつもり」の有名古典「みんな知らない」ウラ話
松村瞳/著
すぎやまえみこ/マンガ
笠間書院 2019.10
1.概要
著者は、長らく国語指導を担当し、
生徒の「書けない、続かない、つまらない」の三大「ない」に
向き合っています。
本書は、「春はあけぼの」で書かれていない時間帯は?
「源氏物語」で一番あざといいのは誰?
といった、素朴な疑問に応えています。
「有名古典文学のウラ話を紹介」といった建付けけでしょうが、
私には「裏話」でなく、納得のいく正論に思えます。
ものごとの「実態」を知ることは楽しいことで、生徒も
「なるほど」と興味を持つのでは?
原文や現代語訳はそのまま勉強に役立ちますし、「背景知識」
や「4コマ漫画」も知の体系を自分の頭の中で、関連付ける際に、
多いに役立つと思えます。
2.目次
3.ピックアップ
➀ 清少納言が人前に出たがらなかったのはなぜ?
(答)人にみられることが恥ずかしかったから。
なぜ、そこまで恥ずかしかったのか
(答)痩せていたから。
なるほど!
お米を十分を食べられるから、太ることができる。
それゆえ太ってることことは裕福である証左。
当時富があることとが「美しいに直結」
清少納言は、「醜かった=痩せていた」であり、宮中で一緒
に食事をしていたら、ちゃんと「美しく=太く」なれる。
女性の美しさの基準も、時代や環境により様々ということですね。
実は、十分食べられることが富の象徴、ということは、古今東西
よく聞きます。
というか「十分食べられる」というのが庶民含め一般的になった
方が、歴史では、最近のこと(そうでない人も世界にたくさん
いますが・・)
② 源氏物語の中で、いちばんあざといのは誰?
(答)桐壺の更衣。
なぜ彼女はあざといのか?
(答)わざといじめられたから。
こちらの方は、「人間の心理は昔も今も変わらない」ことの
証左ですね。
身分という絶対の価値観のなかで勝ち上がっていくには?
絶対権力者者である帝の継続的な寵愛が必須。
そのため帝が自分だけを愛し、他の女性に一切目移りしない
状況を作り出したい
いじめが、とても都合がいい道具
女性たちは、いじめることで、「帝に愛される機会を失う。」
文中の表現を引きます
心ない周囲からのひどいいじめに泣き崩れながら、着物の袖に
涙を吸わせているその裏側で、こっそり微笑んでいる
「あざとい」桐壺の更衣が想像されてならない、
のですが・・・・・。
平安時代、女性の顔を直接見ることを現代で例えると?
(答) 全裸を見ることと同じ。
源氏物語が人気作品だった理由は?
(答)性的な場面や問題のある場面が書かれていたから。
この辺の話も、良く解ります。
(答)友達にかまってほしかったから。
現在社会のSNS流行も、「自分のつぶやきや考えに友人や多くの
人から反応」があるからで、反応がない文章を書いても心が折れる
だけ。
炎上してもいい から話し相手を欲している、という著者の解釈
です 。
兼好法師がお坊さんの悪口ばかり言っているのはなぜ?
(答)お坊さんの権威を失墜させたかったから。
なぜ兼好法師はお坊さんの権威を失墜させたかったのか?
(答)朝廷や幕府のスパイだったから。
民衆に対しての温かい視線に対して、坊さん相手の底意地悪さ。
時は鎌倉から室町への動乱期。兼好法師は、幕府や朝廷から
仏教界の権威を貶めるという依頼を受けていた、スパイだった
という説。
兼好法師の兄が大僧正(お寺のトップ)だからこそ、個人的な
近親憎悪も手伝い辛辣な文章になった、と著者は解説しています。
4.まとめ
が、全編「なるほど」と思うこと多々でした。
あとがきで著者は、
古典を読んでいるといつも思うことなのですが
科学や文明がどれだけ進化しても「人間の考えことって、
あんまり変わっていないのだな」
と述べていますが、同感です。
歴史の本を読んでいても、
人間は、いい加減だし、歴史から学ばないし、考え方や感情の
移り変わりには もう数千年以上、変わっていないのではないか
、と私も思っています。
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