もうすぐいなくなります
絶滅の生物学
著者 池田清彦/著
出版者 新潮社 2019.7
1.概要
まず、本のタイトルに惹かれました。
「もうすぐいなくなります。」
ハテ、特定の地域での話?人口全般の問題?特定の高齢者を
ターゲットとしたもの?
いえいえ、スケールが違いました。
「絶滅の生物学」の副題で、輪郭が見えてきましたが、
著者のユーモア溢れるタッチに乗せて、「なるほど」連発の細密
な記述が続き、引き込まれていきます。
地球上に現れた生物の99%はすでに絶滅しているとのこと。
大規模な絶滅が既に6回起こっているそうです。
それでは人類はいつ消える、どうやって消える?
生物の絶滅の原因やプロセスを探り、「進化」や「生物多様性」
が「絶滅」と深い関係にあることを明らかにしています。
生物は行き着くところまで行くと安定して進化も止まり、
やがて生息数も減って衰退、絶滅に向かいます。
いっぽう、新たな生物は進化の多様性にも富みます、やはり安定、
衰退、絶滅の流れは不可避です。
こうした繰り返しが生物の絶滅史と進化史と著者は考えています。
2.目次
第1章 「強制終了」のような絶滅
第2章 「絶滅」にはさまざまな理由(わけ)がある
ーーー「絶滅」と「進化」との関係
第3章 人間が滅ぼした生物と、人間が保護しようとする生物
第4章 「絶滅危惧種」をめぐる状況
第5章 どのような生物が「絶滅」しやすいのか
第6章「絶滅」とは何か
3.ピップアップ
川は海に比べれば狭く、環境のありようも単純なので、
人間によって環境が変えられるとその影響を受けやすく、
絶滅しやすい P165
(三峡ダムによって絶滅に追い込まれたヨウスコウカワイ
ルカの事例、です。
絶滅には、一個体の死、血統が途絶える地域個体群の絶滅、
種の絶滅、種より大きな高次分類群の絶滅まで、いろいろな
レベルの絶滅がある。 P193
ネアンアンデルタール人もデニソワ人も確かに絶滅したかもし
れないけれども、DNAの系統としては、生き延びている
現生人類は、76億もの人口を擁して大繁栄してうるように思われ
ますが、ヒトの系統としては最後の一種。P205
4.まとめ
ユーモアのきいた文章に乗せて、私が知らないことが続々出て
きました。年末読んだ、文句なしに、面白い本でした。
P203の小見出し
「ネアンデルタール人との「交配種」こそが、絶滅せずに生き
延びた」という部分が、私の一番お気に入りのフレーズでしょ
うか。
現生人類も、遠からず絶滅するでしょうが、その時はまだ地球
は膨張する太陽に飲み込まれてなくて、存続していると思います。
無論、私の生命などとは、はるかに時間のスパンが違いますが、
ふと未来に思いを馳せ、いい気分となりました。
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