中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

世にも美しき数学者たちの日常(読書感想文もどき) 私でも美しそうなのは、なんとなく解る

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数学も数学者も美しい

世にも美しき数学者たちの日常 

二宮敦人/著  

出版者    幻冬舎 2019.4

 1.概要

 黒川信重、加藤文元など日本を代表する7人の数学者と、4人の数学

マニアに取材し、その未知なる世界に触れています。

それぞれの個性を、軽妙なタッチでよく表現していると思います。

実は、この本は昨年度読んでいて、おもしろかった記憶はあるのです

が、先日このブログで紹介したIUT理論を解説した「宇宙と宇宙を

つなぐ数学」著者、加藤文元氏(東工大教授)が、取材を受ける立場

と、改めて知りました。

私のブログで紹介してみようと、再読したもの。

それぞれの、考え方、強い個性が面白いです。

 

2.目次

美しき数学者たち  その1

1.数学者に初めて出会った日

2.問題を解くことでなく、作ることが大事

3.数学について勉強することは、人間について勉強すること

4.芸術家に近いかもしれない

 在野の研究者たち

 5.日常と数学、二つの世界

6.お笑いのネタが、真理に届く

7.ここまで好きになるとは思ってなかった

美しき数学者たち  その2

 8.数学は嫌いになるはずがない、自分そのものなんだから

9.ちょっと、修行みたいなところがあります

10.『数学とはこれである』と線引きをしてはいけないんじゃ

  ないかな

11.頑張っても、そこには何もなかった

12.世にも美しき数学者たちの日常

 

3.ピックアップ

下手な私の補足やコメントはいらないと思います。

「 」の部分は、取材対象の数学者、数学マニアの発言。

「 」でない部分は、著者のコメントです。

太字・赤字は私の編集。

 

「京大の望月真一先生がABC予想というものを解いたと騒ぎに
なったんですが、これもずっと審査が続きていますね
どれくらいの期間になるんですか
もう5年になりますね」   P15
 
数式に人柄がでるんですか?
「はい、でますよ。たとえばリーマンの数式はちょっと
暗くて、内向的なんですね。対してオイラーなんかは明るくて
、自信がにじみ出ているんです。」   P23
 
「数学はある意味で、のんびり考えて楽しむものなんですよ。
三時間が与えられて、その中で五問解くとか、点数で競争するとか、
そういうのは数学の本来の趣旨ではないんです。
難しい問題だと、五年とか十年とかの時間じゃ、どうしようもない
こともある。
だから人生設計なんかと同じで、十年くらい回り道をしてもいい
わけです」   P38
 
「数学はお金がかかる学問です」 
もちろん工学系のように実験器具を買うということはありません
、お金かからないわけでもない。
実は旅費がかかるんです。
どこかに行くでもよし、来てもらうでもよし、いろんな人に頻繁に
会うということが数学ではとても大事なんです」   P46
 
数学を通して、大昔の数学者が挑んだ決闘に思いをはせることもでき
るし、一人では扱いきれない概念を、世界中の人とディスカッション
することもできる。
数学は、言語も国も時間すら飛び越えて人間と人間をつなぐ、世界に
開いた扉でもあるのだ。   P63
 
 「解けたこと自体はそんなに重要じゃないんですよ。
(中略)それより解くために僕が新しく作った理論のほうが重要で、
これが別の数学に役に立つ。そこが評価されるんです。」  P86
 
「やっぱり、数学はどんなレベルの人でも楽しめるからだと思い
ます。僕は僕で、すごく数学を楽しんでいるので」 
「しかもどのレベルの人も、『難しい』って言っていると思います。
みんなそれぞれのレベルで『難しい』し、『数学、わからない』
思っているはずです。
『数学わかる』って人がいたら、その人は多分解っていないと思
ますね。
ある意味みんな、同じ土俵に立っているんです。」    P151
(学者でなく「在野研究者たち」と銘打った数学教室講師の発言)
 
「実験室とか研究室とかいうと、”外にあるもの”だと思いますよね。
 でも数学という学問では、頭の中に実験室があるんです。
他の学問と比べても、内側への意識が強い、自分の中に向かわざる
を得ない。
人付き合いが悪い、と言われても致し方無いところがあるんです
よね。
だから時々変わった人はいます。」    P174
 
「直観とかひらめきだとか。そういうもんがないと数学はできない
んですね。もちろんそういうものを兼ね備えたコンピュータが、
後出てこないとは限らないけれど。
すくなくとも数学は、同じやり方をずっと続けるだけで進むもの
じゃない。
だからある意味では、どこまでやってもまだできるかもしれない、
そういうより、可能性があるわけですね。」 P216
 
自分の能力の範囲で、できることをやり続ける。
数学に限らず、人が生きるということはそういうことなのかも
しれない。   P227
 
「数学というのは、演繹的に積み上げていった結果『ここに何か
あった』という感じではないんです。
まず『ここだな』という。
そして『そこに行くには、こうだ』と、ピョンとアイデアだけで
わかっちゃう、みたいな」  P254
 
「僕はね、古典の数学を復原したいんですよ。つまり岡先生のよう
な数学ですね。
共感する人がいないかなと思って、古典を翻訳したり、本を書い
たりしているんです。
でも同好の士はなかなか現れないですねえ、、、」 P278
 
「うん。だから、数学というのは一つの言語だと思いますね」
 P289
 
  4.最後に感想
前回の(読書感想文もどき)の数学者加藤文元さんの「IUT理論」
の解説とは違います。
数学者とは、こんなもんだろう、イヤちょっと違うぞと、いろんな
意見が出てきそう。
一層読みやすい文体で、自分が知らない世界を知る、読書のひとつ
醍醐味でした。
  
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