中高年michiのサバイバル日記

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『資本論』の核心(読書感想文もどき) 佐藤優さんが宇野経済学視点から読み解く

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カール・マルクスのイメージ

資本論』の核心 

純粋な資本主義を考える

著者       佐藤優/[著]  

出版者    KADOKAWA 2016.9 

マルクスの「資本論」研究の第一人者・宇野弘蔵編「経済学」を

題材に、佐藤さんが、マルクス経済学を保守の立場から読み直して

います。

 「はじめに」

 冒頭「本書は、読者ともに深く考えることを意図して書かれた本

だ。」とあります。ボリュームとしては新書版で200ページ足らず

ですが、理解に難渋、相当時間がかかりました。

先般の数学の「IUT理論」とは、別の意味で理解に至ったか、

不安な面もあります。

ピックアップも偏在していて、私の頭の整理メモ、みたいな感じ

になっています。

 

宇野は、マルクスには2つの魂があると、考える
➀観察者として、資本主義の内在的論理を解明しようとする魂
共産主義社会を実現しようとする魂   P5
 
宇野経済学に対して、著者佐藤さんの二つの関心
➀宇野原理論によって、資本主義社会の内在的論理をとらえること
宇野が原理論の外部としている国家やイデオロギーなどの諸要素
ついて検討すること  P7
 
宇野弘蔵の考え方
「現実に存在する資本主義は純粋なものではない」として  
➀資本主義の純粋化傾向は、19世紀末には止まり、国家が経済に
 積極的に 介入する帝国主義の時代が到来した。
②経済学は、原理の他に原理を基準としながら資本主義の歴史的
 発展過程を段階的に解明する、特殊の研究を必要とすることに
 なる
③歴史的発展とともに経済政策が重商主義自由主義帝国主義
 と質的に異なる位相で発展するという段階論を唱えた。
④さらに現実に存在する資本主義を分析するには、原理論、段階論
の考察に、政治勢力や労働運動の状況、国際関係を加味した現状
分析を、行わなくてはならないと考えた。
⑤原理論・段階論・現状分析という三段論で、重層的に資本主義を
分析する体系知としての経済学を確立する必要があると宇野は説い
た。  P8-9
 
ソ連社会は、労働力の商品化を解消したが、国家の暴力を背景に、
すべての人々を強制労働につかせるという監獄型社会を作り出して
しまった。 P9
 
(佐藤さんは)ソ連失敗の理由は
人間が自らの力によって、理想的な社会を構築することができる
という原罪観を欠いた楽観的なヒューマニズムの故と考えている。
 P9
序章 マルクスを読まねばならない
日本において保守主義に基づく復古的改革路線は、アメリカ発の
新自由主義とは相いれない
保守主義に基づく復古的改革、維新を行うためには、新自由主義
と決別しなくてはならない  P19
 第一部『資本論』の骨格
貧困問題が、貧民の努力不足に起因するものでなく、資本主義
システムが不可避的に生み出すものであることをマルクスは
資本論』で見事に論証した  P71
 
宇野は、『資本論』が提示するのは、純粋な資本主義の論理と
しての「経済原論」であるので、そもそも歴史的変化に対応
するようなものではない。
歴史的要因を考慮する場合は、段階論を用いる。 P72
 
資本主義の本質を見失ってはいけない。
資本の本質は自己増殖だ。
カネがカネを生み出していくということである。 P73
第二部 資本主義の形成
1991年12月にソ連崩壊
中国、ベトナム北朝鮮キューバの4つ
中国とベトナムは、経済的には四本主義に転換
中国は、商品の輸出酒でなく、資本の輸出も行っているので
「資本主義最高段階としての帝国主義」国家である。  P110
 
国家は、自国の領域内にある市場を保護する。
市場を保護しないと、国家が社会から収奪することができなく
なってしまうから。   P128
 
1846年に穀物条例が撤廃。
国内地主保護派に対しる自由貿易派の最終的勝利。
高度な技術を基礎に、比較優位のもとでイギリスの資本主義は
順調に発展していく。  P133
 
資本論』によれば、資本主義社会は、資本家と労働者の二大階級
によって構成されているのではない。
この二大階級に地主が加わった三大階級によって構成されている
である。  P134
 
第三部 国家の介入
労働力商品化によって、価値法則が成立する。
それによって資本家は利潤を確保するのであるが、そのすべてを
資本家の手に確保できるわけではない。
一部は、土地を所有している地主に地代として渡さなくてはなら
ない。
地代には、土地の地力、水資源などの要素も含まれているので、
自然(環境)と言い換えることも可能である。  P149
 
資本の論理からすれば、同一の労働ならば、労働力商品の価値は、
安ければ安いほど良い。
多様な形態の雇用を導入すれば、正社員の賃金が、契約社員や派遣
社員の水準に引き下げられるのは、資本主義の論理からいって必然
的だ。
特に、グローバリゼーションの進捗によって、資本が被る障壁は、
国家間だけに存在するのではない。 P162
 
資本論で言う労働自体が社会的調整を終えた事後の概念なので
ある。
このような宇野の理論構成によるならば、近代経済学新古典派
一般均衡モデルと労働価値説も矛盾しないことになる。
もちろん宇野自身は、マルクス経済学と近代経済学の融合などと
いう問題意識は全く持っていないのだが、理論構成として、宇野の
生産価格解釈は、新古典派と親和的だ。  P172
 
地主は、ただ土地を持っているだけで、資本家の利潤の一部を得る
ことができる。
ここから、地主が、資本主義社会において一つの階級を構成する
ことになる。     P176
 
経済学批判、あるいはマルクス経済学の知識によって、表面上、
資本―利子、土地―地代、労働―賃金という対応関係にあるように
見える。
資本主義経済システムの姿は錯覚で、利子、地代はいずれも労働者
を搾取することによってもたらされることが明らかになるのであ
る。 P183
おわりに ー資本主義の矛盾と戦うための信仰
 宇野経済学的方法論から逆説的に導き出されることであるが、社会
への働きかけか外挿的に決定されること、これが私にとって宇野
経済学の魅力  P187
 
資本主義の危機をイノベーションによって乗り越えることはでき
ない。
福祉国家を実現しても、労働力の商品化は止揚されない。
資本主義的構造が、外部からのきっかけによって全面的に改変され
なくてはならない。   P190
  
エスの死後、2000年近くを経た今日においても、いまだ終末は
到来していない。
しかし、いつか週末の時が来るとキリスト教徒は信じている。
 P192
 
終末論的に考えるならば、資本主義は、近い将来に克服される。
それがいつ、どのような形でなのかは、わからない。
 時の到来を逃がさないように「急ぎつつ、待つ」しかない P193
  
 最後に私の感想
宇野弘蔵」とか、「宇野経済原論」というコトバは昔から聞いて
知っていましたが、まさにコトバだけ。
今回、佐藤優さんが宇野弘蔵「経済学」をベースに、マルクス
資本論を読み解く、しかも新書版で200ページほど。
ということで、トライしてみましたが、やはり解釈に難渋。
まあ、生きているうちには再度トライとなるでしょうか。