1.働き方も変わる、ただし徐々に。
「コロナ以降、働き方がメンバーシップ型からジョブ型や新形態に移
行が加速か?」とも、とよく巷で言われているようです。
今日は、「資本に働いてもらう」のではなく、「ヒトの労働力を、本
人がどう使って稼いでいくか」の話。
私見の結論は、
・大きな組織もジョブ型正社員がますます増えるのでは?
(地域限定社員とか、ジョブの一部適用とか)
・ダブルワーク、トリプルワークがますます広がるのでは?
というもの。
一般的な見解を紹介し、そのあと私見を書いてみたいと思います。
2.メンバーシップ型雇用とは
(1)私は、この労働形態が「日本で一般的」とは思っていません。
但し、大企業中心に、雇用人数が多いのは確かであり、「経営学の解
説」が好むところでしょうが、いわいる高度成長期から今までの日本
経済を引っ張ってきた雇用形態の一つだとは、認めています。
メンバーシップ型雇用は「人に仕事を割り当てる雇用の形」です。
日本特有の「年功序列」や「終身雇用」、「新卒一括採用」など制度
が前提の雇用方法です。
(2)メンバーシップ型雇用の特徴
職務 職務や勤務地などは限定されない
採用 新卒一括採用や定期採用
雇用保障 強い
給料 職務遂行能力によって決まる=職能給、年功によって
昇進がある
教育 OJTや研修など社内教育が多い
メンバーシップ型雇用では、専門知識を持っていない新卒の学生を雇
用します。
社内研修やOJT(On the Job Trainig)を行い、仕事に必要な技能を身
につけさせます。
職務範囲や労働時間、勤務地は限定されていません。会社が転勤や
残業を命じれば、労働者は従わなければなりません。
(3)メンバーシップ型雇用の3つのメリット。
➀ 雇用の安定
職務の範囲の取り決めがない。
業務がなければ即解雇ということはない。
②手厚い教育
「終身雇用」が前提、企業に従業員を育てる意識あり。
新卒研修や、中堅社員のスキルアップ研修などあり。
③職能による給料支払
職務遂行能力を基準に給料が支払われる「職能給」が特徴。
職能は勤続年数が長くなれば向上すると考える前提がある。
そのため年功に応じて給料が上がっていく。
(4)メンバーシップ型雇用のデメリット
➀会社都合の転勤や転属、残業がある
仕事内容、勤務地、働く時間に明確な取り決めなし。
仕事の範囲が不明瞭、長時間労働につながりやすい。
②「年功序列」や「終身雇用」などの前提条件が揺らいでいる
従業員は会社の転勤や残業などの命令に従う、交換条件として
昇進や昇給があり、「終身雇用」で長期間の雇用が約束。
2.ジョブ型 雇用とは
(1)「仕事に人を割り当てる雇用の形」といえる。
「日本以外の多くの国で採用されている雇用方法」という
説明の仕方が多いが、私見では、実際は「ジョブディスクリプ
ション(職務記述書)」があまり 明確でない、雇用形態は、日本で
も多いと覆う。
(2)ジョブ型雇用の特徴
職務 職務や勤務地が限定されている
採用 欠員補充時に募集をかける
雇用保障 弱い
給料 職務によって決まる=職務給
教育 社内教育は少ない
・ジョブ型雇用では、「ジョブディスクリプション(職務記述
書)」で職務や勤務地、労働時間などを明確に定めて雇用契約
を結ぶ。
・労働者は、ジョブディスクリプションに書かれていない命令に従う
義務はなし。例えば、転勤や職務の変更、残業など。
・労働者は、特定の仕事(ジョブ)を得るという意識で働く。
また、給料は職務の内容によって定められている。
・職務が限定されているので所属している会社でのキャリアアップや
昇給は滅多にない。
そのため一つの会社で3年ほど働いたらキャリアアップのために
転職。
人材の流動性が高くなる特徴がある。
(3)ジョブ型雇用の5つのメリット
➀自分の能力を活かし、深められる
働く人のスキルと仕事内容とにミスマッチが生じない。
②スキルや経験で給料が決まる
経験豊富でスキルがあって結果を残せる人ほど高収入を得ら
れる。
職務を遂行できる能力さえあれば、若くても重要な仕事に就く
こととなるす。
③新鮮な経験や考え方の取り入れ
人材の流動性が高いので、会社にいる人の顔ぶれが頻繁に変化
し、多様な経歴を持つ人材と出会える環境になっている。
④長時間労働になりにくい
ジョブディスクリプション(職務記述書)で労働条件が詳細に
決まっている。
労働者は、契約にない残業や業務、転勤をする義務はない。
⑤欠員が出た際に最適な人材を確保しやすい
企業としては、求める人材に出会いやすくなる
労働側は、「自分にマッチした仕事や会社を見つけやすい
(4)ジョブ型雇用の5つのデメリット
➀職場内でのキャリアップが難しい
職場内でのキャリアアップは、自分がスキルアップした際に
ちょうどよくポストが空いていなければ実現できない。
そのため、キャリアアップの手段は転職。
②職務がなくなった際に、解雇されやすい
会社の方針転換や経済状況が変化した際に、契約終了になる可能
性が高い
③スキルアップは自分次第
労働者は社外で主体的にスキルアップの努力をする必要あり。
④新卒者は仕事を得にくい
就職の際に自分ができることをアピールできなければ希望する
仕事には就けない。
⑤契約にない仕事を依頼するのは難しい
次の人を確保できるまで仕事が止まってしまう。
3.新しい道、おそらく折衷型
ジョブ型、メンバーシップ型に次ぐ新しい形が模索されています。
(1)ジョブ型正社員
➀「ジョブ型正社員」とは、職務、勤務地、労働時間のいずれかの
要素(又は複数の要素)が限定されている正社員のこと。
(※一般的な正社員は無限定正社員と呼ばれている。)
②ジョブ型正社員は以下のような人たちのニーズを解決めざす。
・専門スキルを活かして働きたい人
・専門スキルを磨きづつけたい人
・転勤をしたくない人
・子育てをしながら働きたい人
(2)タスク型雇用
プラットフォーム・エコノミーに代表されるように情報通信技術
が 発達し、ジョブ型雇用でなくともスポット的に人を使えば
物事が回るのではないかという声が急激に浮上している。
アメリカでは今まさにジョブからタスクへの変遷が起こってい
る。
タスク型が広がっていくと、プラットフォームの創造者とプラ
ットフォームを利用する労働者に2分化されるかもしれない。
(3)ホラクラシー
ホラクラシーとは役職や肩書、上司・部下などの関係が存在しな
い フラットな組織の形。
中央集権型のヒエラルキーとは真逆な考え方。
4.私見はやはり年代別対応
(1)メンバーシップ型とジョブ型を対比させると、講学上の説明
としては解りやすいですが、「実務家」として、渦中にいた一人の
感想は少し違います。
「雇用条件は折衷型、というか、いいとこどりが常に行われてきた。
組織が収益を維持し生き残っていくは大変であり、常に試行錯誤状
態」だったかと思います。
とはいえ。技術革新、人口動態の少子高齢化、コロナ問題といった契
機等々の要因で、徐々にですが、日本の雇用市場も変わっていくこと
でしょう。
(2)年代別に対応を見てみましょう。
なお、流れにそっって、自営業者の方でなく、雇用される側「サラリ
ーマン・サラリーウーマン」を前提とします。
➀20代から40代前半といった相対的に若い人
「サラリーマンとは気楽な商売」というのは、過去の歴史的産物であること
を、再認識し、個々人の「ジョブディスクリプション(職務記述書)」の充実を、継続させることが必要でしょう。
「本業」が中心であることは、大切ですが、「複数の生活の糧」を
意識することも必要です。
人生は上り坂、下り坂だけでなく、「まさか」は常に起こりえます。
②40歳後半以上の方。
大企業の「45歳定年説」のこだわっている訳ではありません。
私が何度か、書いているホモデウスの話でははないですが、「あなた
の仕事はない」という厳しい現実が突き付けられる、覚悟は常に必
要。
しかし、すでに十分な経済基盤があり「逃げ切り」体制が可能な方
は、別として「もがいている」こととが必要。
(闇雲に、もがくのでなく、「自分に何ができるか」と常に問う。)
オアシスの「逃げ水」のようなもので、「楽な老後」は、あきらめ
ましょう。
できれば前期高齢者くらいまでは、社会に働きかけて、「何らかの
経済的対価」を得られるようにしたいもの。