21世紀の啓蒙 下
理性、科学、ヒューマニズム、進歩
橘明美/訳 坂田雪子/訳
出版者 草思社 2019.12
1.概要
知の巨人ピンカーが綴る、事実に基づく希望の書。
人々の知能、生活の質、幸福感、平和…。
多くの領域が啓蒙の理念と実践により改善されてきたことをデータを
用いて明らかにし、無根拠な「衰退の予言」の欠陥を指摘しています。
「暴力の人類史」もそうですが、
暴力の人類史(読書感想文もどき) なるほど暴力は減少している、まず知ることが大事 - 中高年michiのサバイバル日記
結論は割と単純。
データを用いて、一つ一つありがちな誤認を解いていきます。
思うに、昨今の新型コロナ感染症報道もそう。
とかく悲観的にセンセーショナルに報道すると、視聴者の関心を引き
ます。
意地悪に言うと、そこには報道の公平性・倫理性をあまり感じません。
しかしこれは、「データをもとに、自分の頭でしっかり考える」こと
への、良い反面教師みたいなモノですね。
2.ピックアップ
緻密で一つ一つ膨大なデータと、論理に戻付き、解明していきますので、
網羅的にすると、それこそ膨大になります。
はじめにお断りは、私が、特に気に入った部分の抜粋となります。
今回は下巻に限定した、引用とします。
18章 幸福感が豊かさに比例しない理由
幸福を感じている人々が今を生きているのに対し、意義ある人生を送
る人々には語るべき過去があり、未来に向けた計画があるということ
だろう。
あるいは、意義はなくても幸せを感じて人生を送る人々は受け取る人
(テイカー)で、を受ける側であり、たとえ不幸を感じても意義ある
人生を送る人々は与える人(ギバー)で恩恵を施す側ともいえるかも
しれない。 下巻P76
今や私たちには、「一国のなかで比べると裕福な人ほど幸せを感じて
おり、国年で比べると豊かな国ほど幸せを感じ、国が豊かになるにつ
れ国民も幸せを感じる」とわかってってるからだ。
(そして国は時とともに豊かになっているので、人々は時が進むに
つれ、かつての時代よリ幸せを感じている。) 下巻P83
不幸の度合いを知るには、自殺率は存外あてにならない。
なぜなら自殺によって悲しみや不安から逃れようとするとき、まさに
その悲しみや不安のせいで、その人の判断力は低下しているからだ。
そのため、生きるか死ぬかの究極の決断であるはずのものが、ただ実
行に移しやすいかどうかという俗っぽい事情に左右されることもよく
起きる。 下巻P94
人類にとって最も大きな脅威は何だと思うだろうか?
1960年代の一部の思想家によると、それは人口過剰、核戦争、そして
退屈だった。
(中略)
ここ数十年で「とても幸せ」と回答するアメリカ人は減っているが、
「人生は刺激的だ」と答えた人は増えている。
(中略)
現代人は昔と比べれば幸せだと感じているが、思ったほどではない。
それはおそらく現代人は不安も刺激的な出来事もすべてまとめて
引き受け、大人としての人生を味わっているからだろう。
下巻P114-116
第20章 進歩は続くと期待できる
ことわざに「この世に橋と税金以外、確かなものはない」というもの
があるが、ポピュリズムもやはり「死」を迎えるということだ。
というのも、ポピュリズムは老人の運動だからである。
(中略)
20世紀にはどの世代もその前の世代より寛容でリベラルになっていた
からである。
(中略)
沈黙の世代(1925から45年生まれ)と戦後のベビーブーム世代(1946
から64年生まれ)が、このを去るときには、権威主義的ポピュリズム
も一緒に消え去る可能性が高い。
下巻P118