少し前の日経(2020/6/10 0:00日本経済新聞 電子版)ですが
コロナ失業救う露店で混乱 透ける「習・李」権力闘争
がありました。
いつの時代の権力闘争を外から眺めるのは、面白いものです。
舞台が中国で、役者が習近平と李克強、話題となったのが郷愁誘う
「露店」とあっては、記事に惹かれました。
生きる庶民の逞しさの点で、ふと、リーマンショック後に隆盛した
米国に誕生、日本で、もはやビジネス街の昼の一風景、「コロナ後」
の動向が注目される『キッチンカー』を連想しました。
まず記事の紹介から
1. コロナ失業救う露店で混乱 透ける「習・
李」権力闘争
新型コロナ:コロナ失業救う露店で混乱 透ける「習・李」権力闘争 :日本経済新聞
世界的な新型コロナウイルス禍で中国は就職難の大失業時代にある。
職を失って農村に戻った農民工を計算に入れると失業率20%という民
間試算まである苦境を乗り切る手段は何か。
それを提示できる救世主は誰か。
中国の庶民が今、水面下で熱い議論を交わしている。
(1)露天商
習近平政権は治安対策、ガバナンス強化の面からここ数年、露店を厳
しく取り締まってきた。
だがコロナ失業の深刻さを知る首相の李克強が一転して露店を奨励す
る動きに出た。
李克強は1日、山東省の港町、煙台の露店を視察し「『露店経済』は
雇用を生む重要な源であり、中国の活力だ」と持ち上げた。
先の全国人民代表大会後の記者会見でも李は露店などの雇用創出力
を訴えており、「露店経済」は中国で最もホットな経済新語として
流布されている。
(2)北京主要紙が李克強首相に反旗
北京の共産党委員会機関紙、北京日報が論評で李克強の露店経済奨励
の方針に正面から反論。
経済で「米国超え」をめざす中国の首都、北京の風格に露店ごときは
ふさわしくない――。そう言いたげな論調。
また、すぐさまこれに続いた国営中国中央テレビによる同趣旨の論評
だった。
(3)現場混乱と庶民の声
➀コロナ失業が深刻な中国東北部では既に大混乱が生じている。
李克強が1日、露店経済を持ち上げた山東省煙台から渤海海峡を挟ん
だ北部対岸にある遼寧省大連。
ここでは翌2日から一部で夜市の露店が解禁されたが、すぐに当局か
ら停止が言い渡された。
②「ただごとではない。末端経済の大問題を知る人は(李克強方針
に)大賛成の人が多かったのに……」
「この大混乱は理解できない」
「(共産党の)宣伝部門が『露店経済』をむやみに使うなという指令
を発したようだ」
一般庶民の日常生活に関わる身近な話題だけに交流サイト上で人々
は色めき立った。
一体、何が起きているのか。
(4)習近平側近
➀一時、流行した北京の地下防空壕(ごう)を利用した安価な貸部屋
も減りつつある。
大都市の底辺で経済を支える低収入の外来人口の多くが、北京から追
われたのである。
その政策を大々的に進めたのは、北京のトップである共産党委員会
書記、蔡奇だった。
習近平に寄り添う有力な側近で、25人の党政治局委員のひとりだ。
習は珍しく人前で蔡奇の人柄を褒めたことさえある。
②もう一人、メディアを動員した突然の李克強批判の裏にいると
見られるのが、共産党中央宣伝部である。
そのトップもまた習側近である黄坤明だ。
(5)アリババ、ファーウェイも露店から
➀不効率な公営企業が幅をきかせていた中国で市場経済が芽生えたの
は、そもそも露天商からだった。
仕事がなくなった企業の勤め人らが小さな資本を元手に道端で商売を
始め、その中から桁違いの成功者が出てくる。
1980年代から90年代までの話だ。
今をときめく中国通信機器最大手、ファーウェイの創業者である任正
非、アリババ集団の創業者、ジャック・マーも一時は露天商を経験
し、そこから身をおこした。
「改革・開放」初期の失業者問題を解決した一つの手段だったのが、
露店経済だったのである。
②これは90年代後半、当時の首相、朱鎔基が断行した国有企業改革で
失業者が出た際も同じだった。
民間に転じることを指す「下海」では、露店など零細な商売も雇用
の受け皿になった。
こうした経緯を知る李克強の師である著名な経済学者、厲以寧も露店
の役割を評価していた。
③逆にいえば名のある大企業ばかりが14億人も中国の人々を養って
いるわけではない。
多くは自営を含む中小零細企業で働き、全人口の半数は農村部に住
む。
この社会構造はすぐには変わらない。
実態を明かした指導者の指摘があった。
「中国には月収千元(約1万5千円)の人が6億人いる。中規模の都市
で家を借りることさえできない」。
これも李克強の記者会見発言である。
我々はまずコロナ禍で打撃を受けた自らの足元を見るべきだ、という
趣旨だ。
(6)権力闘争
➀庶民からは「総理(李克強)はよくぞ言った」と好意的な反応が多
かったものの、政治的に考えれば、来年の共産党結党100年の大イベ
ントに向けて実績が欲しい習近平への"嫌み"にも聞こえる。
②空気を読まない率直な李発言には中国の統計発表を担う国家統計局
も慌てた。
「6億人の中には収入のない老人、子供も含む。月収が千元よりかな
り高い人もいる」という釈明をホームページに載せたのだ。
李が直接指揮する政府組織の微妙な動きである。
注目を集めた「6億人が千元」発言に続く「露店経済」への言及で
李が目立ったのは確かだ。
習近平サイドには嫉妬もあり、おもしろくない。
「露店経済」にはある種の懐かしさが漂う。
それは「改革・開放」で自由を得た社会が持つ匂い。
鄧小平時代から胡錦濤時代までの雰囲気への郷愁でもある。
③そこには政治的な危険性も潜む。
習時代の締め付けへの反発につながりかねないのだ。
だからこそ習側はすぐに反撃した。
経済政策論争に名を借りた政治的な意図を持った闘いが裏で始まっ
たのだ。
(7)劣勢でも庶民人気の李首相だが
➀李克強には思った以上の庶民人気がある。
地方都市に住むある知識人は「特に一般人には総書記(習近平)より
総理の方が自分たちの暮らしを考えてくれているとの思いがある」と
みる。
しかも李克強は2年後の秋に開く共産党大会の時点でまだ67歳だ。
党の年齢に関する内規に従えば最高指導部に残る権利がある。
そこが問題を複雑にしている。
②だが現在の情勢なら、李は第一線から退き、習が残るとの見方が多い。
そうなると今後、政治家や役人は誰も李の命令を聞かなくなる可能性
がある。
レームダック(死に体)化だ。
露店経済を巡る大混乱の結果次第では、この動きに拍車がかかる。
李克強に肩入れするのかを測る一種の踏み絵になるのである。
(8)この夏がヤマ場
なぜ今なのか。この夏が政治闘争のヤマ場になるからである。
2年後の党大会人事の大枠に関わる流れが固まるのは来年ではない。
今年である。
この夏、河北省の保養地、北戴河に集って現役指導者と長老らが意見
交換する場も極めて重要になる。
(9)中国社会の活力を示す露店。
そこには長い歴史がある。
北宋の都だった開封の様子を細やかに描いた有名な「清明上河図」に
も様々な露店に集う庶民が活写されていた。
国家的な宝は北京の故宮博物院に収蔵されている。
中国の繁栄の象徴としての露店経済が権力闘争のある種の道具に
成り下がるとすれば少し悲しい。
2.ふと思うこと
(1)長い、抜粋要約は以上です。
はたから見ていて、興味は惹かれますが、私自身がなんの情報を
持っているわけでもなく、今後の政治日程や闘争の動向のコメントは
できません。
(2)ふと思い出したのがキッチンカー
➀もともとは、リーマンショック後の米国、不況を何とか乗り切る
べく安いコスト(店舗構えるより、車利用が安上がり)と顧客回転率
の良さをメインお武器に、大きく成長したキッチンカー
②日本に置いても、味や価格はもとより「スピード」感が評価され、
都心ビジネス街のランチ風景の一角を占めているように思います。
今回の「コロナ禍」対応で、テイクアウトが一層進展、」これまで
の店舗内販売では、生きていけないこともあり・・・
「コロナ後」のキッチンカーにも、少なからぬ影響かと思った次第
です。