21世紀の人類のための21の思考
原タイトル:21 lessons for the 21st century
ユヴァル・ノア・ハラリ/著
柴田裕之/訳
出版者 河出書房新社 2019.11
1.概要
(1)(裏表紙の表現かりると)
『サピエンス全史』で人類の過去を、『ホモ・デウス』で
人類の未来を描き、本書『21 Lesson』では、ついに人類
の「現在」に焦点を当てる。
“知の巨人”といえるユヴァル・ノア・ハラリが、テクノロジーや
政治をめぐる難題から、この世界における真実、そして人生の意味
まで、人類が直面している21の重要テーマを厳選。
正解の見えない今の時代に、どのように思考し行動すべきかを問う
ています。
(2)目次に「はじめに」からの引用加え、概要を見てみます。
1 幻滅――先送りにされた「歴史の終わり」
2 雇用――あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれ
ない
3 自由――ビッグデータがあなたを見守っている
4 平等――データを制する者が未来を制する
第Ⅱ部 政治面の課題
(考え得る多様な対応を詳しく考察する)
5 コミュニティ――人間には身体がある
6 文明――世界にはたった一つの文明しかない
7 ナショナリズム――グローバルな問題はグローバルな答えを
必要とする
8 宗教――今や神は国家に仕える
9 移民――文化にも良し悪しがあるかもしれない
第Ⅲ部 絶望と希望
(テロの脅威や、グローバルな戦争の危機、そうした争いをひき
おこす偏見や憎しみに関して、何ができるかを詳しく調べる)
10 テロ――パニックを起こすな
11 戦争――人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
12 謙虚さ――あなたは世界の中心ではない
13 神――神の名をみだりに唱えてはならない
14 世俗主義――自らの陰の面を認めよ
第Ⅳ部 真実
(ホモ・サピエンスは自らが作り出した世界を理解できるだろうか?
現実を虚構から隔てる明確な協会は依然として存在するのか?)
15 無知――あなたは自分で思っているほど多くを知らない
16 正義――私たちの正義感は時代後れかもしれない
17 ポスト・トゥルース――いつまでも消えないフェイクニュース
もある
18 SF――未来は映画で目にするものとは違う
第Ⅴ部 レジリエンス
(さまざまな糸を撚り合わせ、混迷の時代【「古い物語が破綻し、そ
れにとって変る新しい物語がまだ出現していない時代】における人生
を、さらに全般的に眺める。)
19 教育――変化だけが唯一不変
20 意味――人生は物語ではない
21 瞑想――ひたすら観察せよ
2.ピックアップ
(これ以前の抜粋・引用は「その1」、「その2」に記載です。)
もし本当に真実を知りたかったら、権力のブラックホールから脱出し
て、たっぷり時間を浪費しながら周辺をあちこちうろつき回ってみる
必要がある。
革命的な知識はめったに中心まで行きつかない。
なぜなら、中心は既存の知識の上に築かれているからだ。
(15無知 から P287)
たいていの人は、世界の主要な道徳的問題を理解しようと心から望ん
としても、もうそれはかなわない。
この規模の道徳的ジレンマを理解し、判断を下そうとするとき、以下
の4つのどれかを使うことが多い。
➀問題の規模を縮小する
②胸に迫る人間ドラマに的を絞る
③陰謀論をでっちあげる
④ドグマを一つ生み出し、全知という触れ込みの理論か機関か支配者
を信頼し、どこへなりと、導かれるままについていく
(16正義 から P295-297 )
ホモ・サピエンスはポスト・トゥルースの種であり、その力は虚構を
創り出し、それを信じることにかかっている。
自己強化型の神話は石器時代以来ずっと、人間の共同体を団結させる
のに役立ってきた。
実際、ホモ・サピエンスがこの惑星を征服できたのは、虚構を創り出
して広める人間ならではの能力に負うところが何より大きい。
(17ポスト・トゥルース から P302 )
フェイクニュースを当然のものとして受け容れる代わりに、それは私
たちが思っているよりもはるかに難しい問題であることを認識し、現
実と虚構を区別するために、なおさら一生懸命努力するべきだ。
(同 P314 )
現在のテクノロジーと科学の革命が意味しているのは、正真正銘の個
人と正真正銘の現実をアルゴリズムやテレビカメラで操作しうるとい
うことではなく、真正性は神話であるということだ。
人々は枠の中に閉じ込められるのを恐れるが、自分がすでに枠、すな
わち自分の脳の枠の中に閉じ込められていることに気づかない。
そして、脳はさらに大きな枠、すなわち無数の独自の虚構を持つ人間
社会の枠に閉じ込められている。 (18SF から P321 )
教師が生徒にさらに情報を与えることほど無用な行為はない。
生徒はすでに、とんでもないほどの情報を持っているからだ。
人々が必要としているのは、情報ではなく、情報の意味を理解したり
重要なものとそうでないものを見分けたりする能力、そして何より
大量の情報の断片を結び付けて、世の中の状況を幅広くとらえる能力
だ。 (19教育 から P338 )
過去は大人の教えに従っていれば、まず間違いがなかった。
大人たちは世の中をよく知っていたし、世の中の変化はゆっくり した
ものだったからだ。
だが、21世紀はそうはいかないだろう。
変化のペースが加速しているせいで、大人の言うことが時代を超越し
た叡智なのか、それとも古臭い偏見なのか、決して確信が持てない。 (同 P344 )
(コンピューターがハッキングされる時代ではなく)じつは私たちは
人間がハッキングされる時代に、生きているのだ。 (同 P346 )
物語は二つの条件を満たしさえすれば、私の人生に意味を与えること
ができる。
第一に、私に何らかの役割を与えること。
第二に、優れた物語は無限kの彼方まで続く必要はないが、私の地平の
外まで続いていること。 (20意味 から P356 )
なぜ物語の虚構を信じるか?
第一に、個人のアイデンティティが物語の上に築かれているからだ。
第二に、個人のアイデンティティだけでなく、自分たちが属する集団
の制度や機関も物語の上に築かれているからだ。
そのために、物語を疑うのは実に恐ろしい。(同 P364 )
3.感想その3
一部の学者、研究者とは言いませんが、ある書籍を読み、これをヒン
トに新発見や、当該書籍を上回る論理展開ができる人は、確かにいま
す。
と言うか、それが本来の「学者」の姿でしょう。
無論私は、全くその部類ではありません。
そのため書籍の要約や感想、私見は付け足し程度にして、原文その
ままになるべく多く引用・紹介する方が、意味があると思っていま
す。
目次の沿って3回に分け、今回3回目、最後です。
|
|
|