中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

「継続的な最低賃金を引き上げで、安く買い叩たかれ産業構造から脱却」はどこまで可能か

f:id:xmichi0:20200618134004j:plain

最低賃金引上げをイメージしたかったのですがなかなか難しい

1. 賃上げによる非効率な生産体制打破という見解

(1)「経営者としてお金を払う方」より、「雇用者としてお金をも

らう方」が、人数的には圧倒的に多い訳で、「最低賃金の引上げ」見

解に、それは大いに困る、絶対反対、やめるべき、という方の方は、

少数でしょう。

無論、経営者サイドも、最低賃金の引き上げで、生産性が上がり、

会社が儲かるとなれば、それはハッピー、賛成です。

何事も、そんなにうまくいかない、のが世の中であり、今回もアト

キンスさんの見解紹介、私見の提示の順で、話しを進めます。

(2)アトキンスさんは、昨年10月下旬にほぼ同じ論点で取り上げて

います。

昨年10月の話は、下記ブログのとおり。

中小企業を潰して減らせ、と言ったって・・・政治と行政はリード役でなく障害物の取り除きに徹するべき・ - 中高年michiのサバイバル日記

彼の見解を要約しますると 

➀日本企業の生産性が低い

②原因は、企業数の大部分、また雇用している従業員

数でも最大勢力勢力を占める中小企業の生産性が低いから

である。

つまり非効率な産業構造が存在するから。

③中小企業の非効率には歴史があり、1963年施行された

中小企業基本法に想定される、厳しい外部環境から中小

企業を守ろうとした政策が、結果として日本に「低生産

性・低所得」維持し「非効率な産業構造」を助長すること

となった。

④当該体制を壊して、新し秩序を構築しなければならい。

  2.「給料安すぎ」の悪影響という話

 反論は、再度まとめるとして

今回の、東洋経済記事も基本的には、同じ趣旨です。

タイトルは以下の通り

日本人の「給料安すぎ問題」の意外すぎる悪影響

「monopsony」が日本経済の歪みの根本にある

日本人の「給料安すぎ問題」の意外すぎる悪影響 | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

要約していきますと、

(1)monopsony(モノプソニ―)とは、

➀労働者を雇う会社側の力が強くなりすぎ、労働者が「安く買い叩か

れる」状態を指します

②monopsonyの力が強く働くようなると、国の産業構造に歪みが生

じ、生産性が低下し、財政が弱体化するなど、多くの問題が生じる

と論じられています。

③このような状況に陥らないための方策として、

「小規模事業者の統廃合」

「中堅企業の育成」

最低賃金の引き上げ」

が有効であると考えられています。

(2)日本が抱える諸問題の根源にmonopsonyがある

弊害を列挙しています。

➀ 企業の規模が小さくなる

② 輸出率が低下する

 (補足すると)

企業が継続的に輸出をするためには、高い生産性が求められます。

monopsonyの力が働き、企業の平均規模が小さくなると、輸出で

きる企業が減ってしまいます。

③ 最先端技術の普及が進まない

(補足すると)

企業の規模が小さいほど、当然、最先端技術を導入するためのコス

トを払う余裕が少なくなります。

仮に最先端技術を導入したとしても、人材に乏しく、ビジネスの規模

も小さいので、十分に活用するのが難しくなります。

世界的に見ても、規模の小さい企業ほどAIなどの最先端技術の普及率

が低いことが確認できます。

④ 格差が拡大する

(補足すると)

monopsonyの影響が強くなっても、高学歴の人など、労働市場での

交渉力が強い層の所得にはほとんど影響がありません。

一方、交渉力の弱い層の賃金は低く抑えられるので、両者の格差は

大きくなります。

⑤ サービス業の生産性が低くなる

(補足すると)

特に、飲食、宿泊、小売、教育、医療においてmonopsonyの力が

強く働くことが、世界的に確認されています。 

これらの業種は他国の企業との競争はほとんどないうえ、労働集

約型になりやすいという特徴があります。

そのため、人を雇用するコストが低いと、ICT技術を活用するイン

センティブが働きにくくなり、monopsonyが強くなるとされてい

ます。

⑥ 女性活躍が進まない

(補足すると)

世界中の調査で、monopsonyの影響をもっとも顕著に受けるのは

女性であることが確認されています。

特に子育て中の女性は、残業ができない、休みが多くなりやすい

などの理由から、雇用主に対する交渉力が大きく低下するので、

monopsonyの力がより強く働きます。

(3)日本でmonopsonyの力が強まった理由

monopsonyの最大の弊害は、財政の悪化と社会の衰退です。

 日本では、monopsonyの力が強まりやすいサービス業が中心の産

業構造になったところに、セーフティーネットの整備もしないで、

正規雇用を増やすよう規制緩和をしてしまいました。

これが、monopsonyの影響が増大した主因だと分析されています。

 monopsonyの力が働くと、企業は本来よりも過剰な利益を稼ぐこ

とになります。

しかし、企業に生じるメリットは、労働者が被るマイナス分よりも

小さいとされています。

結果として、個人消費の減少を招き、国の税収も低減してしまう

ので、社会全体に大きなダメージが生じるのです。

(4)最後のまとめ、

今回のコロナとは関係なく、日本の中長期的な将来を考えれば、

企業の統廃合を進め、中堅企業と大企業で働く労働人口の比率を

高めることが求められます。

このようにmonopsonyの力を抑える産業構造を実現するためには、

継続的な最低賃金引き上げが必要なのです。 

最低賃金を段階的に引き上げて、monopsonyによって生じている

歪みを修正するしか、国民生活の回復はないと思います。

 3.私見

 正論であり、反対はしません。

 その実現可能性に、唸るばかりです、といのが私見です。

 (1)昨年10月23日ブログでアップしている、私の意見は以

 下の通りです。

アトキンスさんの意見は正論部分あり。

1963年の中小企業基本法が、非効率な中小企業体制の存続

 を助長したのはそのとおりと思います。

しかし処方箋の大幅賃上げ、現実にやれるのでしょうか?

「隗より始めよ」でアトキンスさんが社長の会社は、賃上

げができているのかな? 

 基本観は現在も変わりません。

取り巻く制度の個別論点を考えていくとき、彼の時処方箋の大幅

賃上げの、実現可能性、ハードルの高さは、一向に変わっていない

ように思います。

(2)細かい論点でしょうが、「②輸出率が低下する」は疑問。

僭越ながら、論点がずれている気がします。

また、「セーフティーネットの整備もしないで、非正規雇用

増やすよう規制緩和をしてしまい」というのはそのとおりでしょう

が、これから、「セーフティーネットの整備」をどこまで、進める

ことができるかも、非常に大きな問題です。

(3)サービス業が労働集約的なのは、ある面サービスの本質に近い

ところがあり、すべからく中堅企業・大企業目指してして組織集約化

していくことには「馴染まない」面も多いと感じます。