中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

21世紀の啓蒙(読書感想文もどき) 今回は上巻中心 やはりデータをもとに、自分の頭で確り考えること

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小さな自分だが広く大きく考えたいとの願望をイメージ

21世紀の啓蒙 

理性、科学、ヒューマニズム、進歩

スティーブン・ピンカー/著  

明美/訳  坂田雪子/訳  

出版者    草思社 2019.12

 1.概要

知の巨人ピンカーが綴る、事実に基づく希望の書。

人々の知能、生活の質、幸福感、平和…。

多くの領域が啓蒙の理念と実践により改善されてきたことをデータを

用いて明らかにし、無根拠な「衰退の予言」の欠陥を指摘しています。

「暴力の人類史」もそうですが、

暴力の人類史(読書感想文もどき) なるほど暴力は減少している、まず知ることが大事 - 中高年michiのサバイバル日記

結論は割と単純。

データを用いて、一つ一つありがちな誤認を解いていきます。

思うに、昨今の新型コロナ感染症報道もそう。

とかく悲観的にセンセーショナルに報道すると、視聴者の関心を引き

ます。

意地悪に言うと、そこには報道の公平性・倫理性をあまり感じません。

しかしこれは、「データをもとに、自分の頭でしっかり考える」こと

への、良い反面教師みたいなモノですね。

実は、2020年6月14日に下巻中心のものをアップしています。

 2.ピックアップ

緻密で一つ一つ膨大なデータと、論理に戻付き、解明していきますので、

網羅的にすると、それこそ膨大になります。

はじめにお断りは、私が、特に気に入った部分の抜粋となります。

今回は上巻に限定した、引用とします。

 

第4章 世にはびこる進歩恐怖症 
心理学の研究論文によって、人は得を期待する以上に損を恐れ、幸運
を楽しむ以上に不幸を嘆き、称賛に励まされる以上に批判に傷つくと
確証されている。 P101
 
2000年に国連加盟国189ケ国と20以上の国際組織が「ミレニアム開発
目標」と呼ばれる8つの目標を掲げ、2015年までに達成を目指すことに
合意したが、これらの目標はまさにこのリストそのものである。
ここで衝撃的な事実を一つ。
「人間の幸福を測るこれらの指標のすべてにおいて、世界は目を瞠る
ほどの進歩を遂げている。」
そしてもう一つ。
「それを知る人はほとんどいない」    P108
 
第6章 健康の改善と医学の進歩
寿命が延びるとともに多くの人が心配している認知症についても朗報
がある。
2000年と2012年を比べると、アメリカの65歳以上の認知症発生率は
25%減少し、認知症と診断される平均年齢も80.7歳から82.4歳へと上
がってる。  P123
 
第7章 人口が増えても食糧事情は改善
緑の革命」のおかげで、わたしたち人類は以前の3分の1以下の面
積で同じ量の食糧を得られるようになった。
言葉を換えれば、1961年から2009年までに世界の後面積は12パーセン
ト増えたが、収穫量の方は300パーセント増えた。
より多くの食物をより少ない農地面積で育てられるようになったこと
は飢餓対策として有効なのはもちろん、広い視野でいえば地球にとっ
ても好ましい。  P15
 
第8章 富は増大し貧困は減少した
大収斂の5つの要因 

 ①共産主義(及び各国に侵入した社会主義)の衰退

②指導者の交代

③冷戦の終結

(以上3つは毛沢東に死が象徴している)

グローバル化(なかでも国際貿易の拡大)

⑤科学と技術

(この⑤が多くの分析から最大要因とされる)  P174-182

 

  第9章 不平等は本当の問題ではない

歴史的には社会的支出は増えつつあり、この傾向の次のステップは

ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI。あるいはそれに近い

負の所得税)になるのかもしれない。

この考えは何十年も議論されてきたが、いずれ実現するのではない

だろうか。

社会主義の香りがするにもかかわらず、これまでUBIを支持してきた

のは政治的に右寄りの経済学者、や政治家や州であり、また現在は

左右を問わずあらゆる立場のアナリストたちがこれをもてあそんで

いる。  P224

 

不平等は貧困とは別のもので、人類の繁栄を左右する基本的要素で

はない。

各国の幸福を比較してみれば、富の総量の方が格差問題より重要だ

とすぐ解る。(中略)

所得格差を最も効率よく縮めるのは、疫病、大戦争、破壊的革命、

そして国家崩壊なのだから。 (中略)

つまりいくつかの点では世界は不平等になったが、より多くの点で

世界の人々の暮らしは良くなったのだ。 P226

 

第11章 世界はさらに平和になった

第一次世界大戦だけでなく、さらに惨禍を極めた第二次世界大戦をへて、

ようやく戦争からロマンティックな要素は排除された。

そして「平和」が西洋諸国のみならず国際社会全体の」目的として表明

されることになった。

それまでもてはやされていた物の価値が下がる一方で、人命の価値は上

がった。 P308 

 

第13章 テロリズムへの過剰反応

テロは小規模な暴力なので、戦略目的を達成できる力をもたない。

そのため、局地的に恐怖と苦痛をもたらすことはあっても、長期的

にみれば、徐々に治まりつつある。(中略)

21世紀のISISも将来的にはほぼ確実に消滅するだろう。

テロによる死者数をゼロにすることはできないだろうが、覚えてお

きたいのは、テロに恐怖を覚えることは、社会がどれほど危険に

なったかを示すのではないということだ。

それはむしろ社会がどれほど安全になったかを示している。 P368

 

 

 (保守化への反論として)

実際にはグラフにあるように、各世代の価値観は以前より自由になった

時代精神を反映し、よりリベラルになったことが示されている。

つまり若者は年をとっても「開放的な価値観」を持ち続けるというこ

とだ。 P416

 

3.最後にまた感想
本年6月14日に下巻のまとめを紹介しています。
何においても、しっかりした情報ですね。
 上巻も個別論点の宝庫であり、なるほどそうだったのかと、納得の
連続です。
私に解るのは、主に日本語情報ですが、まさに情報の「玉石混交」です。
読み解いていって、考え行動するのは、まさに自分自身であり、その
ためにもまず、「玉」に値する情報をしっかり入れること、そして過去の
情報蓄積を総動員し、よく考えること、と改めて思う次第です。