1.銅の商品市況について
世の中を映す鏡、として、相場動向には、全般に興味があります。
相場は、赤裸々な人間の欲望、感情のぶつかり合いを映していると
私は思っており、世界の株式市場、債券(金利)市場は、とりわけ
注意深く見ています。
商品市況は、変動要因・取引実務含め、株式・債券ほど詳しくは
知りませんが、大豆、トウモロコシ、砂糖といった食品関係に加
え、金銀等の貴金属も、見ています。
今回、日経の記事で、少し気になることがあったので、その紹介と、
若干の私見を書きます。
2.記事紹介
2020/7/20の日本経済新聞 電子版からで、タイトルが
世界経済のドクターが「誤診」?
強すぎる銅相場
というもの
新型コロナ:世界経済のドクターが「誤診」? 強すぎる銅相場 :日本経済新聞
(1)先ず要約
銅の国際相場が急回復している。
指標になるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は7月13日に
一時1トン6633ドルまで上昇し、2年ぶりの高値をつけた。
電力インフラや家電製品、自動車など幅広い分野に使われる銅の
相場は世界経済を映し、「ドクター・カッパー」とも呼ばれる。
素直に受け止めれば、世界経済は新型コロナウイルスの影響を
受ける前の状態に戻ったことになるが、今回は「誤診」の可能性
がある。
(2)市況推移のコメント
銅相場は年初から下げ基調が続き、3月19日には4371ドルと安値
をつけた。
中国当局は4月8日、新型コロナの感染拡大が世界で初めて確認
その後、欧米の経済も動き始めたことで銅相場の上昇は加速し、
3月の安値からの上昇率は5割に達した。
米中の貿易摩擦が銅相場の下押し圧力となっていた2019年の
高値も抜いた。
各国政府は、なお続く感染と闘いながら経済を回そうとして
おり、最悪期は脱している。
ただ、2年前の水準まで戻してしまう銅相場は「強すぎでは」
との疑問がわく。
米中関係に目を向ければ、香港問題をめぐって対立が再び激
しくなっている。
銅相場を世界経済の実体以上に押し上げた要因はおもに3つ
考えられる。
(3)3つの「誤謬」の説明
①世界経済の鏡とはいえ、銅相場が映す主体は中国経済であ
ることだ。
年間およそ2300万トンある世界の需要のうち、中国は半分を
占める。
中国の製造業が主要国でいち早く再開し、中国政府が景気
てこ入れを狙ってインフラ投資などを刺激した影響がうか
がえる。
商品やそれを運ぶ「中国銘柄」は軒並み高騰している。
②中国政府が環境対策で、銅スクラップの輸入を規制した
影響だ。
スクラップから製造していた銅を地金や精鉱(中国国内での
精錬)での輸入に切り替えている。
住友商事グローバルリサーチは「これまで月120万~130万トン
ほどだった中国の銅精鉱輸入は4月に200万トンを超え、44万~
45万トン前後だった地金輸入も6月に60万トンを上回った」
(本間隆行チーフエコノミスト)と指摘する。
中国の景気刺激策や製造業の回復に加え、同国の規制が精鉱
や地金の需給を引き締め、国際指標の先物相場を押し上げた
側面がある。
③チリなどの資源国で感染拡大の影響が深刻になり、供給に
支障が出てきたことだ。
銅生産量で世界屈指のチリ公社コデルコも6月下旬に同国北部
にあるチュキカマタ鉱山の操業を一部停止すると発表した。
企業に価格変動のリスクヘッジ手法を助言するマーケット・
リスク中国や欧米、日本といった消費国は北半球に集中し、
人口も多い。
一方でブラジルやチリ、オーストラリア、南アフリカ共和国
などの資源国は南半球に多い。
(4)編集記者によるまとめ
中国を中心にした消費国の経済が戻り始める中で、南半球の
資源国では新型コロナの感染拡大で供給不安が強まっている。
新村氏は、そんな状況の違いが実体経済以上に銅相場を上昇
させたと考える。
中国の需要が強い中で、ブラジルなどの供給不安が相場を押
し上げる構図は鉄鉱石も同じだ。
北半球が夏に入っても感染が続いていることを考えれば、
気温の変化が感染に影響するかどうかは不明だ。
ただ、冬に向けて「北半球で再び多くの国が都市封鎖を強い
られて経済が停滞し、逆に南半球の資源国が立ち直る可能性も
否定できない」(新村氏)。
そうなれば、現在の銅相場は反動安を迫られることになる。
3.私が思うこと
私見と言っても、銅の相場見通し述べるわけでなありません。
編集記者の相場過熱気味要因として、
①中国政府景気テコ入れ、②中国のスクラップから地金や精鉱
への切り替え、③資源国の供給不安
を上げており、妥当な分析と思っています。
ただし、何事にも、「想定外」はつきもの。感染症の場合、
ほかの政治軍事問題より一層読みにくい、気候変動、地震等
に匹敵する不確実さがあるように思えます。
半年後のコロナ感染症の世界は、現在の想定をまぅたく違う
かもしれません。
株式市場債券市場が、商品市況に大きな影響もあり得ます。
「不確実性は、一層高まっている」と思った次第です。