中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

だから古典は面白い(読書感想文もどき)今回は野口さん 深読みと独自見解はさすがです

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読書家著作には、この本棚のイラストを使います

だから古典は面白い

野口悠紀雄/著  

出版者    幻冬舎 2020.3

Ⅰ.概要

聖書に始まり、トルストイの「戦争と平和」、シェイクスピアの「マ

クベス」、ゲーテ、またトルストイドストエフスキーと続きます。

古典をしっかり読み込み、そのめくるめく世界観を紹介、結果とし

て、仕事や人生に有益そうな、知的体験、知識も披露しています。

このレベルの読書人となると「面白くて役に立つ本の読み方」を

読者に提示できます。

野口悠紀雄さんは、元大蔵省官僚、経済学者です。

以下のwikipedia記述もありますように、「整理法」の分野でも有名

ですよね。

私も昔よく読みました。

「超」整理法シリーズはベストセラーになっており、毎年

発売され、基本的な形は当初のままである。

これは従来の整理法(京大式カードなど)は、個人では実

行困難(個人で図書館のように整然と分類する必要はな

い)として、考案したシステムである。

使ったファイルは手前に置くという「押出しファイリン

グ」とパソコンの全文検索機能を利用した方法を提案して

いる。

Ⅱ.ピックアップ

(聖書の説得力の源泉「比喩」の話)

自己犠牲が必要な状態を、生物的な死に置き換えたのです。
目にも止まらぬ早技。
瞬間技に「お見事」   P36
 
(「一粒の麦、地に落ちて死なずば」の比喩のつづき)
これこそが、聖書における比喩の本質なのです
比喩によって別の世界に引きずり込まれるために、説教が力強いもの
になり、折伏されてしまうのです。  P38

 

(「戦争と平和」から)

沢山の情報を持っているからといって、事態の本質を正確に評価でき

るとは限らないのです。

重要なのは、大量の情報ではなく、背後にある運動法則を正しく把握

できるかどうかなのです。  P51

 

巨大組織においては、現場の状況をすべて把握して意思決定がなされ

るわけではないのです。

トルストイが書いたのは戦場の状況ですが、企業の現場も同じです。

 P53

 

トルストイの歴史主義)

人間社会は、「歴史的必然」に従って動くのです。

戦場における勝敗の帰趨や国家の運命は、民族の特性によって決まる

のであって、特定の個人の「天災的指導力」によって左右されるので

はありません。   P55

 

マクベスより、「人間操縦法」テクニック)

1.「聞きたいメッセージ」を発する

    非現実的でなく、現実的な目標を示す

    「矛盾した形容」を使う

    誰しも効果がある最強力の殺し文句

2.信頼を獲得する

    予言能力でなく、周到な調査

    自己実現的予言で指示             P75-85

 

(ゲーテの「ファウスト」から)

私自身の実感でもあります。

最近になってようやく世の中の仕組みがわかってきたように思うの

です。

「今頃になって分かったとは、何たること」と残念に思います。

「30年前に知っていれば、もっとうまく生きられたのに!」と地団

駄を踏みます。  P86

 

歳を取れば肉体的能力は低下しますが、知的能力は高まります。

問題は高まった能力を使い切るだけの時間的余裕がなくなるこ

となのです。  P88

 

アンナ・カレーニナの世界から)

これから人生を終える準備を始めようとする位置にある人間が、

自分の人生を振る帰り、小説と比較すると、考えることが多く

あります。

一言でいえば、いろいろな人生があることをこの本を通して見た、
ということです。  P128

 

天安門事件とその後について)

学生や知識人の呼びかけは、一般民衆を動かすことにはならなかっ

たのです。

大多数の人たちにとって、政治的なイデオロギー民主化よりは、

「明日は今日より豊かになる」という期待の方が重要なのです。

それは、「白猫黒猫論」や「先富論」という言葉で表されていました。

カラマーゾフの兄弟』の中で、大審問官がすでに予言していた

ことが実現したのです。 P160

  

カラマーゾフの兄弟から)

ドストエフスキーが本当に描きたかったのは、大審問官ではなく、

カナの婚礼の方ではなかったのかと、私には思えるのです。 P164

 

日本の歴史は、日本海海戦の日にピークに達し、それ以降は下る一方
だ、と私は思っています。 (中略)
あれほどのパーフェクトゲームでなければ、日本人は自己陶酔に陥る
ことはなく、したがって、その後の歴史はもう少しましなものになっ
ていたのではないでしょうか?   P168
 
ゴールドラッシュで成功したのは、「金を採掘した人」ではなく、
「金の採掘者を採掘した人」だったという意味です。  P196

 

 3.感想というか読書中に考えたこと

 私が著作を好むある程度の有識者(国内外、個人含む)は、ほとんど

の場合、よく古典を読みこんでいますが、野口さんもその一人です。

まず彼の読みの深さになるほどと思い、次に自分の浅さに凹みますが

それは仕方ないことです。

古典読書の醍醐味や楽しみ、メリットについては、もうここでは触れ

ません。

野口さんは年齢的に20年も先輩ですが、その彼が 

「歳を取れば肉体的能力は低下するが、知的能力は高まる。

ただし、能力を使い切るだけの時間的余裕がなくなる。」、と書い

ているのは、これから人生を終える準備を始めざるをえなくなる私

にも、強いエールをもらうこととなりました。