中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

岡倉天心の「茶の本」と、その分析本を並行して読みました。

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茶の本

現代語でさらりと読む茶の古典

岡倉天心/原著 

田中秀隆/著  

出版者    淡交社 2013.9

1.概要

日本文化論の名著とされる「茶の本」。

明晰な茶人の眼で挑み直したその新訳本を、没後100年の岡倉天心

に捧げる、とあります。

天心が『茶の本』で、描こうとした目的は、千利休の死因の厳密な追

及でなくて、日本人の生き方に、きちんとした幻想があることを、茶

道を通して欧米人に理解させること、です。(はしがきより)

他の方の書評に「 ところどころに解説があるので、茶道の知識がなく

ても理解しやすかったです。」とありましたが、同感です。

 目次を書くと、

第1章 人間性を盛る一碗

第2章 茶の流派 

第3章 道家思想と禅道

第4章   茶室

第5章   芸術鑑賞

第6章 花

第7章 茶人たち

 

2.今回引用は少し。

第3章 道家思想と禅道  第一段 茶との結びつき

禅道と茶との結びつきはよく知られている。

すでに述べた通り、「茶の湯」は、禅の儀式から発展した。

道家思想の始祖、老子の名前もまた、茶の歴史と密接に結びついて

いる。 P52

 

第6章 花  第15段落 茶人と花

茶人は満足に花を入れ終わると、床の間に置く。

床の間とは、日本家屋の中で、名誉ある場所とされているところで

ある。  

花の効果を損なうようなものは、花の近くに置かれない。

絵画であっても、花と組み合わせることで特別な美を生みだす理由が

なければ、掛けない。

花は玉座にいる王子のようにそこに置かれている。 P126

 

第7章 茶人 第6段 自害の特権

秀吉にとっては、疑いをいだいただけでも、即座に処刑するのには十

分であった。

怒れる支配者に対しては、いかなる訴えも無駄である。

死刑囚に残された唯一の特権は、自害するという名誉だけであった。

(P142)

 

第七章 茶人 第9段落 旅立ち

顔に笑みを浮かべたまま、利休はまだ知らぬ世界へと旅立っていっ

た。 (P145)

 

(以下は著者コメント)

天心は、西洋人にとって好奇心の対象でしかない自死を取り込みなが

ら、その背後の死生観を理解させることを試みている。 (中略)

利休の死は、「茶道」が世俗を超越できる信念体系てあることを証明

する役割も与えられている。  (P159)

 

 岡倉天心茶の本』を読む 

 岩波現代文庫  学術 302 

若松英輔/著  

出版者    岩波書店 2013.12

 1.概要

こちらの解説本のほうが、難しかった。

「さらりと」と言うわけにはいきません

ある書評に

  「この岡倉天心の代表作を、タゴール内村鑑三井筒俊彦ら人間

の叡知を追究した東西の思想家との接点を探りながら読み解き、

新たな天心像を提示する。」とあります。 

2.こちらも引用は少し。

(鎖国時代が茶道の発達に不可欠、を受けて)

文化は外観からのみ確かめるものではなく、日常の生活の内に見出さ

れるものであると天心は考えた。

この視座は茶道に対してだけでなく、文化の成熟とその発展における

天心の確信だった。

同質のことを同時代人である内村鑑三が、やはり英文著作『代表的日

本人』のはじめに書いている。  P69

 

天心は、茶を、完全なものではなく「不完全なもの」を仰ぎながら、

人生という不可解なもののなかに何かを見出そうとする営みであると

語る。 

ここでの「不完全なもの」はけっして消極的な表現ではない。P85

 

「茶道は道教の仮の姿であった」とも天心は語る。

道教の叡智は、今や姿を変えて茶道に流入しているという。

儒教聖典孔子の語録『論語』である。

道教のそれは、老子の語録で、『道徳経』である。   P100

 

タゴールの言葉から、「彼」が岡倉天心

彼は百姓たちの使う素朴な土焼きの油の壺と言うような、全く安価な

ものを求めては、夢中になり、感嘆するのでした。

その辺の朴訥な村人たちが、自分たちはそれとは知らず持っている美

の本能が、それ他の些細な物に表されていることを、わたしどもは見

過ごしていたのです。   P128

 

最後に

非常に個人的な話ですが、祖母が茶の湯の先生で、自宅の一室を茶室

としていました。

小学生の私には、きれいな「おねえさん」ばかりでしたが、弟子と

して若い女性が通っていました。

自宅の一室ですから茶室(兼用です)にも出入りし、茶の湯道具も知

っていましたし、茶をたてたこともあります。

岡倉天心の「茶の本」を通読したのは実は、中学生以来。

思い切り背伸びで通読しただけの中学生には、さっぱり見えなかった

世界が、(当たり前ですが)すこし見えてきました。

 中国古典の中でも老荘思想は好きな方で、その分も理解にプラスだっ

たのかもしれません。

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