中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

熱誠憂国(読書感想文もどき) 他人の評論でなく李登輝元総統の直言です

熱誠憂国

日本人へ伝えたいこと

李登輝/著  

出版者    毎日新聞出版 2016.6

1.概要

李登輝さんへの追悼は、私の中ではまだまだ続いています。

解説本ではなく、最近(2016年、彼が93歳の時)の時の著作から

生の声を引用したと思います。

書籍の内容は、

「日・米・台」で築け、アジアの平和! 台湾の民主化を実現した哲人

政治家で元台湾総統の著者が、リーダー不在、Gゼロ(米一国支配終

えん)時代の日本の方向性を語っています。

目次を見ると

第1章 新しい日本のレジー

第2章 日本の極東アジア戦略

第3章 日本人として生きる

第4章 戦争を考える

第5章 指導者の条件

第6章 信仰は力なり

第7章 第二次民主改革

第8章 台湾の同胞たちへ

 

f:id:xmichi0:20200802233236j:plain

心の中で葬儀に参列しているイメージです。

 2.ピックアップ

私は(十二年の総統在任期間中に)終始国民の支持を受けながら、

この保守勢力に対抗し、一滴の血も流さずに六度憲法改正を実現

する「静かな革命」を成就させたのである。

私は、この「静かな革命」を誇りに思っている。   P13

 

日本が50年間、いわば「さら地の台湾」を統治して近代化し、生活

すべてを鍛え上げたから今日の台湾があるのであって、そういう

ことは、他の外国人には分からない。

それぞれの地域の歴史的な経緯のなかで違いが出てきたということ

である。  P48

 

高校に入ってからは洋の東西を問わず、たくさんの古典を読むよう

なった。

特に日本の思想家や文学者の本には関心が高く『古事記』から

『玉勝間』まで全部読んだ。 (中略) 

これまで読んだ本の中でも特に心に残ってるのは、ゲーテ

『ファウスト』、それからトーマス・カーライル『衣装哲学』

あとは岡倉百三の出家とその弟子

これらは、その後の私の人生に大きな影響を絶え、また、とて

も役に立った。  P87-88

 

(平和を求めたいという期待)は、トルストイが『戦争と平和

で述べた考え方や「人間とは何か」と言う本質に基づいて考え

れば、首尾一貫した原理、原則の適用は不可能なことと言わざる

を得ない。

可能なのは、具体的な状況の中から平和の条件を探ることにす

ぎない。

そうなると、戦争はいけない、いや戦うべきだとは簡単に言え

なくなるのである。  P111

 

中国共産党が中国大陸にもたらしたのは、中国大陸を「アジア

式の発展停滞」から脱出させることではなく、中国伝統の覇権

主義の復活と、誇大妄想を有する皇帝制度が再び生まれただけ

のことだった。 P154

 

(1999年ころの話)

台湾の民主改革の成功、対中国関係の整理は「託古改制」から

「脱古改新」への転換によって実現された。

そして、アジア的価値を否定するという目標を達成し、「新し

い時代の台湾人」という新概念を確立させたことは、あらゆる

価値観の転換の実現でもあった。 P161

 

 もし台湾で改憲がなされるとして、その第一段階として、私

が提唱しているのは、現行では二十歳の選挙権の付与を十八歳

まで引き下げることである。

台湾において未来を担うのはやはり「若い力」にほかならない。

P168

 

「新しい時代の台湾人」という自覚を持つことによって、ここ

で初めて「自分は何者か、台湾人とは何か」というアイデンティ

ティを確立することが可能となり、自分自身を「一人の、独立

した、台湾人だ」と絶対的に認識することによって、過去の自我

が救われる。 P184

 

3.李登輝元総統への私の思い

人間だれしも、「憧れ」があります。

亡くなった人を「歴史上の人物」とするなら、歴史上ではなく

現世の人で「憧れ」がある、数少ない一人、つまり(私にとって)

実績と人間性の双方ある人でした。

今回私の中で彼は、「歴史上の人物」になりました。

「台湾の自由と民主主義を中国から守った男」であると同時に、

「あるべき日本精神を体現した立派なおじいちゃん」の側面が、

私はとても好きなのです。