中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

正義は時代や社会で違うのか(読書感想文もどき) 絶対主義と相対主義を比較検討しています。

正義は時代や社会で違うのか

相対主義と絶対主義の検討

著者       長友敬一/著  

出版者    ナカニシヤ出版 2020.4

1.概要

正義は、絶対的なものなのか、相対的なものであろうか?

 古代のプラトンから現代のロールズまで、正義論の長い歴史を辿り

その先に浮かぶ「人類共通の価値」という真の問いに迫る構成です。

各思想家の思想の骨格や重点事項を、私に解りやすく整理したくれ

思想史」の勉強をしている、感じがしました。

私が、各思想を要約しても仕方がないので、いつものように、自分

勝手に、私にピンときた部分の書き抜きです。

全体の趣旨理解は、末尾の引用とします。 

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相対主義と絶対主義の検討

2.ピックアップ

 (はじめに ⅱ から)

思想史は、志向としては「絶対的」であり、結果的には「相対的」

にみえるかもしれない。

そのような検討を通じて、最後に、相対主義の可能性と絶対主義

の可能性をともに考察していく。

 

パスカルだけでなく、偉大な天文学者ケプラーコペルニクス

なども、熱心なキリスト者だった。

ニュートンもまた、「万有引力の法則」をはじめとする科学理論

キリスト教の教義と矛盾しないと考え、キリスト教の研究に打

ち込んでいた。

彼はさらに錬金術にも熱中していた。

近代ヨーロッパの「科学革命」をけん引する思想家たちの中に

も、様々な考え方たあることを確認。   P124

(michiコメント:昨今は私の理解も進んできましたが、非常に

いころ 「科学革命」と「キリスト教」は全く相容れなくて

れでも生きて(殺されない)ために、多くの学者が

「面従腹背」かと、思っていました。

私が、とても浅はかですね。

世の中や人間心理が、もっともっと複雑なことは、おいおい解

ってきました。)

 

正義をめぐるいろいろな主張 (ここでは絶対主義の類型3つ)

「正義=平等」:社会主義共産主義

 「正義=自由と平等」:自由主義リベラリズム

 「正義=自由」:自由至上主義リバタリアニズム

 (著者の投げかけ、いくつもの考え方」)

各主張は異なり、ときには対立さえしている。

われわれは、どれかを心理として選択すべきか、

絶対的な真理心理はあるとしても、そこに到達していない。

真理とは、相対的であって絶対的な真理は存在しない。

P180

 

相対主義復権

(本書の前章まで、絶対主義の流れを西洋思想史の流れと

重ねて総括してきたが)

西洋哲学史の中では相対主義の考え方も、たびたび登場して

いる。

事例としてあげているのは、ハンス・ケルゼン、ラッセル・

ハンソン、サミュエル・クーン、ピーターガイ・ウィンチ

です。   P194

 

ケルセンの相対主義

正義を、「ある社会秩序の特性」であり、「人間の徳性」と

捉え、古代から現在に至る正義の概念について、相対主義

観点から検討がなされている  P195

 

相対主義の考え方では、われわれは海に浮かぶ孤島だという

ことになるかもしれない。

だから、相互に理解しあい、ともに生きていくためには、

相応の努力を払う必要がるだろう。

他方、絶対主義の立場では、我々は孤島に見えるけれども、

海の底では一つの地面につながっているということになる

かもしれない。

その一つの地面がどのようなものかを見つけることが、相互

理解やコミュニケーションにとって重要なものとなる。

 そのような相対主義と絶対主義、そしてそのどちらにも明確

位置付けられない考え方を検討することによって、我々の

世界の理解は一層広がりと深まりを持つことができるのであ

る。  P235

 

3.最後に

 (1)私には、過去も今も各思想の「上面だけ」の理解で

した。

つまり、古代ギリシャから、近現代にいたる大まかな思想史

は、結局「聞いたことがある」、「言葉として知っている」

程度でした。

「正義」という切り口で、絶対的が相対的か分けようとした

場合、自分自身では、しっくりした「仕分け」ができないの

は、本質的に理解が深くなかったからでしょう。

ただ、読み進むうちに、「理解できる」というのは、せめて

もの、お慰み。

 (2)本書を手に取った時、本文にいる前から

「正義は、相対主義なもの、絶対主義なんて古今東西存在

しない」と、思い込んでいました。

 前文の『思想史は、志向としては「絶対的」であり、結果

的には「相対的」にみえるかもしれない』の意味合いが、

本書を通読して解った感じです。

結語にある どちらにも明確に位置付けられない考え方

を検討する」 ことが、オトナとして生きていくうえでの

必須事項なのでしょうね。