中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

土と内臓(読書感想文もどき) どちら(植物も人間)も微生物と 共生し、持ちつ持たれつ

土と内臓

微生物がつくる世界

原タイトル:The hidden half of nature

デイビッド・モントゴメリー/著  アン・ビクレー/著  

片岡夏実/訳  

出版者    築地書館 2016.11

1.概要

私がここで取り上げる書籍は、自分が手に取ったり、書評を読んだ

り、勝手に選んだものもある一方で、私が「気になっている人」が

取り上げた推薦本もあります。

これは後者。

内容としては

マイクロバイオーム研究で明かされた人体での驚くべき微生物の働き

と、土壌での微生物相の働きによる豊かな農業とガーデニング

微生物研究と人間の歴史を振り返り、微生物と動植物との共生関係、

免疫との関わりを紹介しています。

マイクロバイオームとは、宿主に定住する微生物の総体。

ある宿主の特定の物相、つまり微生物個体群も指します。

(書籍中のキーワード解説から)   

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微生物のイラストは、マイナスイメージが多くて閉口、こちらは常在菌

2.ピックアップ

厳密にいえば、ウイルスは生き物ではない。

それは単細胞でも多細胞でもない。

なぜなら細胞でできているものではないからだ。

ウイルスは本質的には、たんぱく質の層にくるまれたDNA

(またはRNA)の小さな包みだ。

生きた細胞の中以外で繁殖できず、そこで宿主のDNAを乗っ取って

自分のコピーを作らせる。

科学者の中には、ある種のウイルスは実は結果的に宿主の役にって

いるかもしれないと考えている者もいる。  P59

 

植物は、病原菌に殺されるのをのんびり待ってるような、無防

ひ弱な被害者などでは決してない。

少なくとも、根圏に植物にとって有益なあるいは無害な生物がたくさ

ん棲んでいれば。

その場合、病原体には、堀のような根圏を渡って植物の城壁を突破で

きる可能性がほとんどない。  (中略)

滲出液に誘引された非病原性細菌が、病原性の土壌菌類や細菌を抑制

する方法はいくつかある。

非病原性の細菌と、ある種の菌類は、たいてい滲出液を直ちに消費し

てしまい、病原体には与えない。

また有益微生物は根の表目に集まり、根を覆う生きた保護被膜となっ

て、病原体を根圏から締め出す。     P122

 

炎症はがんを活性化させる。

私の意識はそこに釘付けになった。   P148

 

マイクロバイオームの庭を世話することは、現在医学を捨てるいう

ことではない。

だがまず実際問題として、医療がマイクロバイオームと協力するよう

に調節するには、しばらく時間がかかる。

そのあいだ、マイクロバイオームを健康にし、次にプレバイオテック

スでそれを維持することが必要だ。

そしてもし、抗生物質、病気、ことによると大腸内視鏡検査で微生物

が損傷したら、園芸家がするように失ったものを植え直し、定着を助

けることを考えてもいいだろう。

つまり、単純な忠告に要約できる。

敵を飢えさせ味方に食べさせよ。

敵を抑えてくれる味方を滅ぼすな。      P315

 

劣化した生態系の回復は周知のとおり難しく、そして費用がかかる。

そもそも壊さないようにするのが、一般に長い目で見て最高の策だ。   P315

 

人間を含めたすべての動植物はマイクロバイオームと共に進化

したという認識がひろまれば、自然界とその中にある人間の居

場所に対する新しい見方が浮かび上がる。

味方が根本的に異なるため、私たちが大学生だったころの生物

学の教科書を開いても、人間を微生物学的に見た側見について

はあまり書かれていなかった。

過去20年の、植物とヒトのマイクロバイオーム研究の進歩は、

ほとんどの中堅科学者、医師、農家が大学で学んだ生物学の

知識をひっくり返し塗り替えるものだった。   P317

  

(20,30年前なら)

細菌が人間の免疫系と情報伝達して、病原体を撃退するため

に炎症を精密に分配し、また有益な共生微生物を補充するの

を助けているという考えは、なおさら信じられなかっただ

ろう。 P322

 

(多くに人は自然を肉眼で見える大きなものと思っている。)

しかし、心の目ではもっと多くの、以前は隠されていたものを

見ている。

私たちは一人ひとり独特の存在であっても、孤独であったこと

はない。

私たちの足元深く、そして私たちの身体全体に、自然と言う大木の

なかの大木が生きた根を下ろしているのだ。

自然は遠く人里離れた土地にあるのではない。

それは想像以上に身近に、まさに私たちのなかにあるのだ。  P326

 

 3.最後に

 土の中で根を取り巻く環境と、人間の腸内環境は どちらも微生物

と共生し、持ちつ持たれつ上手くやっていて、驚くほど似ている

ことを解りやすく書いています。

植物の化学肥料や、人間の食生活の変化が、新たな問題を引き

起こす。

人間も自然の中の一部なんだなと改めて感じます。

なお、昨今の新型コロナウイルス騒動ですが、ウイルスは

生物ではないし、ここでの主役「微生物」より、もっと小さ

いけれど、撲滅出来るようなものではないし、各種報道に、

人間の思い上がりを私は感じます。

当たり前のことですが、一つ知ると、また新しい世界が見え

てくる感じですね。