中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

旅の効用(読書感想文もどき) 好奇心は人の本質 本では抽象的すぎて旅の実体験が必要の場合あり

 旅の効用

人はなぜ移動するのか

ペール・アンデション/著  

畔上司/訳  

出版者    草思社 2020.1

1.概要

不機嫌という病を治すには、自分の安全領域から外に飛び出すことだ、

と著者は説きます。

「好奇心」は、人間ぼもつ本質なのでしょう。

(個々人に程度の差はありますが・・・・・)

世界を旅したスウェーデンのジャーナリストが「人が旅に出る理由」を

重層的に考察した、味わい深い旅論です。

広範な読書体験も想像できます。

読めば放浪したくなる旅行記22点も紹介していますが、私が読んだのは

オデュッセイア』だけでした。

 

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長期の海外一人旅をイメージしたかったのです。

2.本文から引用

ことによると旅は、世界観を広げるうえで有効かもしれない。結局の

ところメディアの報道だけでは不十分だし、歴史的な見方を怠ること

も多い。大体が、もし自然災害が起こらなかったり、選挙が終わって

しまったり、ないしは武器が鳴りやんだりするとメディアは沈黙して

しまうからだ。 P 9

 

世界には今、二つの方向が存在する。一つは、自分の中に引きこもろう

とする傾向。もう一つは、開放的になろうとする傾向。ウルリッヒ・ベ

ックは当時も今も、コスモポリタニズムに味方している。彼は、

「(国の)内と外」を分けようとする古い分類方法を無視しようとして

いるのだ。 P50

 

私は東洋の美にあこがれてきたが、彼は私が育った技術進歩の世界、

直線的で計画的だが、憎悪に満ちた世界、要するに私が逃げたがって

いることすべてに対する憧れを抱いて生きてきたのだ。 P63

 

初めて歩いたのはヒマラヤの道だったが、その時の頭と体、そして

世界が互いに語り合っている気がした。だがその後は、そうした感覚

をあまり頻繁には経験していない。  P102

 

(海外旅行者数は)今のところは中国人がトップだが、インド人が急

接近している。ほどなくして典型的な旅行者はヨーロッパ人ではなく

アジア人になるだろうから、「海外旅行はヨーロッパの植民地主義

の延長」という非難もそのうち口にされなくなるだろう。  P109 

 

目的地にいたるまでの過程が旅の重要部分なのだ。目標、目的地に

集中しすぎると、旅に満足できなくなる。あまりスピーディーに

到着すれば、何も体験できなくなる。逆にかなり長い旅をすれば、

観光地巡りばかりということはなくなる。  P127

 

「旅は、私たちがホモサピエンスであることと関連がある。好奇心

だ。『無用な』知識を求めて努力し、知恵を拡大し、視野を広げ、

世界像を拡大し、混沌を整理し、秩序を確保しようとする意思で

ある。」 P154

 

自動車事故に巻き込まれるリスクは、ヒッチハイク関連の事件で被

害者になる率、あるいは逆にヒッチハイカーが、見知らぬドライバー

に襲われる確率の何倍も高い。

それでももしあなたがクルマに乗ると決心するなら、絶対に顔見知

りの人と同乗してはいけない。見知らぬ人と同乗するのがいちばん

安全なのである。  P185

 

ゲーテの『ファウスト』にあるように、過去に浸って喜ぶのは危険

なのだ。過去は不可解だとファウストは言っている。私たちが過去

について学ぶ時代精神は、過去に反映させた現代の姿なのだ。P204

 

「すべてがうまく行かなくなったら、インドかアフリカに行って洞窟

内で座っていればいい。そこで眠ればいい。食べ物は何とかなるだろ

う。子どもたちは今は大きくなって、うまくやっている。何であれ答

えは見つかるものだ。生きていくことはできる。何とかなるものだ。」

P221

 

こんなに何回も旅をするのはスウェーデン社会が安定していてあまり

に変わらないからなのだ。彼女はなにかから離れるために旅をしてい

るのではなく、何か新しいことに近づくために、旅をしているのだ。

P273

 

哲学者カントは、働く必要がなくなれば人はどうなるかを知っていた。

最善の解決策は、カントによればアダムとイヴに起こった出来事、つ

まりは退屈な楽園からの追放だった。  P290

 

彼女の考えによれば、「旅をせずに本を読めば十分だ。そうすれば心の

中で旅をすることができる」とのこと。確かにそれも可能かもしれない

が私が受ける印象は本では抽象的すぎるのだ。私自身が旅で実体験する

中のごく一部に過ぎないのである。 P324

 

3.感じたこと

旅に関するエッセイを読みたいとは思っていました。実際いくつか

読んでいますが、私にとっての「はずれ」が、多かった感じです。

本書は、出口治明さんが書評で書いていて、選びました。

今、求めているもの、私の思考や感性に近いものでした。

1962年生まれで、本書を書いたのが2018年ごろでしょうから、元気

いっぱい、無鉄砲が売りの若者とは違います。

持ち論、筆者は若いころから、旅を続けていますが、いわいる「中高年」

となって、「知識や経験の蓄積」の上に立った文章となっていて、期待し

た読後感となりました。

旅を好むのは好奇心に基づくホモサピエンスの本質と、私も思います。

旅に出るのは、環境はなかなか許さない昨今の私ですが、「好奇心」は持

ち続けたいといつも思っています。