中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

虫とゴリラ(読書感想文もどき)人間以外の自然とも感動を分かち合う生き方を求める、ですね

虫とゴリラ

養老孟司/著  山極寿一/著  

出版者    毎日新聞出版 2020.4

1.概要

人間以外の自然とも感動を分かち合う生き方を求めていけば、崩壊

の危機にある地球も、ディストピアに陥りかけている人類も救うこ

とができる、という趣旨でした。

解剖学者養老さんと霊長類学者山極さんが、日本の未来像を語ります。

養老さんも、山極さんも経歴コメントはいらないでしょう。

山極さんは、この私のこのブログで取り上げるのが、確か3冊目かと

思います。

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今回ゴリラは登場せず、「虫」としました。

 2.本文からの抜粋 

この対談では、虫が見る世界とサルが見る世界をもとに、人間の世

界をもう一度、眺めなおしてみたいですね。  P7

  

自然が変わってきたのは、虫を見ているとよくわかります。虫と

いうのは、いろいろなことのサインになる。象徴になるんですよね。

P23

 

(山極)

日本人は明治以降、西洋の形だけ真似て,技術だけを真似て、

それでも「和魂洋才」って言って、和魂は残してきたと思うのです。

それが戦後、空っぽになっちゃって・・・

(養老)

その「和魂」って言われるものはね、みんな「精神的なもの」だと

思っているんだけど、そうじゃなくて、たぶん「世間の干渉」だと

思うんです。

世間の暗黙のルールっていうのが、非常に日本は強かったので、

それが戦後、壊れたんですよ。  P37

 

 科学は、やること、手段が決まられていて、「行く先がわからない」

宗教は行く先を決めるが「どうやったら」行けるのかわからない。

そこいら辺が人間の持つ矛盾。  P65 

 

(ハラリの「認知革命」に対して)

人間がゴリラやチンパンジーの生息域から離れて、新しい土地へ

旅立とうとするとき、ゴリラやチンパンジーが持ちえない、好奇心

が芽生えたと思っているんです。未知の場所には、いいことがある

んじゃないかって。 P66

 

他人に生命を委ねることによって、人間は他紙はとの信頼関係を

築いてきた。これが人間と、類人猿、ゴリラやチンパンジーとの、

大きくたもとを分かつ部分でした。  P69

 

アメリカって徹底的にいろんな背景の人が集まってきて、州議会

でなく連邦議会になったら、そこで通用することは「普遍的な理性」

だけですよ。だから、アメリカはコンピュータが発達するんでしょう。

理性を突き詰めるとコンピュータになるわけだから。 P112

 

 縁側というのは、内でもあり外でもある場所、あるいはどちらでも

ない場所、そういう領域が我々の思想の中に、常にあるわけですね。

日本の自然にも里山があって、これはハレでもケでもない、動物も

入ってくれば人間も使う。そういう場所が必ずある。どういう意味

かというと「両方肯定していこう」って話なんですね。  P158

 

外国の映画を観いていると、それぞれの文化に、考え方の「型」

みたいなものがあるのかなって、思う時がありますね。 P174

 

奇跡ぐらい、日本人が理解しづらいものはない。ところが、キリ

スト教の勘どころ、核心は奇跡ですからね、結局。  P176

 

墓っていうのは、農耕民族主体の考え方なんですよね。狩猟民族、

あるいは遊牧民は、墓を持っていませんからね。今樹木葬みたい

なものも、すごく流行っていますよね。しかもね、先祖代々の墓

を守り切れなくなっているんですよ。 P204

 

今の人間というのは、「過去の人たちが作った問い」の上にある。

あるいは、問いに対する答えが上になる。でもそれは、非常に

抽象化された人間像であって本来の人間という幅の広さからすると、

とても狭いところに立っちゃってるんじゃないか。P210

 

未来社会っていうのは情報が共有できるわけです。流通というのも

自動化すると思いますよ。自動運転もあるし、空中も使えるし、

コストもかからない。だけど、「幸福を作りには「手間暇かけたほ

うがいい」という時代ですよね。」 P221

 

仲間と違うことを前提に共鳴しあうのが幸福だと思えるのに、争い

合いながら均質化の道を歩んでいる。それは人間が歩んできた進化

の道から逸脱し始めているのではないか、というのが僕の抱いた思

である。  P 225

 

人が生まれながらにして持つ感性には生物としての倫理がある。

それを大切にして、人間以外の自然とも感動を分かち合う生き方を

求めていけば、崩壊の危機にある地球も、ディストピアに陥りかけ

ている人類も救うことができる。  P227

 

3.感じたこと

 幸い、話に「ついていけない」部分は、少なかったように思います。

しかしながら、それは私の勝手な思い込みかもかもしれません。

二人の深い教養、それは豊富な実務経験と広範囲な読書から、形成

されるのでしょうが、二人が発する言葉に、同じ土俵で、考え続け

たかと聞かれると、はなはだ、心もとない限り、です。