中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

李登輝(読書感想文もどき)実績を残した方は、言葉の重みが違います

李登輝

いま本当に伝えたいこと

早川友久/著

出版者    ビジネス社 2020.9

1.概要

李登輝が「現代を代表する政治家」の一人であることは否定する

人は、少ないと思います。

李登輝については、幾多の本が書かれています。

「鉄人王」という日本人監督の映画にもなったようです。

本書は、年齢的に李登輝の孫世代の日本人秘書が、書いたものです。

決断は素早く、そして柔軟な発想で。情報は常に複数の情報源から。

前例のない事態には前例のない対応を。

といった言葉の節々に、李登輝の考え方が現れます。

前日亡くなった「台湾民主化の父」が遺した日本人への最後のメッ

セージです。

(2)2020年を迎え,蔡英文総統の手腕のもと、台湾はうまくやっ

ているように思えます。

コロナ対策は無論、経済や、安全保障の面でも、そうです。

蔡英文は「李登輝の弟子」といってもいいでしょう。

これを書いている11月15日現在、米国大統領選挙の最終結果が見え

ません。トランプ政権からの交代があるとすれば、太平洋を取り巻く

情勢、軍事、経済バランスはまた一変するでしょうし、蔡英文政権

も、一層難しいかじ取りを余儀なくされるでしょう。

改めて李登輝の言葉を、追っていきたいと思います。

  

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台湾は九州くらいの大きさです。

2.本文から引用

リーダーは信仰を持て。信仰がないなら信念を持て。

孤独なリーダーは、すがることのできるものを必ず持つのだ。P18

 

政治であれ、ビジネスであれ、完全を求めてはならない。目標の実現

に向けて100%の努力を惜しまないのは当然だが、必ずしも100%の結

果を得られるとは限らない。

その場合でも、7割が達成されて入れば『よし』とする姿勢をリーダ

ーは身につけなければいけない    P28

 

李登輝の考え方の根本は、

『台湾は中華民国』という発想の出発点そのものを捨てる

ということ。李登輝が提唱したのが「脱古改新」であった。

「古のものから脱却しよう。そして全く新しいものに改めるの

だ。」  P 59-60

 

教養は万能ではない。実践が伴ってはじめて意味をなす     P70

 

李登輝は、中国の圧力によって台湾の国際空間が狭められることは、

おそらく予期していたのだろう。だからこそ、中華人民共和国からの

圧力をはねのけ「中国」というものを巡って争うことを避けるために

中華民国の台湾化に向かったのである。 P94

 

 権力とは、一人ひとりに与えられた力ではなく、必要なときにだけ、

取り出して使うことができるものにすぎない。事に当たるには権力が

不可欠だが、いつでもそれを手放す覚悟がなくてはならない。

つまり、権力とは『借り物』であって、使い終わったら国民に

返すべきものなのだ。   P134

 

「それでも蒋経国は『中華民国』あるいは『国民党』をいかにして維

持していくか、という信念に基づいて政治を行っていた。

批判はあるが、指導者には信念が必要だということを学んだのも蒋経

国からだ。  P147

 

個人の感情や価値判断よりも、国家や国民の利益を優先させよ。

P156

 

あの時代、日本は理想的な日本人を作り上げようとした。そうやって

出来上がったのが私という人間なんだ。  P168

 

日本時代に叩き込まれた『公』のために尽くす精神。これがあったか

らこそ、苦しかった台湾の民主化もあきらめることなく成し遂げたれ

たんだ。台湾の民主化に成功は、日本教育のおかげだ。 P196

 

(著者早川氏の言葉)

現在、台湾に住む人々が民主主義や自由を当然の権利のように享受し

ている裏側には、李登輝をはじめとする多くに台湾人の苦難と涙の歴

史が隠されているのである。  p208

 

3.最後に

 別段、難しい表現、概念を理解するために深い予備知識が必要は言葉

はありません。

内容は、「まさにおっしゃるとおり」腑に落ちます。とりわけ反論も

ありません。

「真実は、常に単純である」と納得もします。

世の中に流布している名言・格言同様ある意味で、「誰でも言える

言葉」かもかもしれません。

しかし読み手の心に響くのは「実績」の裏打ちされた人間の言葉

だからであり、また言葉の重みを感じるのでしょう。