中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

人はなぜ死ななければならないのか(読書感想文もどき) 死があるからこそ生に意味が与えられる

人はなぜ死ななければならないのか

 小浜逸郎/著  

出版者    洋泉社 2007.2

1.概要

今回も、理解に大変でした。

最も今日的な生=死とは何かについて

「死の自覚こそが生を規定する」という考え方を日常生活の

基本項目に即して展開し、日常における普通の人々の生き方

を肯定する哲学的考察。シリーズ三部作、でありついに完結

となります。

4章立てになっていて

第1章 「人は何のために生きるのか」と問われたら

第2章 哲学・思想はほんとうに役にたつのか 

第3章 死はなぜ不条理で恐ろしく、また悲しいのか

第4章 人はなぜ死ななければならないのか 

 著者紹介 を少し  

  1947年横浜生まれ。横浜国立大学工学部卒。批評家。

国士舘大学客員教授。2001年より連続講座「人間学アカ

デミー」を主宰する。

小浜逸郎さんについては、11月9日 18日に取り上げており、

3冊目の紹介です。 

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いろんな意味を重ねた老人のイラスト

2.本文からの引用

現実には、人生を経験してきたまともな大人ならば、多くの
人が生の虚しさについてある感性をもっている、と私は思う。
いいかえると大多数の人もまた、生きる意味などないとわ
かっているのに、仕方がないので短中期的な物語を自らに課
して、意味があるかのようにふるまっているにすぎない。
ただ彼らは、自称「哲学者」のようにいちいち大騒ぎしてみ
せないだけだ。  P62
 (michiコメント:私に気持ちに非常に近い。こういったセリ
フが自分でうまく書けないんですよね。)
 
112
この原理主義的な思考様式は、欲望を欲望として認めず、生の
意味を生の外側に求めるから、「永遠の魂」とか「最高善」
いった空手形によっていつも人々を欺かなくてはならなくなる。
そしてその手形を懐にしていることを自認する哲学者は、その
ことによってふつうの人々よりも優位にあるという自画自賛
「構造」を絶えず再生産するのである。  P112
 
 
哲学や思想は、閉ざされた「密教」ではない。それらは公開さ
れた言説であり、いつでもだれでもそれをあとから追尋し、
かつ必要とあらば反省や批判や修正を加えることができる。
だから、たとえ過去の思想的遺産のなにがしかが社会的な悪影
響を及ぼしたとしても、長い目で見ればその「罪」の部分を刈
り取っていくことができるのである。
そこに哲学や思想のかすかな希望がある。  P119
 
人間にとって死が恐ろしく不安なものとして感受されるのは、
ひとことで言えば、それが意識そのものの永遠の消滅という、
生きている限りは決して招来し得ない事実だからである。 P142
 
死に対して一番恐怖を感じるのは、自己意識の水準が最も高
まった状態、年齢でいえば、少年期から青年期にかけてである
と言える。この時期は、個体としての孤立の意識がきわだち、
個体としての自分の存在がどうあるべきかということを最も
気にする時期である。   P145
 
自殺には死の恐怖を克服する勇気が必要だと感じる人と、ほん
とうに自殺に踏み込む人とは、その気分状態が決定的に異なっ
ているのだ。
死とは共同存在としての人間のあり方からの脱落だから、本当
に自殺を決行する人は、すでにその脱落を「気分」としてじゅ
うぶんに味わい尽くしているのである。そこにはもう「自殺は
勇気が要ることだ」という観点を超越したものがある。  P147
 
人間が死に対して抱く三つの態度(不条理感、恐怖、悲しみ)
由来
不条理感 
 言語によって構成された「私」という絶対的な主観性の構造
 から やってくるものであり、それ自体として克服不可能
恐怖
 人間の自己意識がそれ自身の消滅を表象できないという不可
 能性に由来。
悲しみ
 他者の死に対する悲しみは、人間が根本的に情緒的なつな
 がりにおいて生きる存在であることからやってくる。  P157
 
結論から先に言えば、人はまさに人たる資格において、「死な
なければならない」のである。いいかえると、死があるからこ
そ、人間の生には意味が与えられるのである。  P159
 
 3.最後に
 読後感は、また複雑。
死があるからこそ、生に意味があるとの結論は、理解できるし、
腑に落ちるところです。
しかしながら縦横無尽と思えるし思考展開には、私の頭がつい
ていかない、というもどかしさ。
頑張ろうとは思う一方「仕方がない」という割り切りもある。
 同様のもどかしさを、今後ずっと、それこそ死ぬまで、引き
ずって、生きていくのでしょう。
  
 楽天に、本書が載っていなくて、著者小浜逸郎さんの「頭は
良くならない」の紹介にしました。