中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

文字世界で読む文明論(読書感想文もどき) フィードバック・システムの創造が必須

文字世界で読む文明論

比較人類史七つの視点

鈴木董/著  

出版者    講談社 2020.7

1.概要

科挙はなぜ中国内部の凝集力を高めたのか? 古代ローマと現代アメ

リカに共通する限界とは? 洋装はいかに非西欧世界に受容されたか?

といった古今東西の出来事を題材に、論じます。

とても良い情報整理となります。

著者は、フィードバック・システムの創造が必須、と説きます。

 

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     正確な理解を前提として、初めて比較ができます。

2.本文からの引用

私は、人類文明がより成熟し第二段階に移行するためのキーワード

として、「フィードバック」を提唱したい。このごろその危機が叫

ばれはじめた「民主主義」というのも、高級なお題目などではなく、

その要諦として「みんなのこと」を決めるときのフィードバックと

いう面が非常に重要なのである。  P11

 

(文明の定義)

文明とは、人間の外的世界(マクロ・コスモス)についての、利用・

制御・開発の能力とその諸結果の総体、及びその諸結果についての

フィードバック能力とその諸結果の総体、そしてまた、人間の内的

世界(ミクロ・コスモス)についての制御と開発の能力とその諸結

果およびその諸結果およびその諸結果についてのフィードバック

能力の総体  P37

 

(文化の定義)

人間が集団の成員として後天的に習得し共有する、行動の仕方、

ものの考え方、ものの感じ方の「くせ」とその所産の総体 P40

 

「超自然的世界」と「自然的世界」が渾然として一体をなしてい

た社会が、次第に、「超自然的世界」と「自然的世界」へと分離

し、唯一の体系知もまた、「超自然」的存在を前提とする知の体

系と、「自然的世界」限りでの知の体系へと分離していく。

そして、現在の我々は、前者を「宗教」と呼び、後者を「科学」

と呼ぶ。  P85

 

かつて人類の知の体系において「宗教」の領域が「超自然的

世界」の存在を前提としない「諸科学」の誕生と発展によって

次第に狭められていったように、「哲学」の領域もまた、次第

に個別科学ないしは個別的「学問」の」誕生と発展によって、

狭められつつあるのではなかろうか。   P93

 

日本の「家」には血縁集団よりむしろ「経営体」としての性格

が強く、西欧のファミリーや、中国の「宗族」とはひじょうに

異なったものだったようにみえるのは確かである。  P99

 

人間は、多様な目標を達成するために、多様な組織を創り出し

てきた。そして、ある文化の刻印を帯びた個々の個別文明の盛

衰に、組織技術上の比較優位は大きくかかわってきた。しかも、

組織は、ヒトを成素とし、ヒトは文化の担い手であり、個々の

組織は、文化の刻印を色濃く帯びる。  P123

 

人類の「文明」そのものは、後退と衰亡の危険をはらみながら

も、今日までのところ、何とか前進を続けてきた。しかし一方

で、文化の刻印を帯びた個別文明は、興亡を繰り広げてきた。

  P200

 

 イノヴェーション能力は、普遍的な人類の文明全体の発展のた

めには必須である。また個別の文化の衣をまとった個別文明の

盛衰にとっても決定的な条件である。そして、昨今の状況下に

おいては、負の諸結についてのフィードバック能力における創造

的イノヴェーションそ、急迫の必要であろう。   P242

 

発展の結果について不都合なものを極力予防し、不都合な結果

が出現すれば、これに迅速に対応しうる能力を高め、行き過ぎ

に歯止めをかけるフィードバック機能が十分に備わったとき、

文明は第二段階に入ったといえるのではないか、ということを

論じてきた。

こういう文明観に立てば、現在の悲観的文明観はあくまで第一

段階のまだ未成熟な文明をめぐってのものであり、ここで努め

るべきは、文明の行きすぎとその不都合な諸結果を防止し、

生じたときはこれに迅速的確に対処するフィードバック・シス

テムを創り出していくことではあるまいか。   P251

 

3.読書感想文

確かに、博学多識、歴史を縦軸、地域的広がりを横軸によく

整理されています。私が断片的に知っていることも、そして

知らなかった出来事も、たくさん出てきます。

包括的な著者の強い主張が「フィードバック・システムの創出」

と思われますが、どうも私には、もやもやしています。

 

私のこの書評ブログ「読書感想文もどき」の軸は、本文からの

引用においています。変に私が、要約や解釈、私見をを入れた

りするのではなく、本文中からビックアップしながら、それを

連ねることで、著者の主張を、纏めていく手法です。

そういう意味では、なかなか引用が厄介な本でした。

誤解を恐れずにいれば、教科書、参考書的に、事実関係の把握

に大いに役立った、というところでしょうか。