中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

「戦争と平和」の世界史(読書感想文もどき) 茂木さん見解 現代史は白眉との私見

戦争と平和」の世界史

日本人が学ぶべきリアリズム

茂木誠/著  

出版者    TAC株式会社出版事業部 2019.7

1.概要

(1)古人類学による戦争の起源から、21世紀の東アジアの未来まで

を凝縮。

世界の戦争の歴史を振り返り、人類がいかにして戦争を抑止するシス

テムを構築してきたかを考え、今後起こりうる危機に巻き込まれない

ための方策を示す、というのが一般の書評です。

(2) 別所で書いた、茂木さんへの私見ですが

「歴史を知る」ことが「現在」を知る手がかりであり、茂木さんは、

①深く知っていることと、②自分の見解を解り易く示すことができる

こと、③立ち位置が「真ん中よりちょっと右」であり私の好みです。   

f:id:xmichi0:20210224120240j:plain

今回、真珠湾攻撃のイラストにしました。

2.本文から

トゥキディデス「戦記」から)

「なぜ中立を認めてくれないのか、正義はないのか?」と懇願するメ

ロス代表に対してアテネの軍使が言い放ちます。

「正義とは、対等な相手に求めるもの。強者は弱者に対し、命ずるの

み」「弱者に妥協すれば、他国から侮られる。我らはそれを望まぬ」 P33 

きれいごとを言っても、実力がない者は滅ぼされ、不正義が実現す

る、というリアリズムの考え方 P34

 

敵の大量殺戮や奴隷化は古代社会の常識であり、「都合の悪いこと」

ではありません。被征服民の神殿は破壊され、戦勝国の神々が強制さ

れるのが常識です。

しかし、日本では出雲大社石上神宮のように敗戦国の神をそのまま

祀ってきたのです。これは世界史上、特異な現象といえるでしょう。

P37

 

(中世における戦争のルール)

西欧諸国や日本では、戦闘は幼少期から訓練を積んだ騎士階級・武士

階級がやるもので、民衆の多くは避難し、時には高みの見物を決め込

んでいました。戦闘に勝利した領主は、敗者の領地を奪いますが、そ

この住む人民まで殺戮してしまっては領地経営ができなくなります。

  P51

 

(宗教関連戦争の2つの見解)

セブールベタ

  アリストテレスを引用、先住民は野蛮人、生まれつきの奴隷、キ

  リスト教文明に浴させるための戦争は正当

ラス・カサス

  独自の文明を持っていた先住民は野蛮人ではなく、スペイン人に

  よる征服は不当   P81

 

 植民地化された東南アジアの国々では、大学の講義は独立後も英語

やフランス語、オランダ語で行われています。今日、日本人が、日本

語で西欧の文献を読めるのは、西周ら幕末明治期の優れた翻訳者のお

かげです。これらの和製漢語は日本語として定着しているのみならず、

中国にも逆輸出されて西洋思想の普及に貢献しました。  P144

 

榎本武揚黒田清隆の函館戦争から)

敵味方に分かれて戦う双方の中軸に、近代国際法の知識を持つ人物が

いたことは、近代という荒波に漕ぎ出す日本にとって、まことに幸運

なことでした。  P163

 

本来ならば、大正期に帝国憲法を改正し、米・英型のシビリアン・コ

トロールを採用すべきでした。しかし帝国憲法は完全無欠の「不磨

の大典」とされ、改正議論するらタブブ―とされてきたのです。

この「憲法には指一本触れてはならない」という日本独特の慣行は、

敗戦後の「日本国憲法」にも引き継がれています。  P267

 

  情報と補給の軽視ーーこの昭和期における帝国陸軍の深刻な病弊が、

作戦課の暴走、戦線の拡大、大東亜戦争の無残な敗北をもたらしたの

です。この病弊をもたらしたものは、学歴主義と間違ったカリキュラ

だったのです。  P277

 

日中全面戦争で利益を得るのは、日本でもなければ国民政府でもあり

ません。戦争を望んだのは何者か?

満州の日本軍に脅かされているソ連スターリンと、国民政府との内

戦で追い詰められている中国共産党毛沢東です。  P300

 

ソ連崩壊(1991)後の情報公開で、米英の情報機関が第二次世界大戦

から傍受してきたソ連とその工作員ネットワークとの通信記録が徐々

に明らかにされています。その結果、ソ連の工作が日本のみならず、

米国政府の中枢にまで及んでいたことが明らかになってきました。

その事を無視しては、日米開戦の真実には迫れません。 P310

 

 (瀬島龍三を評した流れから)

 日本を泥沼の戦争に引き込んだ「昭和維新」の思想とは、天皇をいただく

国家社会主義北一輝の思想であり、そのモデルはソ連社会主義でした。

統制派と行動はの構想は「革命方針」をめぐる「内ゲバ」の過ぎません。 P408

 

(michiコメント)

第11章「昭和の軍部hなぜ暴走したか」 第12章 「日米戦争 破局への道」

第13章「アメリカ幕府のもとで」については、まさに現在の日本を作る「現

代史」であり特に面白かった。

随所に茂木さんの見解もちりばめられ、共感する部分が特に大きい。 

 

 3.最後に

茂木さんは文字情報より音声情報の方が多い、私には珍しいケース。

Youtubeの彼のチャンネルを、最近よく聞きます。

もぎせかチャンネル - YouTube

「世界史の講義」だけでなく、時事ニュース分析がとても面白い。

例えば、米国大統領選挙見解や、最近の「ミャンマー事件」読み込み

も気に入っています。

本書に戻ると、「考える」ためにはまず知ること、しかも正確に多方

面から、と改めて感じます。 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム
価格:1760円(税込、送料別) (2021/2/24時点)

楽天で購入