私の最大関心事の一つが「台湾」ですが、
久しぶりに、ブログで台湾関連を取り上げます。
昨今の須賀さんの訪米で、少しマスメディアでも台湾海峡の問題
を流したようですが、現在の政治問題は、今日は書きません。
直近読んだ二冊の紹介です。
あくまで、私の視点、感想ですが
①「台湾の歴史と文化」は、(若手?)学者のしっかりした記述です。
どうしても台北中心となる中、台南視点は、良かったと思います。
②後藤新平は、台湾近現代史にには、欠かせない人ですが、彼の人と
なり、考え方、実績に深く言及した、大変参考になる一冊でした。
1. 台湾の歴史と文化
六つの時代が織りなす「美麗島」
大東和重/著 ゙
出版者 中央公論新社 2020.2
概要は、
街路に残る古跡や廟、人々に愛される名物料理、信仰と祭り
台湾の文化は、各時代の外来政権との関係によって形作られて
きました。日本の50年の植民地政策も、もちろん、大きな
影響です。
激動の台湾を生きた人々の視点から、多様な文化の魅力を活写し、
400年におよぶ歴史をたどっています。
第四章「古都台南に残る伝統と新興(慎重文化の堆積)は特に
私には、新鮮な視点でした。
二か所ほど引用します。
台湾の仏教は、教義や入信・修行、宗教団体、信仰心の篤さといっ
た面で、組織的に整備されている。」著名な仏教団体には、花蓮市
の「滋済基金会」や高雄市の「佛光山」、新北市の「法鼓山」など、
「五座山」と呼ばれる、規模の大きな団体がある。ボランティアや
医療、教育の分野で盛んに活動し、大きな社会勢力となっている。
その一方で、台湾の道教は、民間信仰や民衆道教と呼ばれ、宗教と
いうよりも、日常に密着した習慣としての信仰という面が強い。
信仰の中心は廟である。廟は日本の神社に対比できるが、生活区間
の中に今も息づく点では比較にならない。 P131
台湾に住む人々は、大きく分類すると、南方から移住してきたと思
われる、オーストロネシア語族の先住民と、台湾海峡を渡ってきた
漢族のビン南人・客家人・外省人、そして近年の移住者、新住民と
なる。
しかし歴史を紐解けば、外来政権の、オランダ・鄭氏政権・清朝・
日本・国民党による独壇場だった。台湾に住む人々はつねに外から
侵入してくる支配者を順繰りに受け入れざるを得なかった。
長い年月をかけて、1980年代に至り、この地に生を受けだ人々が、
地の主役となる時代が、ようやく訪れた。 P243
2.後藤新平の台湾 人類もまた生物の一つなり
渡辺利夫/著
出版者 中央公論新社 2021.1
概要を書くと
ゲリラの絶えなかった台湾は、植民地経営の成功例の一つと言
われるまでになりました。
一冊目紹介の大東和重さんは、もともと比較文学専攻で台湾文学専、
本社は、あるべきリーダーシップ論とも言えます。
西郷隆盛の長男、西郷菊次郎が台湾で尽力したのは知っていました
が、後藤新平の部下の立場で、実務を行っていた状況は、知りませ
んでした。
結論めくんですが、リーダーシップを発揮する場合、本人の考え方、
能力、知識、経験は必須ですが、「環境」を新ためて、考えさせら
れました。
台湾を取り巻く国際情勢や日本の現状、トップに児玉源太郎がいた
こと、台湾という舞台でのなんでも「創業」的状況であったこと等、
上手く重なって、後藤の「実績」ができたのだなと、深く感じます。
「後藤思想の源流」からの引用
個々の人間は生理的動機に突き動かされて生理的円満を充足しよう
とする者の、個々の人間は自らの生理的円満を充足するための秩序
を形成する力はない。
この力を持つものは国家のみであり、国家という「公共ノ力」に
よって、始めて人間は生存のための空間を確保することができる。
個々人の私的利益の追求が自己運動を重ねて最適解を導き出すと
いった、予定調和的な世界観とは際立って対照的な世界観が後藤
のものであった。
もう一つ、引用および要約
内務省衛生局長、台湾総督府民生長官ののちの「きらびやかな経歴」
初代満鉄総裁、内務大臣、外務大臣、東京市長、再度の内務大臣、
全て台湾総督府民生長官時代の「残照」であり、
生物学の原理に基づく諸政策を台湾社会の深部にまでいきわたらせる
難業がハイライト P219 から
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