絶対に挫折しない日本史
古市憲寿/著
出版者 新潮社 2020.9
1.概要
思い切って固有名詞を減らしてしまい、流れを超俯瞰で捉えれば、
日本史はここまでわかりやすくて面白くなる、との触れ込み。
あとがきによれば、著者に「サピエンス全史」と似たようなこと
が出来ないかとの意図があったようです。
なく書けた、という面は「日本史入門」としたあったようです。
私見では、
「第一部通史編」、解り易い日本経済史で昭和末から平成は風俗
史でしょうか。
第二部のテーマ史編にも、いくつか面白い視点があり、いくつか
引用します。
2.本文から
(1) 第一部通史編 から
大和の権力者がバックにいる知示すことで、地方政権の権威を
高めたかったのだろう。だから同じ形であることが重要だった。
その意味っで、前方後円墳の特殊なデザインは、セブン―イレ
ブンがお店に掲げるロゴマークに近い。
P33(古代史の前方後円墳の話)
「戦国時代に生まれたい」という人がいたら、全力で止めにか
かりたい。なぜなら、戦国時代は、戦争に加えて飢餓の時代だ
ったから。(中略)要は食料が収穫できない寒い季節を乗り切
れず死んでしまっているのだ。 P74
戦場でしか生きられない兵士たちはどこへ向かったのか。
一つの行き先は巨大公共事業の作業員だ。
もうひとつは朝鮮出兵である P85 (16世紀末の話です。)
16世紀までの農村では生涯結婚できない人がたくさんいた。
結婚とは、もっぱら家を継ぐ長男のものであり、直径長男でない
場合は、結婚して世帯を持つ自由が与えられていないことも多かっ
たのだ。今でいう奴隷同然の人も多く存在した。 P90
当時の政治家や官僚田とも、そのことはわかっていた。ぞれでも
なぜ日米開戦に踏み切ったのか。
「戦争に向かう選択肢は、他の選択肢に比例して目先のストレス
が少ない道」だったという説がある。要はみんなが納得できるよ
うな戦争回避を結滞することができなかったため最もマシな選択
肢が日米開戦になってしまったというのだ。 P130
最も社会が劇的に変化するのは人口動態が変ったり、世代交代が起
こり旧世代の指導者が退陣した時だ。その意味でかつてのパンデミッ
クは社会を変えただろうが、医療技術の発達した現在日本で新型コロ
ナウィスルの影響は現敵的だと考えられる。 P149
(2) 第二部テーマ史編 から
日本中がコメだけを主食にできたのは、わずか100年前のことなのだ。
しかも国産米だけで胃袋を満たせるようになったのは1970年代以降だ。
列島人類史4万年を365日で考えた場合、それは大みそかの出来事で
ある。 P183 コメと農耕の日本史
(人々が昔から物語を必要としてきた理由について)
一つの理由は、そこに「救い」があるからだと思う。辛い事ばかりの
現実から、ほんのひとときでも離れ、夢を見させてくれるような物語に
太古から人々は魅了されてきた。 P204 神話と物語の日本史
「先祖代々の土地」という言い方がある。しかし「先祖代々」と言い
ながら、実はこの農地改革で手にしただけの土地という場合が少なく
ない。 P279 土地と所有の日本史
3.読後の感想
(1)著者の言葉を引用すると
歴史とはつまるところ、証拠と推論の組み合わせによって織りなされる
記述である。誰かが何かを残し、それを守る人がいたから、歴史は続い
てきた。歴史を読み書きするのは、この営みに参加することに他ならな
い。 P309
極めて明確な意見。私見は同意です。
「俯瞰的」な話もよくできています。
「E・H・カーの歴史とは何か」ではないですが、私は歴史は現代との
対話により「解釈」によって作られる、個人の考えで歴史は違う、とい
った見解です。
(2)以前にも書いていますが、内容が基本的に理解できて、80%の
事象は認識済みで20%が新規の解釈・説明、というのが読みやすいと
思っています。
この辺りが、読み進めて退屈しないし、また難渋もしません。
本来の意味で、時間を費やすのに「適当」な本でした。
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