中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

宗教と日本人(読書感想文もどき) 宗教を信仰・実践・所属の三要素に分解する視座

宗教と日本人

葬式仏教からスピリチュアル文化まで

岡本亮輔/著  

出版者    中央公論新社 2021.4

1.概要

(1)日本人と宗教の不可思議な関わりはどこへ向かうのか。

新宗教の退潮とスピリチュアル文化の台頭、変わる葬式や神社

の位置づけ、古代宗教のブーム等々。

人々の規範から消費される対象へと変化しつつある宗教の現在地

を示しています。

(2)「宗教と日本人」とは、臂臑の大きなタイトルですが、

宗教を心や信仰に還元する議論からとらえ、日本人は無宗教か?

とか、日本人はなぜ、ぬ宗教家?ほんとに無宗教か?といった

観点でなく

宗教を信仰、実践・所属という三要素に分解する視座を採用し

ています。

(3)特徴的に書くと

  葬式仏教信仰なき実践

  神社は信仰なき所属

  スピリチュアル文化は所属なき私的信仰と実践

となります。

 

f:id:xmichi0:20210516103050j:plain

「葬式仏教」のイメージとしました

2.本文から

日本宗教の特徴は、緩やかな情緒や関心を基調とする、信仰

なき宗教と言える。三位一体を信じるか否か、イエスの死後

復活を信じるか否かという信仰箇条を中心とするキリスト教

とは根本的に異なる構成なのである。    P39

 

なぜ地獄も浄土も信じないのに戒名を貰い、僧侶を導師にし

て葬式を行うのか。それは、死者を送る作法として、葬式仏

教を利用するのが便利だからだろう。

そもそも葬儀は死者のためだけに行うものではない。その人

の今後の不在を社会に通告し、悲しみを表現し、遺族を慰安

する実践として、葬式仏教は長い時間をかけて整備され、

日本社会に定着してきた。    P76

 

戦後に限っても、葬式仏教批判は半世紀以上も続いている。

だがそれでも仏教による葬式の独占は続き、樹木層などの

一見新たな葬法も、実質的には現代社会い合わせて変化を遂

げつつあるのだ。

葬礼の実践によって感情的・社会的効果をもたらす葬式仏教

は、信仰なき宗教の典型と言える。   P78

 

日本人の宗教は個別の宗教には回収されない広い裾野を持つ

という主張がなされるとき、多くの場合、神道と神社が焦点

になることには注目すべきだろう。

現代宗教として神道を捉え返せば、信仰要素は弱く、実践

要素についても、宗教者自らがその宗教的意義を否定する

場合すらある。

残された所属要素こそが、神道の最大の特徴なのである。

P106

 

スピリチュアル文化は、科学との親和性を保つための宗教

の再構築と言える。宗教と科学の融合が主題として説かれ、

世界の説明原理として力、気、念、宇宙、大自然、内なる

神といった、よりニュートラルな概念が頻出する。

化学的言説を意識し、それを取り込む過程であからさまに

宗教的神が殺され、世俗社会の文化や価値観と相性の良い

信仰や実践が生みだされているのである。  P147

 

本書では、宗教を信仰・実践・所属の三要素に分解する視

座から、葬式仏教は信仰なき実践、神社は信仰なき所属に

よって大きく特徴づけられることを見てきた。

そして前章で見たスピリチュアル文化では、世俗社会の価

値観や世界観と神話的な信仰と実践が構築・消費されていた。

 P149

  現代社会における宗教の役割となると、ハンチントンが価

値感の源泉として宗教に一定の可能性を認めているのに対

し、ハラリは否定的だ。虚構によって一部の人々をまとめ

上げる宗教は、現代ではナショナリズムと結びつき、人類

を敵対させる原因になっている。宗教が怒りを収め、友愛

をもたらすこともあるが、それは一部の人々への敵対視と

引き換えだ。

宗教は人々を結びつけるよりも分断するものであり、人間

が道徳的に生きるのに必要な価値観は、全て世俗主義から

調達できるとハラリは断言するのである。  P190

 

3. 少しの感想

 宗教については、比較宗教の点から興味があり、歴史や神話

との絡み含めてわりと読んでいる方です。

しかしながら、宗教を信仰・実践・所属の三要素に分解する

視座は、始めtげであり、コンパクトな本ながら、良くまとま

っていて勉強になりました。