昨年1月10日から 「読書感想文もどき」に至らなかった「敗戦記」
というのをアップしていますが、今回26回目です。
私の現在形として、本を読める環境というのは、変わっていません。
ありがたいことです。
イラストもあえて、同じものを使用、趣旨も同じで、硬軟とり交ぜ、
読者への何らかの参考となればと・・
1.ネオウイルス学
河岡義裕/編
出版者 集英社 2021.3
新型コロナのパンデミックとその先を見据える学問の新領域で、
今どんな研究が進んでいるのか? ウイルスと生命、その共生と進化
の未来を専門家20名が平易に解説する、とあります。
平易かどうかは、もちろん個人差有で、執筆者はそれぞれ丁寧な
記述かと思います。
数多の論文集から、好きな表現がありました、
タイトル 「温泉の古細菌ウイルス 望月智弘∥著」
から、一つ引用します。
地球と生命の起源を求めて温泉へ
よく「仕事で温泉巡りできていいですねー」と羨ましがら
れます。
しかし実験は、できるだけ多くの温泉水採取を目的として
いるため、一日の終わりには水の重みで肩にアザができる
ほどの重労働です。 P230
2.望郷の道 上、下
北方謙三/著
出版者 幻冬舎 2009.3(上巻) 幻冬舎 2013.5(下巻)
私があまり読まない小説ですが、以前日経新聞記載(2007年8
月から)連載で、お気に入りだったものです。
(上巻)
時は明治。自分の信じた道を突き進んでいく男と、家業の賭場
を守る健気な女がいた(一人娘だった)。
縁があって藤家ヘ婿養子として藤家ヘ入る正太だが、先を読む
独特の能力と男気で藤家を先代以上の処迄引き上げた。
ここに、それを妬む人物が出てくるのは、ある意味小説の定番。
近代史の一面をみますね。
(下巻)
愛する家族を守るため凶行に出た正太は、九州を追放され日清
戦争後の混乱著しい台湾へ。
だがある日、失意の正太の前に妻が幼子を連れて現れる。
活力を得た正太は台湾で菓子屋を創業し、競争の激しい商いの
世界に身を投じています。
実務的な、細かい描写が確りしていて、小説に厚みを持たせます。
「ドロップ」成功なのですね。私の子供の頃も、定番菓子でした。
以前読んだ北九州の賭場関連記述より、日清戦争後の台湾記述が、
今回は特に印象に残りました。
主人公正太の台湾での商売感覚に「なるほど」と思うシーンは、
従前と同じでした。「企業(起業)小説」という前の「人間の真
摯なもがき」を強く感じました。
3.混迷の国ベネズエラ潜入記
北澤豊雄/著
出版者 産業編集センター 2021.3
破綻国家と噂される、南米ベネズエラで見たもの…それは絶望か、
それとも希望か。
三度に渡りベネズエラに潜入した新進気鋭のノンフィクション
ライターによる、限界ギリギリの冒険紀行といえます。
新型コロナ報道で、高橋洋一さんが、マス・メディアの「情報の
切り取り」について、熱弁していましたが、古今東西ある話だと、
私も改めて思います。
こういったルポルタージュをたまに読むと、またそれを感じます。
いわいる「特派員報告」とは、情報の質・レベルの差異を思います。
(著者が、ベネズエラのメリダというとして食事に向かうところ)
国家破綻寸前で食料がなく停電が多いと報道されている国で享楽
にふける若者がいるとは思いもよらなかった。そこら中に飢え死に
寸前の人々が転がっていると思っていたのだ。 P65
日本で生まれ育ち日本語で試行する私と、中安米の支配階級でない
市井のヒト、インドの同様の環境のヒト、イスラム原理主義者の方々
は、思考回路が全く違うのでしょう。
4.共産主義批判の常識
小泉信三/[著]
出版者 中央公論新社 2017.8
戦後における小泉信三の思想形成の出発点であり、マルクス主義批判
の入門書。民主主義との相反を暴いた終戦後のベストセラーを著者
没後50年に復刻、とあります。
わずか2,3世代前には「常識」であったのでしょうが、現代は?
現在は、ソ連の崩壊、中華人民共和国の「社会主義市場経済」他、共産
主義の実態をを、つまり当時は見えていなかった実態をが見えています。
ハイエク研究者の楠さんの言葉を引用します。
権力に反抗しながら一方で権力に阿ね、講和条約締結に際して
平和と説きながら国内では闘争を煽り、増嫉を原動力として平等
を語る論者にみられた精神構造を小泉は文明的でないとし、敗戦後
の日本が再び独立するたっめの障壁と見た。
小泉は『共産主義批判の常識』その他の数々の著作を辻て現代に生
きる私たちに語りかけている。 P24
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