ようこそ地獄、奇妙な地獄
星瑞穂/著
出版者 朝日新聞出版 2021.6
1.概要
仏教とともに地獄の存在を知って以降、常に地獄を身近に感
じながら生きてきた日本人。
や絵画をひもときながら、時代の空気の明暗や当時の世相、
日本人の死生観を説いています。
いまさらながら、自分の古文の読解力がいまいち、と強く
感じます。忸怩たる思いですが、なかなか厳しいです。
2.本分から
(往生要集の世界の在り様の7つの分け方)
まず、我々の住むこの世界は心休まることがなく、忌み嫌う
場所であり「厭離穢土」である
7つに分けると
①地獄 ②餓鬼 ③畜生 ④阿修羅 ⑤人
⑥天 ⑦惣結
①の地獄をさらに8つに分ける
統括 黒縄 豪州 叫喚 大叫喚 焦熱 大焦熱 無間
P18-19
「あの世」の風景は、時代とともに変遷しているらしい。
平和ン時代の説話省などの古典文学に描かれた「あの世」
には、広大な野原や大きな川といった共通する景色はある
けれども、中世以降、人々の関心が移ろうと、それに伴って
新し設定や伝説が生まれ「あの世」の景色も大きく変化して
しまうのだ。 P135
義仲は「後世を弔う」はずの家臣たちを次々と失うことによ
って、来世さえ期待できない孤独な末路を迎えたのである。
人を殺したという罪を背負い、家臣からの供養もなく中陰を
彷徨い、十王の裁きを待つ。これは中世の人々にとって、最
も怖れていた死のあり方だった。 P149
これは筆者の推察だが、閻魔王をやりこめてしまう朝比奈は、
地獄の恐怖を人間が乗り越える時代の象徴だったのではない
か。
ただひたすら地獄に怯え、「この世」にも希望が持てず、
「あの世」に行ってからの心配ばかりしなければならない
戦乱の時代が終わろうとしていたときに、人々は仏法の功
徳を説く説話世界から離れ、「この世」の明るさを楽しむ
時代を求めていた、それをもたらしたヒーローこそ朝比奈
だったと推測するのである。 P234
第六章 パロディ化した地獄から
(古代から中世にかけて、日本人の侵攻に基づいた怖いモノ、
畏怖すべきものから、暮らしの中にある当たり前のものに変化
してきあたようです。川柳を須耕志引用します。)
極楽へ やるぞととえんま こをしかり
閻魔さま 仏師がへたで 笑い顔
さし引きは 閻魔も困る 医者の罪
又行って 来るとたかむら ちょっと死に
絵で見ては 地ごくのほうが おもしろい
日本人は無宗教の人が多いと言われるが、実際のところは
特定の宗派に属していないだけで、毎日にように宗教的な
行動をしているというのはよく指摘されるところだ。
(中略)
いくら無宗教といっても、日本人が地獄を完全に忘れてしま
うことは、今後もおそらくない。なぜなら、人はいつか必ず死ぬ。
「死んだらどうなるのだろう」という疑問や恐怖は、宗教を越
える普遍的な人の心だ。 P299
3.今日の感想
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