中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

未来は決まっており、自分の意志など存在しない(読書感想文もどき)絶望でなく希望

未来は決まっており、自分の意志

など存在しない。

心理学的決定論

妹尾武治/著  

出版者    光文社 2021.3

1. 概要

楽しい心理学の知の旅に出よう! 「この世は全て事前に確定

しており、自分の意思は幻影だ」という仮説を唱える気鋭の

心理学者が、心理学・生理学・脳科学・アート・文学・サブ

カルを横断し世界の秘密に挑みます。

 「思想としての心理学的決定論が、実行としての生活と

無関係であるなら、この本の存在価値はないか?」に対して

筆者は

「知識、考え方として純粋に知りたい、読み進めたい人が

読めばそれで充分であり、この考え方をべーズに社会を変

えようとか、哲学的に絶対的な真であるから思想として

広めようという「意志」は著者にはない。

 と。コメントしています。

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本書の副題は「心理学的決定論」です。

2.本文から

人間委は自由意志はない。世界は事前に全てが決まっている。

環境との相互作用によって、その都度人間は自動的に反応行動

をしているだけである。意志とは幻想である。

(中略)

それ(意志)によって未来が変化するようなものではなく、

世界は既に全てが決まっている。

この考え方を本書では、心理学的決定論と呼び、一貫して

主張していく。  P44-45

  

人間は後天的に自分のDNAを変える能力を持たない。高身長

のDNAを持って生まれているならば、遅かれ早かれ背は高く

なり、DNAレベルでの変更を施せないという意味で、我々は

生物学的な次元での「公正」を施せないのかもしれない。 

 P70

 

 (ユダが密告後、激しい後悔から自死したことをうけ)

2000年も前から、人間の罪と自由意志のあやふやな関係が

描かれていたのである。

自分の意志といえるのかわらないほど、人間は不意に行動

を起こし、その罪のおびえる存在なのである。 P84

 

人間の意思を超えたところで、我々は操られている。

我々は神、つまり環境と身体の相互作用によって生じる脳内

活動という不可避で圧倒的な人間を操作する力の奴隷なのだ。

脳が意志よりも先んじるのである。 P102

 

心理学的決定論という観念が世界を根本から変えてしまう

のだ。新しい時代には、新しい価値観、勧化得方が生まれる。

そういう考え方もありうるのだなという寛容さも必要ではな

いかと私は思っている。 P105 

 

これがAIのブラックボックス問題と呼ばれるものである。膨大

な情報に基づいて、何らかの判断、洗濯をしているわけだが、

それを人間にわかる形で説明することがもはやできないので

ある。 P111

 

空海は、日本史上最も聡明であり極めて高い知性を持った人

物だったと言われている。その空海密教の教えについて、

最終的には言語化ではなく、仏像や仏画を作り、それを通し

て言語以外の方法で身につけるしかないという言説を残し

ている。 P115

 

自分自身にいsかアクセスできない感覚のことを、クオリア

と呼ぶ。P116

 

我々の行動もAIの選択も、自由意志などなく、膨大な情報から

一意に導かれた唯一の結論であるのだ。判断、結論に至る過程

が理解不能だからこそ、我々は「自由」を感じるのだ。実際に

は全てが一意が事前に定まっている。  P124

 

外側に世界はなく、見る人がいて初めて内側に世界がある。この

仏教の古典的教えは、20世紀の科学、すなわち量子論と一致する

面がある。 P164 

 

唯識とは、心理学的決定論を仏教的に示唆した事例である。この

世や自分自身の行動は全て事前に決まっている。しかも自分で決

めているという真実に到達させないために、自由意志という錯覚、

つまり人間の業が、もたらされているのかもしれない。

悟りを開くとは、心理学的決定論に気が付くことから始まるのか

もしれない。  P173

 

観察によって、世界の在り方が初めて固まる。並行宇宙のように

観察がなされるまで「世界は決まっていない」。世界は見る人が

いて初めて決まるのだ。こんな不確定で現実離れした話が、最新

の科学、量子論の世界観だ。 P176

 

 思索によって生じた結論は、行動科学や自然科学におけるエビデ

ンスに基づく必要は必ずしもない。ベルグソンの哲学は、現時点

での脳科学や生理学、心理学の行き詰まりに対して、逃げ道を用意

してくれる。

そして、その逃げ道こそが正解である可能性がある。世界は事前

に全て決まっており、映写機によって順序良く映されているだけ

だという考え方である。つまり、心理学的決定論が正しいという

考え方である。 P229

 

この本の結論を書く。意識とは情報であり、生命とはその情報を

増やすために配置された「なにがしか」(存在)である。の世

界の本質は情報なのだ。 P276

 

3.私の感想

 心理学的決定論は、絶望でなく希望だ、との見解に私も賛成。

もののすごくつらいことがあっても、「これが起こることが事前

に決まったいた」と思うことができるし、また

過去があったからこその明るく楽しい「決まった未来」を信じる

こともできる、ともいえる。

著者の瀬能武治さんは私は初体験だが、故人どころか現役だし、

いくつか書作があるようだ。今後当たってみたい、一人となった。