本年1月10日から 「読書感想文もどき」に至らなかった「敗戦記」
というのをアップしていますが、今回10回目です。
イラストもあえて、同じものを使用、趣旨も同じで、硬軟とり交ぜ、
読者への何らかの参考となればと・・・
1. 日本・日本語・日本人
出版者 新潮社 2001.9
大正生まれの、私に言わせると、最後の教養人世代に思えるのです
が、国語教育の問題から英語第二公用語論、さらには対米戦略まで、
日本語を愛してやまぬ3人が日本の将来像を深く真剣に語りあって
います。
物事を常に歴史的視点から考察できる懐の深さを感じます。
日本語を軸に論じ合う「日本語論」の決定版といったとこと。
20年前の座談会ですが、今も変わっていないな、と思終える一節を
引用します。
「コマーシャルも、ウーッとかビューとか、ものすごく刺激的な
ものを子供たちに見せておきながら、実生活では品のいい行動を
しろなんて無理。(中略)
食事もそっちのけで、テレビに見入っている。思考力は養われ
ないし会話もないような状態で言葉を覚えろなんて、そんな
バカなことはないよ。」 (P85 大野氏の発言)
2. 法の哲学
G.W.F.ヘーゲル/著
尼寺義弘/訳
出版者 晃洋書房 2009.5
注記 『法の哲学』第四回講義録1821/22年冬学期,
ベルリン キール手稿
正確に理解できたかは別として、一つ一つの日本語に訳され
た文言は解ります。
少し広げて、一文が意味するところも、何とか解ります
しかし、文章が重なって、論理を展開し、全体として言わん
とすることが、解らなくなってきました。
解らないのに、引用はしたくない。
頑張ってみたものの、「理解不能の敗戦記」でした。
3. 台湾危機 (正論1月号増刊)
出版者 産経新聞社 2020.1
「台湾モノ」は、私はいろいろ書いていますが、情報収集
のひとつです。
2019年12月発刊とありますから、記載情報としての最新は、
わずか2年弱かと思いますが、台湾情勢もまた、大きく動
いています。
例えば
2018年単独インタビューの李登輝さんは先日亡くなり
ました
に勝つ前の情報です。
書籍構成は以下の6部構成で、網羅的によくまとまってい
ます。
1.リーダーたちの言葉
2.台湾総統選の行方
3.台湾独立の歩み
4.台湾を狙う中国
5.守るべき日台の紐帯
6.台湾が抱える課題
誰しも、自分の見たいもの、聴きたいものしか、受け入れ
ない、との見解は、ある意味正解でしょう。
ただし、広く社会科学において、「中立」なり「偏向」と
いう判断を誰が(現在の人間が)できるか、というのは、
解決がつかないと思います。
4. 政治学の名著30
佐々木毅/著
出版者 筑摩書房 2007.4
人間が集団の中で生活することのあり方や、異なる集団同士
のもつれ合いと闘争。
それらへの深い洞察に満ちた30冊を紹介しています。
政治学へいざなう最良のブックガイドの登場なのですが、
「まえがき」に著者の真摯な感情が表れていて、面白いです。
「何よりも、古今東西の大家たりを相手にして一人で立ち
向かうというのは誠に心もとない話である。(中略) 結局
のところ、私自身の読書ノートの中から「見えるものしか見え
ない」ものとして本書は誕生することになった。 P009
記載の30冊は、全文、一部、解説本等々私の摂氏からはさま
ざまですが、私の理解度を確認するうえで、良い参考となり
ました。
佐々木毅さんは、 1942年秋田県生まれ。東京大学法学部卒。
部教授。日本における政治学・政治思想史研究の第一人者です。
5.ペスト
宮崎嶺雄/訳
出版者 新潮社 2004.1
あらすじも背景も大体、知っています。
不足している知識を補おうとすれば、少しPCで検索するだ
けで、過剰なほど出てくる昨今です。
もう半年以上続く「新型コロナとの共存」時代にあり、世界
中で読者の一つのヤマができたことでしょう。
あえて、私が取り上げて、したり顔に感想文もどきを書くの
もおかしそう、ということで「敗戦記」へ。
主人公で医者であるリウーの言葉から少し引用するだけに
します。
「とにかく、この世の秩序が死のおきてに支配されている
以上は、おそらく神にとって、人々が自分を信じてくれな
いほうがいいかもしれないんです。神が黙している天井の
世界に目を向けたりしないで。」
P179
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