本年1月10日から 「読書感想文もどき」に至らなかった「敗戦記」
というのをアップしていますが、今回13回目です。
イラストもあえて、同じものを使用、趣旨も同じで、硬軟とり交ぜ、
読者への何らかの参考となればと・・・
1.モンゴル帝国誕生
チンギス・カンの都を掘る
著者 白石典之/著 出版者 講談社 2017.6
「モンゴルもの」は、割とよく読みます。
本書は、長年の精緻な現地調査を踏まえたもの。
時代の流れで西側学者が、思考と腕力を振るえるのは、いいこと。
私が気に入っているのは、下記の文章。
モンゴルを含む北アジア地域では、11世紀後半に轡と鐙に大きな
変化があった。
チンギスはこれらの先進技術を活用して、馬具の軽量化を図り軽装
騎兵を生み出した。軽量化自体は他のモンゴルの軍団でも見られた
ことだが、チンギスの巧みさは軽量化と鉄器生産技術をリンクさせ
たことだった。そして鉄器の安定生産を支えるため交通インフラ
の整備に努めた。
「馬・鉄・道」の3者を戦略的に選択し、経営資源をその3点に集中
したのだ。
2.劇場
又吉直樹/著 出版者 新潮社 2019.9
実は「敗戦気その11」で、又吉さんの「火花」を取り上げてい
ます。
高く評価しており、ベストセラー小説など、手に取らない私が、
読んでみました。
ほんとに彼の評価が固まるのは、私が死んだ後かもしれませんが、
それは、解りません。」と、その際書いています。
当該「劇場」は「火花」より、前の作品。
正確には、「着手」が前で、「完成」は花火より後のようです。
現代の「貧乏」の状態が、よくわかります。
あらすじは以下の通り。
劇団を旗揚げした永田と大学生の沙希。公演が酷評され、まま
ならない日々を送る永田にとって、自分を信じてくれる沙希の
笑顔だけが救いだった-。理想と現実の狭間でもがきつつ、か
けがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。
3.未来の自分に出会える古書店
進路、受験、友情…。迷った時にこの一冊
斎藤さんは大学教授ですが、般向け読書論や自己啓発書を
たくさん書いています。
「声に出して読みたい日本語」は、よく読まれたと思います。
本書は、 中2と高2の兄弟が古書店「人生堂」の店主に導かれ、
読書を通じて成長していく姿を、小説スタイルで描いており、
斎藤さんとしては、初めての企画です。
8章立てで、各章ごとに3から4冊紹介しています。
今までの私と毛色違って、ココ・シャネルに言葉を一つ紹介し
ます。
「美しい生地はそれじたいで美しいが、ドレスに金をかけると、
かけただけ貧しくなる。装飾をはぎ取って簡素にすることをみじめな
ことだと勘違いしているのだ。(それにしても他人に剥ぎ取られるぐ
らいなら、自分で剥ぎ取ったほうがましね。)」 P193
4.イスラム国の反乱 ISISと新スンニ革命
原タイトル:The jihadis return
パトリック・コバーン/著
大沼安史/訳 出版者 緑風出版 2015.4
イスラム国の勃興。何が起きているのか? 何が起ころうとしている
のか?英国高級紙『インディペンデント』特派員として、1979年から
中東で現地取材を続ける著者による、イスラム国の最新緊急現地報告
です。
こういった、歴史を住まえた、確りした現地報告を読むことが、頭の
整理となります。しかし2015年4月刊行。イスラム国がまだ広大な領
地を支配しているころ、米国の登場人物はオバマとバイデンです。
時は流れ、2019時点では、ISISはほぼ壊滅状態、米国の登場人物は、
トランプとポンぺイオです。
2020年8月には、イスラエルとUAE,オマーンとの国交回復と、中東も
また、大きく動いています。
未来は誰にも分りませんが、一冊の書籍で整理した「考え方の軸」を
持つことは、大切です。
5. ペストの記憶
武田将明/訳
出版者 研究社 2017.9
ロビンソン・クルーソーを書いた、ダニエル・デフォーの作品とは、
実は知りませんでした。
ロンドンで約10万人の死者を出した、17世紀のペスト大流行の詳細
を、当時の公的文書や個人の記録などを基に再現した、伝染病の爆発
的流行や、都市型災害の勃発に関する貴重なドキュメントです。
ほかのところでも何度も書いていますが、「人間か考えること、行動
する原理は、今も昔も変わらない」ことを、再認識させられます。
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