中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

「バタフライ」(読書感想文もどき) 「難民」「オリンピック 」私は生き延びる、蝶になり羽ばたく

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Butterfly(バタフライ)

バタフライ
17歳のシリア難民少女がリオ五輪で泳ぐまで

 ユスラ・マルディニ/著
朝日新聞出版 2019.7

 著者は1998年生まれのシリア出身の競泳選手、ユスラ・マルディニ。

内戦の続く祖国を逃れ、ヨーロッパへ渡って難民となり、ドイツに受

け入れられます。

2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの難民選手団の一員として

競泳バタフライ100メートルに出場しました。

 1.概要と私見

本のストーリーとしては割とシンプル、時代背景も読み解くのに難渋

する訳ではありません。

私が、この手のドキュメンタリーを読んで、すぐいつも感じるのは

「彼我の差」です。

今の私は、自然災害や交通事故リスクはありますが

飢え死しそうとか、突然空爆を受けるとか、処刑されそうとか、

直接生命の危険を感じたり、無理やり国外放浪を余儀なくされる

とかは、なさそうです。 

もう一歩踏み込むと、

 現実には、書籍はおろか報道すらされない、よって誰も知り得

ないが、人間の尊厳に関わる体験をした人、現在進行形の人が世界

には、ヤマホドいるんでしょうね、と感じています。

 2.章立て

第1部 芽生え

第2部 春

第3部    爆弾

第4部 海

第5部    罠

第6部 夢

第7部 嵐

第8部 五輪

著者ユスラが辿った道のりが図解されていますが

ダマスカス(2015年8月12日)から、イスタンブールヒレウス、

ベオグラード、ブタペスト、ウイーン、ミュンヘンをへてベルリン

(2015 年9月7日)、となっています。

 3.改めて考えた、世の中の厳しさ

生命の危険と向かい合う現実の厳しさを感じます。
以下抜粋。
思い通りにならないことが起こるのが、この世だ。
人は死ぬときは死ぬ。
お前も覚悟しておきなさい (P70:著者の父の言葉)
 ・死は無差別に、いつ降ってくるともしれないものだった。
真昼間の車で混雑する道路に、何の前ぶれもなく空から爆弾が
落ちてくる。
倒れたら、ほこりを払って立ちあがり、また歩きだすだけ。
(P105:著者の言葉)
 ・「僕はラオスで育ったんだ。」ラムがいう。
「で、フランスへ逃げた。今では僕はフランス国民なんだ。」
(P255:者の知人の言葉)

 4. 難民

こちらも、一般論でなく、引用からです。

・密航業者はおいしい仕事だ。
 毎日のように何千人もの難民を小さなゴムボートに乗せて
 ギリシャへ送り出している。
 密航業者どうしのあいだで争いを起こさないようにすることが、
 誰もの利益にかなう。(P141)
 ・2015年8月だけで、8万人以上の難民が海を渡ってギリシャ
 島々に押し寄せた(P208)
  5.難民選手団として五輪出場の決意
・他人からの施しを受けなければならない境遇はつらい(P307)
・笑う方が泣くより楽だから、笑う。泣くときはひとり。
 笑うならみんなと一緒に笑える(P335)
シリア人でこうやって声を上げるチャンスをもらえる人は
 ほとんどいない(P376)(五輪出場のことです。)
・「難民」。人間性をほとんど剥ぎ取られた、抜け殻のような存在。
 金、家、祖国、文化、歴史、人格、夢、行く先、感情、
 (どれも失っている)
 ・今回のオリンピック出場は、自分の声を世界に届けることが目的
 であって、水泳の実力とは関係がない(P398)
 ・私は自分の物語よりもっと大きなものの中に組み込まれている。
 難民五輪選手団の一員として、私は全世界の6千万人の難民を代表
 しているのだ。とても大きな責任だ。(P413)
  最後も文言も泣かせますね
 何が起ころうとも、私は立ち上がる、泳ぎ続ける、生き延びる。
 私はさなぎから蝶(バタフライ)になつて、羽ばたくのだ。
(P437)
  6.私の疑問点

➀人間は生き残るためには、何でも飲み食いするのが現実だと思う。

 豚肉ダメとかハラール認証とか、イスラム教の食の戒律は少し

 知っていますが、難民のような生死をさまよう線上にあるとき、

 食の戒律を守れるのかな?

 例外でいいのか?

アルコール含め飲食なんでもありの私には、食の戒律イメージが

 湧かないのです。

  確か昔読んだレビー=ストローズの話に、

  タブーがあるため、ある種類の色の食べ物が摂取できず

  飢餓状態で死んでしまうケースが出ていたが、、、、

フェイスブックの話が出てきます。携帯電話の話もです。

 ・ 友人がイスタンブールのスイミングクラブに入って
   練習を始めたとフェイスブックで知った(P51)
  ・きのうの夜、フェイスブックの投稿を見たんだよ(P209)
アラブの春」はSNSあってこそ、成就したと聞いたことは
あります。
 経済面だけではなく、もろもろ厳しい環境の中で、どうやって
 た情報を取り、また発信しつづ続けることができたのだろうか。
③ 著者は1988年3月生まれで2020年の東京五輪には、23歳のはず。
 東京に来てほしいが、「難民選手団」でないとすれば、どこの国(地域?、機関?)の代表を狙うのだろうか?

 

  最後になりますが
訳者あとがきに同感の文言ありで引用します。
難民問題というと、とかく難民を受け入れる国々の側に立った報道が多いが難民側の事情も合わせて理解することによって、よりバランスの取れた見方ができるのではないだろうか。