とてつもない失敗の世界史
トム・フィリップス/著
禰冝田亜希/訳
河出書房新社 2019.6
1.導入及び本書の意義
原書名はHUMANS 人間です。
人間はどうしようもないへまな存在という認識で
それを失敗談の紹介として知的、論理的に、ユーモラスの書いて
います。
話は、木から落ちた死んだ人類の祖先ルーシーから
たった一度の判断ミスで国を滅ぼしてしまう皇帝まで、多岐にわた
ります。
人類というものが、失敗する存在であることをこれでもか、これ
でもかと詳細説明しますが
のですから、それはそれで、立派なものだと思います。
「あとがき」を、要約にすると
本書はすでに学術的に確立されている知識をフル活用し、私たちの脳と脳の」使い方に照らして過去の失敗を考えることで、現在の問題を見据え、失敗のない未来につなげるための気骨ある「初めて」の試みである。
2.概要紹介と抜粋への私のコメント
まず構成を書くと
第1章 人間の脳はあんぽんたんにできている
第2章 やみくもに環境を変化させたつけ
第3章 気やすく生物を移動させたしっぺ返し
第4章 統治に向いていなかった専制君主たち
第5章 誰が誰を、誰が何をどう選ぶかの民主主義
第6章 人類の戦争好きは下手の横好き
第7章 残酷な植民地政策もヘマばかり
第8章 外交の決断が国の存亡を決める
第10章 人類が失敗を予測できなかった歴史
次に失敗事例のいくつかの引用と、私の若干のコメントを入れます。
➀(統治に向いていない専制君主として)
16世紀の中国の正徳帝や、バイエルンのルードヴィヒ2世、
エジプトの ファールーク1世、オスマン帝国のムスタファ1世等
を取り上げていますが
さらに「何も任せたはならないあと5人の統治者」の一人として
ドイツのヴェルヘルム2世をあげています。
抜粋は
自らを外交が得意な交渉の達人と思い込んでいた。
実際は関わりを持つどの国をも侮辱する才能があった
だけだった。
このことは第一次世界大戦勃発の一端を担ったかもしれ
ない。
私の感想は、
お爺さんのヴェルヘルム1世とは器が違ったのでしょうね。
「かかわりを持つどの国をも侮辱」とありますが、結局ビスマルク
他国内での有能なサポーターを遠ざけたことも、戦争勃発に要因
となったのでは?
②(初めから、ばかにされていたヒトラーから)
歴史上、前代未聞の悪の出来後の多くを引き起こしたの
は、天才的な悪人ではない。
間抜けどもや頭のいかれた連中が引き起こしたのである。
まぬけな男が手前勝手な裁量で政権を支離滅裂に振り回
し、自分ならこのまぬけをてのひらで転がせるとあなど
った自信過剰な側近が、ここまで至る道のり助けたのだ。
良く解ります。周りは、あれあれ、と思っているうちに、
自分たちでハンドリングできなくなってくることを
知るのですね。
ありがたいことにアメリカは、これ以降、もう決して指導
者たちが集団思考により、明確な計画もなければ出口戦略
もない、ずさんなインテリジェンスに基づいて、詰めの甘
い侵略を押し進めることはないだろう。
あ、そうでもなかったかもしれない。
歴代政権運営も「そうでなかったかも」でしょう。
人は、往々にして、歴史から学ばない、学べないのと思います。
④(植民地支配について)・・・引用より少し要約
世界のあらゆる悪が全部植民地支配のせいとは言わない
植民地化された世界が、それまで自然と調和して生きてきた
平和と礼儀の理想郷ともいわない
どこまでも愚かでとんでもない過ちを犯す可能性はあまねく
世界の歴史にありがちだが、
人類は実際に起こった事実に基づいて過去を考えようとする
べき
⑤「ボタンのかけ違い」はよくありますが、
情報の解釈の度重なるミスが続き、交易の使節団を殺害する
ギスハンに敗れ、ホルムズ国は1222年に消滅します。
モンゴル軍は敏捷で適応力が高く、統制がとれていてインテリジェンス主導型だった。
との見解は、確かに他でもよく聞きます。
⑥将来予測も面白い
宇宙空間での物体の衝突は、物体が軌道上動いている速度の
せいで破滅的致命的な衝突が何千もの宇宙ゴミのかけらを
作り出し、これがさらなる衝突を引き起こす。
結果高速ゴミミサイルの雲に、地球上すっぽり覆いこまれる
状態である。
事実上、我々は(危なくって)が地球から出られなくなる
3まとめと又感想
訳者の見解として、本書の最大の魅力は
「できる限り正確に本書を競うとする生真面目さに、ときおり
皮肉とナンセンスと風変わりなユーモアをまじえる筆者の
書きっぷりである。」 と指摘しています。
確かにその通り。
加えて、私は著作にユーモアとともに、表現の温かみを感じました。
私の考えはいつもの通り。
我々人類は、基本あほであり、歴史からよく学んだ、とは決して
言えない。
同じ過ちを感度も繰り返すものだ。
しかし、「未知のこと」を相手に今まで、生命体として何とか滅
びずにやってきたのであり、今後AIが相手でもうまくやってい
けるのでは? との楽観論です。
仏教的な諦観、仕方がないという諦めを最後の逃げ道として、
必死にもがいていけば何とかなるだろう、
と思う、というか思いたいのです。
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