なぜ、地形と地理がわかると世界史が
こんなに面白くなるのか
全50項目に地図がついてよくわかる!
関真興/編著
出版者 洋泉社 2016.1
1.概要
「なぜ、その場所だったのか」 世界史において、地形と人類の動きは
切っても切れない関係にあります。
その関係性に着目し、基本的な世界史の流れから現在の国際問題ま
で、全50項目を地図付きでわかりやすく解説しています。
僭越な言い方ですが、八割方、内容を事前に理解していて編者関さん
の解説に頷くことの繰り返しでした。
本文から引用は、「初めて知った」というより、私の「お気に入り」
に近いフレーズです。
2.本文から
騎馬遊牧民にも泣き所はある。知れは馬を降りて戦わなければなら
なくなったときである。逆に言うなら、農耕民にとって騎馬遊牧民に
勝利できるチャンスは、彼らが馬から降りなければならない遮蔽物を
置くことであり、そのために中国から見てモンゴル高原のある北方に
構築されたのが、「壁=長城」だったのだ。 P44
「ほぼ同時代的に地球規模で各地の政治体制を揺るがすもの」とは
3~4四世紀の地球は小氷河期ともいわれる寒冷期であったことが証
明されている。この寒冷期こそが、大帝国を滅ぼす(混乱させる)重
大な引き金になったのである。 P52
人類の大移動は人口増と並び食料不足が原因であることが多いが、ヴ
ァイキングの場合もその例外ではなかった。スカンディナビア半島は
耕地が少なく、人口が増えてくると外海に拡大していく以外、生き延
びる手段はなかったのである。 P66
鄭和の第一回遠征 1405年 船62隻28000名に近い将兵
コロンブスの第一回航会 1492年 船3隻 乗組員120名 P78
(micmichコメント)
鄭和大艦隊と、コロンブスの大幅な差異は聞いていましたが数字を
見て再度ビックリしました。
彼ら(インカ帝国)の根拠地である高原地帯は、海から吹き上げる湿
った風のおかげで降水量が多く、段々畑でのジャガイモやトウモロコ
シ栽培に適していた。リャマやアルパカなどの家畜も飼育され、イン
カ帝国は豊かな経済力を有した。ただし、険しい地形のため車輪は発
明されず、運搬は家畜の頼っていた。 P92
(micmichコメント)
話を聞くとなるほどですが、普段南米史を考える場合はこういう観点
は私には抜けていました。
13世紀、インノケンティウス3世の時代に教皇領は最大になり、イタ
リア中部の広大な土地を領有するにいたる。「教皇が世俗君主の支配
をうけない」という状態は、イタリアの政治的統一において大きな障
害となった。 P118
東・・・フランス インドシナ半島、ヴェトナム
西・・・イギリス インド ビルマ(ミヤンマー)
東西を列強の植民地に挟まれながら、英仏の緩衝地帯となることで
独立を保つことに成功したのがシャム王国(現在のタイ)である。
P140
パレスチナをめぐる対立の背景には、この地にある エルサレムがこ
れら三つの宗教の精緻で得あることが原点にある。歴史的にみると、
ローマ帝国によってユダヤ人がその地を追われていたこと、7世紀に
イスラム教徒がこの地域の支配者になったことが問題を複雑にする。
P178
3.最後に
「歴史とは何か」について、先人もいろいろ語っています。
たとえば、E・H・カーは
「解釈と編纂、歴史家と歴史、現在と過去―その絶え間ない相互作
用、やり取りの過程こそが歴史学」とも言っているようです。
私はもっとシンプルに「書き手によってそれぞれ歴史が違って、自分
の気に入った解釈や思考範囲を広くしていく」方向で、歴史解説本を
いくつも読んでいます。多面的見方をモットーとしています。
多くの著者の中で、関誠興さんについては、地図・年表多様でかつ
説明文章も解り易く、(私にとって)「あくが強すぎる」解釈も少な
く、お気に入りの一人です。
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