中高年michiのサバイバル日記

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戦争と外交の世界史(読書感想もどき) 狭い自分の経験でなく歴史から学ぶこと 振り返ると理不尽なことの方が普通

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戦争と外交の世界史

戦争と外交の世界史 知略を養う

出口治明/著

 かんき出版 2018.9

 1.全体の構成

 また、出口治明さんの著書を取り上げます。

やや長いですが、全体の構成を転記します。

 

 第1章 平和条約の貴重な先例

(1) 世界最古の国際平和条約が結ばれたカデシュの戦い

(2) イタリア半島で奇跡的に平和な時代を作った同盟、ローディの和

(3) 戦争を回避して経済力で平和を実現させた同盟、せんえんの盟

 

第2章 30年戦争とヴェストファーレン条約

 ーードイツにおける宗教戦争の結末

(1) ルターの宗教改革からアウグスブルクの和議まで

(2) 30年戦争 出突っぱりの主役、ハプスブルク家

(3) 30年戦争の講和条約

(4) ヴェストファーレン条約 その余話としてルイ14世が犯した愚挙

 

第3章 あり得ないような同盟の話

(1) モンゴル軍とエジプト軍が手を結んだ

(2) フランスとオスマン朝が結んだ、ハプスブルク家をサンドイッチ

 にする同盟

(3) マリア・テレジアルイ15世が結んだ「外交革命」と呼ばれた

 意外な同盟

(4) 日本の支配者には理解できなかった外国で結ばれた2つの条約

 

第4章 The Civil War

    アメリカの将来を決めるために避けられなかった戦争

第5章 中国が初めて外国と結んだ条約、ネルチンスク条約

 第6章 ピヨートル1世の強運がロシアを北の大国に押し上げた

    ニスタット条約

 

第7章 世界史を変える分水嶺となった二つの戦争と条約

(1) 西洋が世界の覇権を東洋から奪取したアヘン戦争南京条約

(2) アンシャン・レジームネーションステート分水嶺となった

 ウィーン会議

 

第8章 第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約第二次世界大戦

   の大西洋憲章

(1) 第一次世界大戦はなぜ起きたのか

(2) ヨーロッパに新たな波紋を生じさせたビスマルクの戦略

(3) ボスニア・ヘルツェゴビナの併合問題とバルカン戦争が残した火種

(4) ドイツにとって第一次世界大戦の終わりとは何であったか

(5) 民族自決と国際平和機関の実現はヴェルサイユ条約によって実現

 したのか

(6) フランクリン・ルーズベルト第二次世界大戦後の世界の再建を

 真剣に考えていた

  2.出口さんの考え方

 個別の史実からの引用は、なるべく避け「はじめに」や「おわりに」から出口さんの考え方を、少しピックアップします。

 例のように( )内が私のコメントです。

 ➀「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とビスマルクは言いま

 した。

 自分の経験だけで考えずに、戦争と条約締結の裏側で展開された

人間模様を学ぶことが、人生の急場を救ってくれるかもしれない。(p4)

 (自分や、大切な人の命がかかっていますから、戦争は真剣その

  もの、その後の交渉含め、そこに人間模様は出ますよね.)

 

②(林則徐は、大英帝国と対立しアヘン戦争を機にウルムチ左遷
  となりましたが)
 「自分は時に利あらずして左遷されるが、このために集めた文献
  を漢文に翻訳しておけば西洋と戦うときに必ず役に立つと思う」
 (林則徐が命じて漢訳した本を、日本の佐久間象山吉田松陰
  め多くの志士が必死に学んだ。)
  「明治維新は林則徐のリベンジ」でもあった。  (P243)

  

 ③ 戦争と外交の歴史は、僕たちの人生の歴史と合わせ鏡のような

 関係にあるような気がします。

 財産や恋人をめぐる争い、横暴で強欲な隣人や上役との人間関係

 など それに対応する知恵もまた、 戦争と外交の歴史の中に隠さ

 れています(P362)

 (学者の象牙の塔ではなく、ビジネスの世界に広く長く席を置

  いてきた出口さんならではの見解を感じます。)

 

④「終わらせる」とはどういうことか。

戦争に関係したすべての人に、情報の共有化を徹底することが大切

だと考えるべきでしょう。(P364)

 

⑤(異動させられたとき、世界史の知識が役立ったという事例)

 実に多くの優秀な政治家や軍人が、理不尽な理由で左遷された

 り殺されたりした事実を知っていたからです。

 絶望しないためには、世界の知識を広く深く身につ付けている

 こと、理不尽な状況に置かれても自分を失わないタフネスは、

 豊富な知的財産から生れると思います。(P365)

  (私も、過ぎ去った過去を言うのでなく、常に学び吸収し、

  自分を失わないタフネスを身に着けていきたい。)

 

⑥(引用でなく、要約します)

 ・ヴェルサイユ条約に至る、マズイ戦後処理が、ヒトラーを生み

  出す最大の原因

 ・せんえんの盟は、「力強大なスキタイ」と「圧倒的文明大国

  の宗」の約束だがODA型の同盟として今日でも評価が高い。

  300年の平和を実現したのだから。

 ・ヴェルサイユ体制の反省に立ち、第二次世界大戦後、今日の

  世界体制を支える国際連合IMF世界銀行を設立した人物と

  して、フランクリン・ルーズベルトは、高い評価(P366)

 

 ⑦ 政治家を信頼するか否かの基準をどこに置くかとすれば、

  その人物かこれまでやってきたことの成果以外にはありま

  せん。(P369)

  ( トランプ大統領北朝鮮金正恩国家元首の交渉を指します。)

  3.まとめ

 人間は同じ失敗を何度も繰り返します。

歴史から学んだ、とはあまり言えないでしょう。 

 自分が周りから、正当に評価されないとか「報われない」という

のは歴史から見れは「普通のこと」に近く、生きているうちに、

周りからちゃんと評価される方が少数派では?

現代は、争いに敗れて「クビ」といっても、物理的に胴体と頭が切

り離されることは少なく、復活のチャンスあり、という意味では

幸せな時代かもしれない、と思います。

そう思って、どんな逆境(と主観的に思っても)自分の持つ

「あるべき論」を忘れずに「前向きに」生きるべしと強く感じた

のでした。