人口減少時代の論点90
井上正良/著
長瀬光市/著
増田勝/著
公人の友社 2019.5
1.概 要
今回は、非常に実務的な本です。
超高齢化社会はどんな社会か? 「東京一極集中」で何が起こるのか?
保育所待機児童が増えているのはなぜか? といった問題を、90の
論点に分け、見開き2ページで説明しています。
当初、人口減少にスポットを当てた論集かと思いましたが、広範
囲から、論点を拾っています。
私の意見と完全に一致したわけではありませんが、頭の整理に
役立った本でした。
全体の論点を列挙し、その後私が注目したいと思った論点をい
くつかピックアップしていきます。
1 人口変動 2 人口移動 3 子供
4 結婚 5 高齢者 6 貧困
7 孤立化 8 介護 9 教育
10 共同体 11 社会インフラ 12 財政破綻
13 空き家問題 14 マンション問題 15 土地問題
16 限界集落 17 制度・財政 18 人手不足
19 ビジネス 20 ボランティア 21 メディア
22 文化
2.論点ピックアップ
➀「平均寿命」は世界トップクラス、何が問題か?(論点7)
著者によるポイント指摘は
A 「健康寿命」とは「平均寿命」から介護期間を差し引いた「差」
B 「差」が小さいと幸せな老後といえる
C 国民医療費の抑制は重要な課題
これはよく理解できます。
本文中で、医療費抑制の処方箋として
予防医療の進展により、病気の予防・進行を抑え、個人の生活の質の低下を防ぐことで、医療費の抑制につなげることが必要。
予防医療による現行増進と医療費の増加というパラドクスの同時解消が求められる
と指摘しています。
まさにその通りと思うし、予防医療の進展をどう具体的に進
めていくかの問題でしょう。
②奨学金の返済困難問題の背景は?(論点25)
著者によるポイント指摘は
A 大学などの学費が異常に高騰
B 卒業後、奨学金を返済できる環境が雇用の不安定・
低賃金労働の拡大などで大きく崩壊
こんどは、よく理解できる部分と、そうかな、と思う部分あり。
本文中では、また
しを求める要請がでている。
国は2017年に、低所得者層の家庭で、意欲と能力のある
若者を対象に、返済不要の「給付型奨学金制度」を新設
しています。
私見では、高等教育は、高い意識を持ち、自ら強く教育を求
める人が、求めるときに、重点的に与えられるべきが基本。
「経済的理由で学びの機会の制限」がよくないのは、正論だが
教育はそもそもお金がかかるものであり、学ぶことに高い意識
を持った人のために重点的に、使うべきで、意欲のない人
含めて、あまねくいきわたらせる福利厚生的意味合いとは
違うと思う。
広く薄くと考えると、本当に必要な人に使う、割合が減る
のでは?
日本に給付型奨学金が金が少なくて済んだのは、
かつ資金不足の可能性ありという、海外の高い高等教育費
に比べ、相対的に学費が安くて、かつ親の資金援助も期待でき
る傾向という日本の社会システムの点も否めないと思う。
③ 都市型限界集落の何が問題か?(論点58)
限界集落の話はよく聞き、私もそれなりに認識していますが、
これが「都市型」となると、私にいまいち見えていません。
著者によるポイント指摘は
A 限界コミュニティは、65才以上の高齢者人口が40%
を越えた地域を指す
B コミュニティの崩壊が進み、孤独死等が頻繁に起こる
ようになる
C 高齢者同士の支え合い(福祉活動の低下)。
有事の際に自力で避難することが困難になる
本文中で、
大都市圏(東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・仙台)は
2010年までは、 郊外部ほど高齢化率の上昇率が大き
かったが、、これから2050年にかけては、一転して、
都市部ほど高齢化の進展が顕著になると予測
と指摘していますが、対応は難しいですよね。
具体論は提示できなくて、指摘にとどまっています。
私にも、今名案があるわけでは、ありません。
④ メディアの進化の影響は?(論点86)
A 情報の伝達方法が変わることが、人間の感性や、
ライフスタイル、社会のしくみなども変えていく
B インターネットがテレビに代わる主要メディアにな
りつつある。
C 情報の信頼度は、インターネットに対し、新聞、テレ
ビは上回っている
言っていることは、当たり前、正論でしょう。
あまりにも大きな論点であり、筆者のポイント指摘も一つの
見解として考慮します、に留めます。
メディアの進化(ほんとに進化といえるのか?)の定義含め
て、今後さまざまな観点から膨大な議論があることでしょう。
3.まとめ
人は本来怠け者だと思います。私自身は、まさにそうです。
自分の知っている狭い世界に安住するのは楽です。
視野を広げて、いろんな問題に関心を持つ、自分と違う意見には、
批判しつつも、相手の主張を、虚心坦懐正確に読み取ろうとする
姿勢は、とても大切だと思います。
|