世界宗教の条件とは何か
佐藤優/著
出版者 潮出版社 2019.10
1. 概要
プロテスタント教徒である佐藤優氏が、キリスト教、イスラム教という世界宗教
がたどってきた題点を明らかにし、激動の時代を生き抜く英知を語っています。
2017年に創価大学で行われた課外連続講座を書籍化したものです。
佐藤氏は、世界宗教の条件として、「宗門との決別」「世界伝道」
「与党化」の3つを挙げています。
しくない、と説きます。
目次による全体の構成と、ピックアップへのコメント、中心としま
すが、氏の著作はどれも解りやすい解説と、深い教養を踏まえ示唆
に富んだ見解がちりばめられており、政治・経済・歴史・宗教と
見解を異にすることが多い私も、いつも強い啓発を受けています。
第1章 世界史から考える「世界宗教化」
第2章 他宗教の「内在的理論」を知る
第3章 創価学会「会憲」の持つ意味
第4章 世界宗教は社会とどう向き合うべきか
第5章 世界宗教にとっての「普遍化」とは
第6章 エキュメニズムーー宗教間対話の思想
2.ピックアップ
である。(P13)
一神教が文明の基礎となっている国々では、時間は
ただしその規範から外れてしまった場合には、 厳しい罰が用意さ
天皇制との関係から(P73)
円環を描くものではなく、「始まりと終わりがあって、 終わりに
向かって一直線に進んでいくもの (P25)
(私の個人的感覚は、時間は輪廻転生、ぐるぐる回っていく時間
です)
クロノスは普通の時間、その前と後では世界の在り方や歴史の
流れが、変ってしまうような時 間が「カイロス」(P27)
が類似している、そうです。(P33)
(3つの条件「宗門との決別」「世界伝道」「与党化」の筆頭
ですね。)
(キリスト教が)
当時世界最強の帝国だったローマ帝国で公認されたことが、 その後
の世界宗教化を大きく後押ししていく (P36)
真の宗教は
信者の人生そのものと丸ごと結びつくものであり、 そうである以上、
人生から政治だけを切り離すことは不可能だ (P36)
世界宗教化の「三大条件」とは、宗門との決別、世界伝道、与党化 (P37)
世界宗教は、時間的にも距離的にも非常に壮大なスケールになる。
「直弟子こそが偉い」(となると、ごく一握りの特権階級を教団内に
作ってしまい世界宗教化の流れに逆行する)。
(p55)
イスラム教の戒律には、抜け道がたくさんあるので、 比較的簡単に
戒律が守れる。
れている(P62)
3つの一神教は、 兄弟関係にありがちながらも考え方の基本が大き
くことなる。「一神教だから非寛容だ」というのは短絡的(P64)
易姓革命ではない、という解釈 (P80)
中国人が虹を不吉と感じるのは、易姓革命理論により、虹は天が
怒っている「凶兆」
「吉兆。」
(これも知りませんでした。)(p75)
日本の歴史や他の宗教に無知なら、相手を折伏しても説得力がない。(P82)
(今回私が、再認識したことの一つ。相手と同じ土俵にいないと、
説得できるわけがない。
ある程度の海外の知的エリートと情報交換する際に、こちらの
日本の歴史の知識が欠落していたら話にならない)。
「基本文法」をまとめたもの。(P94)
(こちらも知りませんでした。)
アジア限定の宗教と化している既存仏向各派は、 世界宗教と呼ぶ
にはあまりにに広がりが乏しい。(P108)
(米軍がビンラディンを殺害し、水葬したことに関して)
ビンラディンらが属するハンバリー法学派は、協議解釈上、墓と
いうものに一切価値を認めないし、 聖人も認めない。
彼らがビンラディンの墓を作って、そこを聖地にすることは、
そもそもあり得ない。
これは、宗教の専門家からすると、基本的な知識 (P125)
(基礎知識なんでしょうが、恥ずかしながら、私はいままで、
認識できていませんでした。)
人間は、放っておけば悪をなすので、 チェック機能を組み込んで
おく必要がある。三権分立もその発想(P126)
教会権力との長い戦いの末に勝ち取ったもの だ、とする歴史的
要因がある。(P136)
見習うべき点は見習い、失敗や間違いについては「 同じ轍を踏まな
い」ことが肝要
(P139)
マルクス主義における4つの疎外
労働生産物から、労働から、類的存在から、人間から(の疎外)
つまり、「資本主義社会における労働の在り方は、人間らしくない
労働」(P162)
他の宗教も深く理解できる。(P175)
3.まとめ
相手と対話したり、情報交換するには
まず、自分のことのみならず、相手のこと、議論する事項をある程度
知っておくことが必要。
ましてや、議論するだけでなく、説得し、こちらの見解に導こうと
するなら、議論する事項を熟知していることが必要。
卑近な例では、日本の歴史をよく知らないでは、相手が日本そのもの
に関心を持つとき、うまく説明できない。
断片的な知識を詰め込めばいい、のとは違うし、一方グーグルで
検索できるから、何も知識がなくてい、というのとも違う。
多読を通じて、いろんな分野の有機的な知的体系を作らねば、質の
高い情報を玩味咀嚼していかねばと、いつも思う次第です。
日暮れて道遠し、をいつも感じます。
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