農業新時代
ネクストファーマーズの挑戦
著者 川内イオ
出版者 文藝春秋 2019.10
1.概 要
3K、高齢化など衰退産業の代名詞のようにみなされてきた日本の
農業ですが、就業人口はこの20年で半減、耕作放棄地も40万ヘク
タールを超えているそうです。
そういった中、元エリート会計士が作るピーナッツバター、東大
卒の畑に入らないマネージャー…。
独自のアイデアと先端技術で、稀少かつ高品質の商品、サービス
を生み出す農業の変革者たち。
本書は新しいリーダーたちが10人登場しますが、年齢、性別、環境
は、もちろんのことそれぞれ考え方や、方法論、方向性が当然
違います。
本書は彼らを通じて、新ビジネスとしての農業を紹介します。
読後感として「元気が出る」ものでした。
2.目 次
第1章 イノベーターたちの登場
・「世界一」の落花生で作る究極のピーナッツバター
・4年で500以上のカイゼン 東大卒「畑に入らないマネージャー」
・世界のスターシェフを魅了するハーブ農園
第2章 生産・流通のシフトチェンジ
・世界が注目する京都のレタス工場
・農業界に新しいインフラを!元金融マンが始める物流革命
・化粧品、卵、アロマ・・・休耕田から広がるエコシステム
第3章 常識を超えるスーパー技術
・ITのパイオニアが挑む「植物科学×テクノロジー」
・スーパー堆肥が農業を変える
・毎年完売!100グラム1万円の茶葉
・ 岡山の鬼才が生んだ奇跡の国産バナナ
3.ピックアップ
今回は、書籍からの抜粋とページ数の記載の後、
かっこ書きで私のコメント入れる体裁とします。太字や赤字は
当然私がつけたものです。
① 世界でも、自分で豆を作って焙煎して、挽きたてのものを
瓶につめて売っている人って多分いないでしょう。?
それがいいなって思ったし、それをサポートしてくれる世界一
だから失敗するはずがない!と思っていましたね。(P27)
(本人は、起業にあたり、当然もっと緻密な分析もあり、不安
も多々あったでしょう。
強がりに聞こえますが、こういって自分を鼓舞することは必要)
② 「阿部
梨園の佐川」が「佐川友彦」
になって1年もたたず
にこれだけの企業と提携できたのは、佐川のポジショニング
が希少だからだ。 (P55)
(どの分野も、勝つためのポジショニングが必須)
③ 考え方やきっかけ次第で、まだまだ伸びしろがある。
日本の農業はポテンシャルの宝庫ですよ。 (P58)
(元気が出る発言ですよね。)
④ ほかと同じことをするな。自分であれ (P74)
(差別化の話です。)
⑤ 海外に市場はある。コネクションもある。
なによりヒントも持っている (P80)
⑥ 2017 年 国連砂漠化対処条約は、(中略)
地球上の植生の約20%に相当する地域において土地生産性が下落
し約13億人が劣化した農地からの生産物で生計を立てていると
推定した。(P95)
⑦ どれだけ稼いでも自分は代替可能という現実。
ほとんどの上司の目標は、アーリーリタイア。
自分にとって一生続けたい仕事は何かを問い続けた時、道は決
まった。 (P102)
(組織人なら、誰しも感じる苦悩、それにどう対応するか、してき
たかが、各人の選択。そしてそれは結果を伴う。)
⑧起業から10年たって、ようやく市場が追い付いてきましたね。
(P129)
(生意気な発言に聞こえるが、評論家でなく渦中にいて、もがいて
いる人間の発言だから、説得性あり。)
・環境と生体のセンシング
・栽培状況のモニタリング
・データの管理分析と制御 (P142から143)
⑩農産物を輸出するだけじゃなくて、
テクノロジーも含めて
日本の農業全体を知的産業化して輸出できるようになると
思います。(P149)
(日本の域のころに輸出は必須、その選択の範囲が広がって
ほしい。)
⑪自然と社会が調和して、人も家畜も健康になる
これが社会的農業だと思っています。(P160)
⑫世界中の研究者が成し遂げられなかった凍結解凍覚醒法を、
一人で趣味で確立したということだ。 (P202)
(結果オーライ講釈でなく、まずは姿勢と継続性の問題。)
4.まとめ
同署感想文ですが、最近読んでいるいわいる哲学関係とは違い、
「私の現在の頭で理解に苦しむ」ということが、幾分少なかった
ようです。
感想は冒頭で述べた「元気が出る」ことですが、
読んでいて面白かったのは、登場する各人が「地に足をつけている」
ということでした。