中高年michiのサバイバル日記

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本当の武士道とは何か(読書感想文もどき)現場感覚 目指したのは「真の強さ」高い倫理観と理想

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「武士道とは」のイメージ

本当の武士道とは何か

日本人の理想と倫理

著者       菅野覚明/著  

出版者    PHP研究所 2019.12

1.概要

読書の目的、楽しみはの一つは「知らなかったことを知る」「今ま

での自分の常識が揺り動かされる」ことかもしれません。

「武士道」については、今まで幾多接した言葉であり、また実際私も

使ったことがありますが、

本書は、コンパクトながら、「なるほど」と思ったり、すこし私の

従前の考えの修正を余儀なくされた点もありました。

本書の概要は、

  武士たちには、功利や損得哲学よりも、はるかに大切にしていた

精神や価値観あり。

現場の感覚をふまえた武士道は、どういうものであるのか。

武士たちが最終的に守ろうとした道徳とはどのようなものか。

そして、それらは現代を生きる日本人にいかなる「力」を与えて

くれる

のか武士が語った原典を確認しながら、その「死の覚悟」の基底に

あるものに迫る、というものです。

 2.目次

第1章 「本当の武士道」とは何か―脇差心と死に狂い

第2章 「道」の思想と日本人の哲学―同一性と精神性

第3章 「最強の武士」になるための奥義―やさしさと強さは一

つである

第4章 『朝倉宗滴話記』の思想―「手の外なる大将」の嘘と真実

第5章 武士道の敵は司馬遼太郎―「功利」「損得哲学」の行き

    着く先

 第6章 日本人が本当に望み、理想とした生き方―皇室とサザエさん

 3.ピックアップ

➀武士とは、武士道とは? 

現代人が書いた書いた武士道に関する書物の多くは、実勢に武士が

語った原典をほとんど読まずに書かれている P3

 

私が本書で論じたい武士道とは、

実際に現場で刀を振るって血まみれになり、武士として生き抜いて

きた人々が形づくった「現場の感覚から出た思想」であり、本当

の武士道です。   P7  

 

新渡戸稲造が書いた「武士道」も、実は本当の武士道とは言え

ません。

新渡戸稲造自身も本当の武士道だとは思っていない。

武士道の名を借りて、日本人が大切にしてきた道徳の話をして

いるのです。  P21

 

武士とは「戦う生活者」であり、「強くなり、戦いに勝つ」ために

様々な鍛錬を重ねていたことを紹介しました。

(中略)武士たちは、徹底的に強くなることを求め続けたからこそ、

透徹した生き方や道徳に行きつくことができた   P51-52

 

②「日本に哲学がない」は本当か?

(「日本には哲学や倫理がない」という議論や、中江兆民の日本

の哲学の不毛さを喝破する議論を受けた主張に対して)

このような考え方は、あくまで一面的であり、大いに誤りだと、

私は考えます。

日本では「道」という言葉こそが、真理の探究を旨とする哲学の

代名詞でした。

一人ひとりが全部違うけれども、それでも皆、「自分の生きていく

拠り所」としての「道」を「わが道」として覚悟し、その道を様々

な歩き方で進むことで、生きてゆく。

これが「道」の一番基本のイメージです。  P54

 

③文武両道 

文武両道の武士とは、昔の古い言葉では、「哀れを知る武士」あ

るいは「情けのある武士」と称されます。

葉隠』がここで用いている「やさしき武士」というのも、まさに

文武両道の心得を示しています。

「文」とは、単に知恵があるとか、ものを知っているということ

ではありません。

覚悟のみごとさ、感情の豊かさ、心の深さ、そういう意味合いで、

使われてきた言葉です。  P93

 

④『朝倉宗滴話記』

・武士道の思想は、戦いが終わってしばらくした後に現れる

・あまりに生々しい経験は、それを一般化するのに長い時間と

 反省を必要とする

・当事者の経験を適切な言葉で一般化して伝えてくれるもの

 の話を聞きたい

・現場の肉声が持つ説得力には、及び難いものがある  P113-114

(として、『朝倉宗滴話記』の紹介と解説)

 

⑤ 武士道の敵 

武士道の敵とは何か。

「精神的な価値よりも、物質的な価値を上位に置こうとする

思想傾向一般」  P143

 

名を捨て、義を捨、理と力を追求する、それが司馬遼太郎

共感をもって描き出す人物像です。  P148

 

明治から今日に至る武士道主義者たちが、目の敵にして否定

しようとしたものこそは、まさに司馬遼太郎的価値観その

もの。   P149

 

武士道以前の現場が、なぜ功利主義ではなく、武士道に行

き着いたのか。

功利の行きつくその果てに、優れた武士たちが一様に見出し
たのは、意外にも「滅亡」でした
 勝利であれ、金銭的利益であれ、利の追求ということには、
そもそもこれで打ち止めという終点がありません。 P157-158
 
⑥日本人の理想
(日本人の生活に最後に遺さねばならない核心について)
柳田の答えは「家」でした。
家とは何か。
それは先祖に対する信仰だと柳田は言います。 P183
 
日本でも「意志と力(砂漠型)」、「知と合理性(ヨーロッパ型)」
は大切ですが一番大事なのは「豊かで深い情」なのです。
日本人の生活の目標は、「情」を満足させることにあったのでは?
   P201
 
「家族の団欒」像や「共に居ること」「心をかよわせること」を
大切にする倫理 観は実は日本人の祖先崇拝という宗教のあり方
とも密接に関係するものです。  P206

 

締め (著者の本文の結び)

武士たちがめざした「真の強さ」、言葉を変えていうなら、日本人

がめざしていた「人間としての強さ」の基底には、まさに家族や

仲間を愛し、心を通わせあうことを尊ぶ倫理観と理想があった

のです。  P209

 

4.まとめと私見

コンパクトながら、読み応えありました。

冒頭にも書いたように、なんとなく使っていた「武士道」が、輪郭

が見えてきました。

新渡戸稲造司馬遼太郎へのコメントも新鮮でした。

私の力で「原典」に当たり、充分理解することは、まずできま

せん。 

私の場合、こういった書籍を、広範囲な分野で継続して、読んで

いくことになります。