中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

晩節の研究(読書感想文もどき) 偉人・賢人の末路を見ると、違った視点からの勉強になります。

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   誰しもやってくる人生の黄昏をイメージしたかったのです。
晩節の研究 

偉人・賢人の「その後」

河合敦/著  

出版者    幻冬舎 2019.4

 1.概要

「祟り」に慄き死んでいった藤原道長

勘違いで殺人を犯して獄死した平賀源内。

有能な成功者である彼らはなぜ“晩節を汚す”ことになったのか?

30人の偉人たちの知られざる末路を繙き「人生の本質」を追求しています。

著者の好みや専門性もあるでしょうが、時代は、古代3、中世6、近世

14、近代7と分かれています。

私は政治的な敗者や、古典として残る著者で不遇の最後を遂げた人を

何度か、取り上げてきましたが、今回は日本史限定ですが、晩節の研

究です。

いつものように、全体論でなく、私の「お気に入り」のピックアップ

となります。

 

2.ピックアップ

朝廷の権力を握り、摂関政治の全盛期を築き、この世の春を謳歌した

藤原道長であったが、まるで望月の歌がきっかけになったように、

以後の人生は暗転し、とくに晩年の数年間は病と怨霊に苦しめられた

うえ、娘や息子に先立たれるという、不応な生活をお送ったのであ

る。 P42

石田三成が用心して干し柿を食べなかったのを受けて) 

これを聞いた警護の者は、「これから首を刎ねられるという人が、毒

を断つのはおかしいだろう」と笑った。

すると三成は「お前のような雑魚には道理かもしれないが、大義を思

うものは、首を刎ねられるその瞬間まで、命というものを大切にし、

本懐を遂げようとするものなのだ」そう反論したのである。   P119

 

 (戦後価値観が一変しても忠臣蔵が継続して庶民に人気の理由)

恐らく、人間を感動させるありとあらゆる要素が詰まっているからで

はないか。

いじめ、悲劇、無念、望み、裏切り、友情、絶望、団結、執念、復

讐、戦闘、恋愛ーーーこれらはみな、時空を超えて人間の心を揺り動

かす。

こうした要素が巧妙に配置され、見事な芸術品として完成しているの

が、忠臣蔵という物語なのである。 P157

 

 年老いたら、たとえどんな境遇にあっても、毎日を楽しんで過ご

しなさい。

貝原益軒は良いことを言う。

こうして努めて楽天的な晩年を送ったことで益軒の寿命は延びて高

齢でも元気な日常を過ごすことができたのであろう。  P188

 

北斎はひたすら大好きな絵だけを描き続けて生きていくことができ

た。

ただ、九十歳になった年、にわかに病にかかり、薬も効かない容態と

なった。 (中略)

「天があと十年、いや五年、命を長らえさせてくれたら、私は真正の

画工になれたのに」と告げ、そのまま亡くなったという。

その向上心には、まさに敬服のほかはない。 P231

 

陸奥宗光のことですが)

正解の一大勢力を有する身となって、いよいよ日本の政治を統べる位

置に立った。

が、総理の椅子を前にしながら、剃刀と呼ばれた天才政治家は、病魔

によって展開に連れ去られた。

運命は苛酷だ。  P266

 

兆民は、己の寿命が尽きるのを冷静に受け入れ、「為す可き事」だけ

でなく「楽む可き事」ことをその間に十分しようと述べているのであ

る。

信じられないくらいの明るさだ。

すでにこの時、人生を達観していたのだろう。     P271

 

 3.最後に

有名・無名、歴史に爪痕残した少数・そうではない多数、長寿・そう

ではない人、だれしも皆晩節があるはずです。

ごくごくアタリ前のことに気づくのです。

勢い何らかの資料があって、後世に読めるのは、上記の前者(有名、

歴史に爪痕、長寿)の場合が多い

のですが、晩節の様相は様々。

 無理やりパターン化しても仕方がないと思います。

題材となった人々の晩節も多様であり、読み手の感情(多分に現在の

自分の精神状態に影響受けるのでしょうが)も、多様化しています。

読み手としては、たくさんの事例に触れて、勝手に考えて、それでい

いと思います。


 

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