世界の今を読み解く「政治思想マトリックス」
ニュースの「疑問」が、ひと目でわかる座標軸
茂木誠/著
出版者 PHP研究所 2020.12
1.概要
(1)もはや世界は「右派」vs「左派」では読み解けない経済的自由
をx軸、政治的自由をy軸として、政治思想を二次元座標で表現した
マトリックスを応用して、様々な時代、様々な国の政治思想のせめぎ
合いを示す、というのが一般の書評です。
(2) 私に言わせると、茂木誠流「現代史解説」であり、頭の整理に
とても役立ちました。
当たり前のことですが「歴史を知る」ことが、「現在」を知る手がか
りであり、茂木さんは、①深く知っていることと、②自分の見解を解
り易く示すことができること、③立ち位置が「真ん中よりちょっと
右」(P4 はじめに)であり、私の好みです。
2.本文から
プロテスタントが活動した地域では産業革命が起こり、カトリックが
活動した地域では経済発展の面で後れを取った。---文化的背景
が、国の経済に影響を与えている好例です。 P26
ルソーの思想に心酔したフランス革命の指導者たち、特にジャコバン
派は「土地私有を基盤とする階級制度を打破し、地主や資本家を倒し
て人民主権を実現せよ」と叫び、これを実行したのです。
抵抗する者はころ逮捕され、次から次へとギロチンに送られました。
これが「恐怖政治」です。 P33
ソ連の体制が70年間も続いたのはなぜか?
全国民が共産党の監視下に置かれ、言論の自由も移動の自由もなく、
文句を言う者、怠ける者は「反革命罪」で銃殺されたからです。
職場にもレストランにも秘密警察が常駐し、密告が奨励され、ソ連
全体が巨大な牢獄と化しました。
(中略)
「平等だが、自由ゼロ」---これが20世紀における最も「左」の思
想です。 P42
個人の自由を最大限に尊重する古典的リベラルとは真逆です。
そのため古典的リベラルを志向するアメリカ人は、「リベラル」
という言葉を嫌い、新しい用語を使い始めます。
それが「リバタリアニズム」です。この思想を支持する人々を
「リバタリアン」と呼びます。 P50
(アメリカでは)リベラルと保守の意味が逆転したまま現在に至り、
日本でも直輸入されて使われています。 P52
第二次世界大戦の真の勝者は、ソ連のスターリンだったのです。P63
極端なグローバリズムが極端なナショナリズムを引き起こし、第二次
世界大戦という最悪の結果を招いてしまったのです 。 P67
グローバリズムとナショナリズムのシーソーゲームが繰り広げられて
きた結果、2010年代からは、世界中がナショナリズムに向かっていま
す。今後、数十年はこの流れが続くでしょう。 P69
「人権よりも金儲け」ーーーこれがグローバリストの本質です。
その本質を見抜いていた鄧小平は、勝利したのです。 P80
全世界のカトリック司教の任命権は、バチカンのローマ教皇が握って
います。しかし、中国共産党はそれを認めていません。
その代わり、無神論の共産党政権がカトリックの司教を任命するとい
う、奇妙な現象が起こっています。 P89
保守派とは、それぞれの国の体制の原点を守ろうとする人々のこと
アメリカの保守派
日本の保守派
皇室を中心とする伝統文化を守ろうとする人々
ソ連や中国の保守派
共産主義の原理原則である一党独裁と統制経済を守ろうとする人々
P115
(ドイツにとって、統一通貨のメリットのひとつ)
ユーロに加わることで、自国通貨の値上がりによる不況を避けること
ができるだけでなく、輸出でボロ儲けできること。 P139
(2015年ころの話)
賃金の高いドイツでは、安価な労働力を提供してくれるのが移民な
のです。 P147
常にヨーロッパの国々をいがみ合わせ、ヨーロッパの分断を図ること
がイギリスの戦略だったのです。 P152
中国封じ込めを目的とした日・米・豪・印の軍事協力体制にイギリス
が加われば、これは21世紀の日英同盟である、太平洋版NATOが誕生
する可能性もあります。 (中略) 世界は、EU(ドイツ)・中国のユー
ラシア枢軸陣営と、米・日・英・インドなどの海洋国家陣営とに分か
れつつある。私にはそう思えます。 P176
アメリカがイランを警戒する理由
①イラン革命が中東諸国に波及して反米政権が次々に誕生すると、
アメリカ資本が中東から追い出されてしまう。
アメリカのユダヤ人は、イスラエルとの二重国籍を持つものも多く
「心の祖国」であるイスラエルの安全を第一と考える。P 217-218
(茂木氏の見解)
国家としてのイランはみとめる。イラン国軍もイラン革命防衛隊も、
共にイランの国防を担う軍隊として認める。ただし、革命の輸出を狙
うコッズ部隊は国際テロリストであり、一切認められない。 P224
日本はこれから、コッズ部隊をイラン政府から切り離すよう現実主義
者のロウハニ大統領を説得し、革命の輸出を止めさせることが重要だ
と思います。 P225
3.最後に
茂木さんは文字情報より音声情報の方が多い、私には珍しいケース。
Youtubeの彼のチャンネルを、最近よく聞きます。
「世界史の講義」だけでなく、時事ニュース分析がとても面白い。
例えば、米国大統領選挙見解や、最近の「ミャンマー事件」読み込み
も気に入っています。
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