中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

台湾の表層と深層(読書感想文もどき) 素直に統治国の努力と実力を評価するおおらかさ

台湾の表層と深層

長州人の熱情と台湾人のホンネ

福屋利信/著  

出版者    かざひの文庫 2017.2

太陽出版(発売)

(ここで勝手に挿入)

李登輝さんが亡くなりました。

彼への思いは私もそれなりに高く、後日書きたいと思います。

当ブログ後日アップ予定でしたが、追悼をこめて、

私にしては早めの本日アップとします。

1.概要

(1)台湾の歴史を概説し、台湾が親日な理由を長州出身の第四代

台湾総督児玉源太郎を基点に考察するとともに、歴史からポップカル

チャーまで、複眼で見たリアル台湾を紹介しています。

山口大学教授で台湾開南大学客員教授も務める著者が、その歴史的

経緯をひも解き解説していますが、福屋利信さんは、1951年山口

生まれとあります。

生まれも、仕事場も、成程、長州ですね。

私は、台湾の歴史、政治経済文化については、ある程度知っている

と、言っていますが、実は台湾の映画もポップスもさっぱり知らない。

これをベースにした分析は、当然私には新視点です。

勉強になりました。

目次も新鮮で

 プロローグ

 第1章 台湾スケッチ

 第2章 台湾歴史概説

   ここに、日本統治時代と中華民国統治時代の、たくさんの映画

   が事例として挙げられています。

 第3章 長州人が台湾近代化の過程で形成した親日感情

 第4章 21世紀の台湾はどこに向かうのか?

 第5章 台湾ポップス(TW-POP)シーン

 エピローグ

 

(2)朝鮮と台湾では同じ日本統治下にありながらなぜこうも状況が

違うのかについて、本文中から少し抜粋しましょう。

韓国は、千年以上も大陸の中国文明を受け入れてきた歴史があり、

その文明形成過程では、日本より先んじていたという誇りがあった。

筆者はその歴史的誇りこそが、韓国をして、日本支配に対する強烈な

反感を呼んだと考える。

台湾の人々は、オランダも中国も日本も、横一線で、どの国の統治が

台湾に一番恵みを与えてくれたか、という純粋な比較論を展開し易か

ったのではなかろうか。

その比較論の中では、日本の統治時代が圧倒的に高い評価を台湾の

人々から得た。

素直に統治国の努力と実力を評価する南国の人々特有のおおらかさが

台湾を親日に導いたと考えられる。

P153-154 

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今回の台湾は、少し違う切り口

2.ピックアップ

特筆すべきは、嘉義農林ナインの民族構成である。
日本人(大和民族、内地人)、台湾人(漢民族本省人)、高砂族(山地先
住民族、蕃人)の三つの民族が揃った「三族共和」のチームが生まれ、
民族の違いを乗り越えて一つになって戦ってい映画に感動を付与し
ている。   P80
(michiコメント:この話は1931年だそうです。なぜか私は、90年弱
    の 月日を経たラグビーワールドカップのジャパン「One  Team」
  連想しました。)
  
魏徳聖監督、映画『KANO』、李登輝元総統との対談 から)
かつて日本と台湾は同じ国だった。
そして日本人と台湾人は、甲子園大会優勝という同じ目標を抱いた
こともあった。
そのことをいま、日本人に知って欲しい。 P83
 
台湾にとっての1990年代は、日本にとっての1960年代、韓国にと
っての1980年代、中国にとっての2000年代のように、希望に満ち
満ちた時代であったろう。
(中略)
若者たちにとって、夢が持てることこそが重要で、その実現なんて
二の次だった。    P110
 
台湾人が自分たちを中国人と差別化しようとするとき、台湾独自
「台湾人意識」に加えて、日本の統治時代に日本人から学んだ
「自己犠牲」、「誠実」、「勤勉」、「責任感」、「遵法」、
「清潔」など、一言に要約すれば「日本精神」の継承を挙げる人
が少なくない。
その理由は、中国人が国民精神としては持ち合わせていないもの
だからである。  P152

 

(第5章 2.山地民族音楽の多様性から)

台湾では現在、全住民族は、平地先住民と山地先住民に分けられ

ており,山地先住民は台湾東部に多く住み、アミ族が最も多く

約18万人である。

 (中略)

言語的には、部族間で使用言語が異なるが、近年では中華民国

公用語である、中国語を話せる人が多い。

しかし、高齢者の中には、日本統治時代の公用語であった日本

語のほしっくりくる人もいる。(中には日本統治時代を懐かしみ

、積極的に日本語を話したがる高齢者もいる。)  P226

 

3. 最後に

私には、新しい切り口での台湾もありました。

なんと言っても、今一番気になるのは、中華人民共和国との、

政治対立関係でしょうか。

台湾本土、台湾海峡のみならず、香港、南シナ海まで話は広が

り、利害関係者は、米国を筆頭に、オーストラリア、日本等々、

こちらも広がります。

私に、何ができるわけではありませんが、継続して注視したい

と、思っています。