1.最近「つげ義春」を二冊ほど
手にしました。いわいるエッセイです。
彼の漫画の方は、遥か昔話ですが、「ガロ時代」の漫画の「必殺する
め固め」を当時親しかった女性の友人から、貸してもらったことを、
思い出しました。
なぜか、「心が疲れているな」と感じるとき、彼の言葉がしみわたり
ます。温泉の話を少し引用すると、
220(つげ義春の温泉)
ノイローゼ(不安神経症)についても、書いています。
「人間の精神は薬で治せるものではないでしょう。人間は関係性の生
き物で関係に規定されている存在ですからね。なので医者は不安愁訴
を軽くする薬を出すだけで根本を治すことはできないのでしょう。」
(つげ義春日記 P351から)
下記2冊から、書評的に少し紹介します。
2.つげ義春の日記
つげ義春/[著]
出版者 講談社 2020.3
(1)昭和50年代、漫画家つげ義春は自作漫画が次々と文庫化され、人気
を博す。
一方で、将来への不安、育児の苦労、妻の闘病と自身の不調など、
人生の尽きせぬ悩みに向き合う日々を、私小説さながらにユーモア
漂う文体で綴っています。
印税が入るようになって、生活が安定してくるのは、いいですね。
妻子、特に子供は自分で稼ぐことができませんから、支えるのは大
変、やはり安定収入が必要です。
(2) 「(私小説)好みについて」
何故作家の生活に興味を持つかというと、私は人生経験も浅く、未熟
で、生き方が下手で、いつも動揺しながら暗闇を手探りで進むよう
に、辛うじて生きている。常に不安で心細く頼りない。そんな時他人
の生き方を見るのは参考になり、慰められ、勇気づけられるからであ
る。とりわけ私小説作家の多くは、不幸な境遇を背負い、経済的にも
恵まれない例が多いので親近感を覚えるのだ。
(P335 あとがき)
2.つげ義春の温泉
つげ義春/著
出版者 筑摩書房 2012.6
(1)1960年代末から70年代にかけて、日本列島の片すみにあった温泉宿
を探して、青森、秋田、福島など、東北を九州を旅しています。
「ひなびた」という日本語がしっくりきます。
文庫の末尾には「農村の湯治場に集う人々の表情や、絶望的に静かな
雰囲気を見ごとに写し取った作品は、忘れられた貴重な記録」と書い
ています。うまいですね。
私が若い頃、1980年代に、タイや台湾の田舎を旅した時のことを
今になって感じますが、急速に変わっていく世界にあっては、
(2)私が知る1980年代のタイや台湾の郊外の風景は、今日は存在し
ないかもしれません。
以前も書きましたが、私は「旅の写真」をとっていません。
「心眼」で見ている、といつもうそぶいています。
いずれも私の記憶の中にあるだけでしょう。
4.最後に雑感
冒頭に、「懐かしい」と書きましたが、私の読書遍歴からすると、
それは事実です。
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