中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

反脆弱性(読書感想文もどき) ストレスやリスクをばねに、反脆弱性を取得

脆弱性

不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

原タイトル:Antifragile

ナシーム・ニコラス・タレブ/著  

望月衛/監訳  千葉敏生/訳  

出版者    ダイヤモンド社 2017.6

1.概要

「万にひとつ」が、明日来る。「絶対ない」は、絶対ない-。

国家経済、金融から、人生、愛まで、社会の行く末から、生き残る

仕事、学ぶべき知識まで、私たちはこれからどう生きるべきか。

すべてに使える思考のものさし「脆弱/頑健/反脆弱」をもと解き

明かす、というのが要約でしょう。

 言葉を変えると、

ストレスやリスク、変化や圧力をバネにして向上していく反脆弱性

身に付けるべきで、それこそが今これからを生きる私たちにとって

要な力である、ということです。

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「脆さ」をイメージしたイラストです。

2.本文から

派っとする、文言が目につきます。

私の理解可能な範囲で、少し引用します。

 

反脆いものは、長い目で見れば予測ミスから利益を得る。この考え

に従うならランダム性から利益を得る多くのものが今日の世界を支

配し、ランダム性から害をこうむるものはとっくになくなっている

はずだ。実を言うと、それが正解だ。 (上巻  P29)

 

私が唯一従っている現代の格言は、ジョージ・サンタヤーナのもの

だ。「人間は、妥協のない誠意をもって世界を判断し、ほかの人々

を判断してこそ、道徳的に自由といえる。」これは目標ではなく、

義務なのである。 P42

 

成功、経済成長、イノベーションが、ストレスに対する”過剰補償”

によってしか生じないのかもしれないという考え方は、私たちの

常識の範疇にない 。  P75

 

不思議なことに、今まで私たちにいちばん利益をもたらしてくれた

のは、私たちを(”アドバイス”などで)助けようとした人たちでは

なく、私たちを意図的に傷つけようとして結局は失敗した人たちな

のだ。 P97

 

抑圧され、自然な無秩序に飢えたシステムは、脆いがゆえに、ゆく

ゆくは崩壊する運命にある。ところが、崩壊しても、脆さのせいに

されることはない。むしろ予測が間違っていたことにされる。P221

 

研究にどれだけ大金を注いでも、革命を予測するのはトランプのカー

ドを数えるのとは訳が違う。人間は、政治や経済を、制御可能なブラ

ックジャックのランダム性に置き換えて考えることなど、永久にでき

ないだろう。P224

 

アメリカの財産は、一言でいえばリスク・テイクとオプション性の使

い方にある。アメリカは合理的に試行錯誤する驚くべき能力を持って

いる。失敗し、やり直し、また失敗しても、そんなに恥をかくことは

無い。それと比べて、現代の日本はどうだろう。失敗は恥になる。

から、人々は金融や原子力のリスクを絨毯の下に隠そうとする。

な利益のために、ダイナマイトの上に座ろうとする。朽ちた英雄、つ

まり”高貴なる敗北”に敬意を払ってきた昔の日本とは、奇妙なくらい

対照的だ。  P283

 

 そもそも運動というのは、トレーニングというストレスに対する反脆

さを利用して、利益を得ることに他ならない。つまり、どんな種類の

運動も、突き詰めれば凸効果を利用することなのだ。

  下巻 P72

 

磁器のカップから、有機体、政治システム、会社の規模、航空機の遅

れまで、どの分野を取ってみても、脆さは非線形的なものの中にある

。さらに、発見のプロセスは、”反赤字”とみなすことができる。(中

略)発見のプロセスは、ランダム性を嫌う脆い状況とはちょうど逆な

のだ。  P88

 

よい非対称性(正の凸性)が存在し、オプション(選択し)が特殊な

ケースであれば、長い目で見るとまあまあうまくいき、不確実性があ

れば、平均を上回ることができる。不確実性を増すほど、オプション

性の果たす役割も増し、成績は一層よくなる。この性質は、人生にと

ってとても重要な意味を持つ。 P104

 

彼は、本物のアイディアというのは必ず、同じ分野の大部分の

人が専門化や形骸化のせいで完璧に見落としている、一つの核心

的命題に凝縮できると、考えている。

たとえば、宗教の戒律はみんな、煎じ詰めれば「自分がしてほし

くないことを他人にするなかれ」という黄金律を、改良、応用、

翻訳したものだ。ハンムラビ法典の根底にもこの理屈があった。

P294

 

すべてのものは変動制によって得または損をする。脆さとは、

変動性や不確実性によって損をするものである。   P294

 

アルベールカミュの小説『ペスト』では、ある登場人物が小説

の完璧な書き出しを探すのに半生を費やす。その文章が見つか

ると、本は完成したも同然だった。すべてはその書き出しの派

生物に過ぎないからだ。

ところが、一文目の意味を理解し、味わうためには、本を最初

から最後までよまなければならない。  P294

 

生き物は変動性が好きだ。自分が生きているかどうかを確かめる

いちばんの方法は、「自分は変化が好きか?」と自問することだ。

食べ物は空腹が無ければ味がない。成功は努力がなければ、喜び

は悲しみなければ、確信は疑念がなければ意味がない。そして、

倫理的な生活は、個人的なリスクを伴わなければ価値がない。

P297

  

 3.最後に

著者のタレブは、「ブラック・スワン ― 不確実性とリスクの本

質」の著者として有名です。

私たちは必死に世間一般で良いとされている安全策や仕事に飛び

つこうと用心しますが、予測も付かない大きな事態であるブラッ

クスワンのような急激な変化には対応できません。

「脆さ」を避け「反脆弱性」を身に着けるしか、ないのでしょう。

ウイットのある文章で、少し笑えましたが、彼我の読書量の差異、

頭脳の差異はいかんともしがたく、今回も悔しい一冊でした。