昨年1月10日から 「読書感想文もどき」に至らなかった「敗戦記」
というのをアップしていますが、今回27回目です。
私の現在形として、本を読める環境というのは、変わっていません。
ありがたいことです。
イラストもあえて、同じものを使用、趣旨も同じで、硬軟とり交ぜ、
読者への何らかの参考となればと・・
1.1984
原タイトル:Nineteen eighty‐four
ジョージ・オーウェル/[著]
田内志文/訳
出版者 KADOKAWA 2021.3
言語も思想も管理された近未来世界。
過去の捏造に従事するウィンストンは、記憶と真実を留めるた
め、密かに日記を書き始めます。
伝説の反逆組織の男に声をかけられた彼は、禁断の本を入手し
ます。
歴史の真実を求めて、文字通りもがき苦しみますが、最後は
ビック・ブラザーに象徴される全体主義思想及び組織に、降伏
することになります。
極限状態になると、平均的人間の意志の力なんぞ、弱いものです。
ディストピア小説の傑作といえます。
私は本書も、数々の解説や引用で目にするものの、結果として若
いときや熟してからも通読したことは、ありませんでした。
学制から社会に出て、一通り生活の糧を得て、生きてきていまや、
「人生の最終コーナー(?)」と書くまで来て、改めて「自由」
の大切さを考えている日々です。
状況設定もさることながら、心理描写に「近未来」を感じました。
2.鳥類学は、あなたのお役に立てますか?
川上和人/著
出版者 新潮社 2021.3
一般的紹介は、下記の通り。
行く手には火山に台風、サメにハエ。それでも鳥の研究をする
のは、楽しいから。他に理由が必要かい?
知られざる理系蛮族「鳥類学者」の著者が、抱腹絶倒、命がけ
の日々を綴る。
私の感想は、
確かに、学問としては地味で派手さはない分野ですが、川上さん
の文章の面白さ、表現の面白さは、ピカ一だと感じています。
一部引用します。
営利と縁遠い研究は民間企業には難しい。このため基礎研究は
しば しば公的機関の手に委ねられる。研究者にとっては国家
は、ひいては基礎研究者は、科学的発見という娯楽を国民の皆
様に提供するために召し抱えられた宮廷音楽家出ある。 P229
3.福田恆存評論集 第1卷
福田恆存/著
出版者 麗澤大学出版会 2009.9
一匹と九十九匹と
「文芸評論家」といっていいのでしょうか。福田恆存の執筆です。
戦後の混乱の中、政治と文学の峻別を説いた「一匹と九十九匹と」
のほか、独創的な芥川龍之介論、太宰治論を掲載。あわせて、戦前
・戦中に執筆された未発表論考2編も収録した1冊です。
読解が難しくて、「一匹と九十九匹と」を繰り返し読んだだけで
全体の通読には至りませんでした。
内容が、私には、やはり難しい。
保守論客としての福田恒存なのでしょうが、明治からずっと日本は
混乱している、理由は、「事実の断片のみであり、思想・哲学がな
かったから」とは、鋭い指摘と思います。
「一匹と九十九匹と」から、感じた「政治と文学の相違」について、
九十九匹の側に立って行う政治に対し
たとえば、全体主義に取り込まれない一匹がいたとして、その一匹
側に立つのが文学と、述べています。
文学は一匹に寄り添う、やはり規範からの逸脱者皮に立つものであ
り、文学は少数者のための存在、なのでしょう。
4.一目置かれる知的教養日本美術鑑賞
秋元雄史/著 ゙
出版者 大和書房 2019.5
絵巻物、水墨画、狩野派、浮世絵等、最低限の教養として知っておく
べき日本美術の定番作品や作家を厳選。
日本美術の大きな流れや、世界がなぜ注目しているのかが分かる。楽
しめる鑑賞法も紹介する、という解説です。
私は下記の「プロローグ」の言葉に弱いのです。
世界は日本美実に注目しています。本書では、最低限の強要として
知っておくべき定番作品や作家を厳選しました。さらに、「一枚
の絵」としての日本美術の奥深さを感じているもの選んでいます。
1760年まれの葛飾北斎のエピソードから引用
88歳の長寿で他界するまで、生涯にわたって絵を描き続けた北斎
は、死を前に市得t「せめてもう10年、いや、あと5年でもいい。
生きることが出来たら、私は本当の絵を描くことが出来るのだが。」
と嘆いたと言います。 P160
以下少し抜き書き
〇知的な鑑賞手法から
「空間の連続性」を好む 「ミニチュア」を好む
「対」を好む
〇日本美術は、「ファンタジー」
〇3つの味わい方
「余白の美」を楽しむ 「線」を楽しむ
「振り幅の大きさ」(両極端の表現)を楽しむ
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