中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

21世紀の啓蒙(読書感想文もどき) やはりデータをもとに、自分の頭で確り考えること

f:id:xmichi0:20200605190027j:plain

小さな自分だが広く大きく考えたいとの願望をイメージ

21世紀の啓蒙 下

理性、科学、ヒューマニズム、進歩

スティーブン・ピンカー/著  

明美/訳  坂田雪子/訳  

出版者    草思社 2019.12

 1.概要

知の巨人ピンカーが綴る、事実に基づく希望の書。

人々の知能、生活の質、幸福感、平和…。

多くの領域が啓蒙の理念と実践により改善されてきたことをデータを

用いて明らかにし、無根拠な「衰退の予言」の欠陥を指摘しています。

「暴力の人類史」もそうですが、

暴力の人類史(読書感想文もどき) なるほど暴力は減少している、まず知ることが大事 - 中高年michiのサバイバル日記

結論は割と単純。

データを用いて、一つ一つありがちな誤認を解いていきます。

思うに、昨今の新型コロナ感染症報道もそう。

とかく悲観的にセンセーショナルに報道すると、視聴者の関心を引き

ます。

意地悪に言うと、そこには報道の公平性・倫理性をあまり感じません。

しかしこれは、「データをもとに、自分の頭でしっかり考える」こと

への、良い反面教師みたいなモノですね。

 2.ピックアップ

緻密で一つ一つ膨大なデータと、論理に戻付き、解明していきますので、

網羅的にすると、それこそ膨大になります。

はじめにお断りは、私が、特に気に入った部分の抜粋となります。

今回は下巻に限定した、引用とします。

18章 幸福感が豊かさに比例しない理由

幸福を感じている人々が今を生きているのに対し、意義ある人生を送

る人々には語るべき過去があり、未来に向けた計画があるということ

だろう。

あるいは、意義はなくても幸せを感じて人生を送る人々は受け取る人

(テイカー)で、を受ける側であり、たとえ不幸を感じても意義ある

人生を送る人々は与える人(ギバー)で恩恵を施す側ともいえるかも

しれない。  下巻P76

 

今や私たちには、「一国のなかで比べると裕福な人ほど幸せを感じて

おり、国年で比べると豊かな国ほど幸せを感じ、国が豊かになるにつ

れ国民も幸せを感じる」とわかってってるからだ。

(そして国は時とともに豊かになっているので、人々は時が進むに

つれ、かつての時代よリ幸せを感じている。)  下巻P83

 

不幸の度合いを知るには、自殺率は存外あてにならない。

なぜなら自殺によって悲しみや不安から逃れようとするとき、まさに

その悲しみや不安のせいで、その人の判断力は低下しているからだ。

そのため、生きるか死ぬかの究極の決断であるはずのものが、ただ実

行に移しやすいかどうかという俗っぽい事情に左右されることもよく

起きる。  下巻P94

 

人類にとって最も大きな脅威は何だと思うだろうか?

1960年代の一部の思想家によると、それは人口過剰、核戦争、そして

退屈だった。

(中略)

ここ数十年で「とても幸せ」と回答するアメリカ人は減っているが、

「人生は刺激的だ」と答えた人は増えている。

(中略)

現代人は昔と比べれば幸せだと感じているが、思ったほどではない。

それはおそらく現代人は不安も刺激的な出来事もすべてまとめて

引き受け、大人としての人生を味わっているからだろう。

下巻P114-116

 

第20章  進歩は続くと期待できる

ことわざに「この世に橋と税金以外、確かなものはない」というもの

があるが、ポピュリズムもやはり「死」を迎えるということだ。

というのも、ポピュリズムは老人の運動だからである。

(中略)

20世紀にはどの世代もその前の世代より寛容でリベラルになっていた

からである。

(中略)

沈黙の世代(1925から45年生まれ)と戦後のベビーブーム世代(1946

から64年生まれ)が、このを去るときには、権威主義ポピュリズム

も一緒に消え去る可能性が高い。

下巻P118

  

知的好奇心が旺盛になり、科学知識がみにつくと、人は奇跡を信じ
なくなる。
宗教を捨てたアメリカ人がその理由として最も多く挙げるのも、「
教の教えを信じていないから」である。
すでに述べたように、教育水準の高い国ほど宗教の信奉者が少なく、
また世界中のどこでも無神論とフリン効果は歩みを共にしている。
つまり、ある国が賢くなればなるほど、その国は神に背を向けるよう
になる     下巻391
3.最後にまた感想
今年一月から、というと、もう半年になりますでしょうが。
一連の新型コロナ感染症騒動は、たくさんの人々に、大きな「制約」を
強いました(いや現在進行形ですね)。
私に解るのは、主に日本語情報ですが、まさに情報の「玉石混交」です。
読み解いていって、考え行動するのは、まさに自分自身であり、そのためにも
まず、「玉」に値する情報をしっかり入れないと、と思う次第です。 
 

 

 

自己啓発の観点から書籍通じて先人に学ぶ その4 今回も沢山の視点あり すべては本人の受け入れ方

f:id:xmichi0:20200527152824j:plain

自己啓発観点の書籍からの引用4回目

1.改めて「自己啓発」について

 世の中には、相変わらず、自己啓発サイト、溢れています。

そして、私の見解も相変わらず、以下の通りです。

私自身が、語れることなど、たかが知れている。

しかも「実績がないと同じ言葉でも、読み手の感じる「重み」が全く

違う」。

したがって、先人の言葉の紹介の中で、本人が「自己啓発」と感じる

部分があれば、それでよし。

と言うわけで、本日もいくつか紹介します。

4回目となります。

 2.とてつもない失敗の世界史

トム・フィリップス/著  禰冝田亜希/訳  

 河出書房新社 2019.6

人間はどうしようもないへまな存在という認識で、それを失敗談の

紹介として知的、論理的に、ユーモラスに書かれています。

 私の考えはいつもの通り。

我々人類は、基本あほであり、歴史からよく学んだ、とは決して

言えない。

同じ過ちを感度も繰り返すものだ。

しかし、「未知のこと」を相手に今まで、生命体として何とか滅

びずにやってきたのであり、今後AIが相手でもうまくやってい

けるのでは? との楽観論です。

 3.人類の起源、宗教の誕生 

ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき

ゴリラ研究の第一人者山際さんが、対談の相手です。

彼については、何度か、このブログで取り上げています

AIはデータを集めて処理する検索エンジン

全体的思考とか「可能性を見抜く」ことはできない

確率論で人と付き合うことが、本当に人間といえるか (P107)

 ・身体をもたないAIから主体性がでてくるかどうか (P114)

 ・(山極氏の言うグローバル人材とは)

  自己判断ができる

 アイデンティティをもつ

 危機判断ができる

 他者を感動させる

 の4つが必要(P126)

  ・人間が生きる意味についてAIは答えられない

 今ある特化型AIは、人間の設計したアルゴリズムのもとに

  動いているから)

・肉体から離れた意識は存在しないし、AIは、人類に取って

 代わらないではないか

 4.<死>の臨床学 

超高齢社会における「生と死」  村上陽一郎 / 著

(1)「終末期鎮静」から引用

・(安楽死をテーマとした、アンドレカイヤット監督の仏映画

 「裁きは終わりぬ」から)

「患者を愛する被告にとっては、モルフィネを与えること以上に

 何もできない医学が耐えられなかった」

 ・(森鴎外が「高瀬舟縁起」という小論で、自殺幇助及び安楽死

 の言及していることをふまえて)

 この鴎外の言葉からは、医療・医学の世界では、安楽死は、絶対に

 認められないものではない、むしろ自然な行為の一つとみなされ

 うる、という医学者に比較的ありがちな姿勢を見て取ることが

 できる。(P159)

  (2)「生きるの値する命」から

・医療側か、患者の苦しみに「寄り添い」、「自らのもの」とは

 できないとしても苦しみを「共にする」ことから医療が出発

 すべき(P195)

 5.人種と歴史/人種と文化

クロード・レヴィ=ストロース/[著]   渡辺公三/訳  

 概要は、生物学的進化論を基にして、ある面大流行した社会進化論

を批判しています。

歴史の進歩とは、それぞれ語る側の理屈によるところであり、

相対的なもの。

あらゆる社会に存在する自族中心主義を批判し、徹底した文化の

相対主義を主張しています。

我々に必要なのは、寛容です。

  「どんな基準を取ってみても、ある文化が無条件で他の文化より

優れていると判断することは許されない」(P11)

 私は、生物学的な意味の人間が、神が作った他の生物と隔絶したもの

とは、思っていないし、人類の進歩も、それぞれ、産業革命以降の

今の世界秩序も、「たまたま」の繰り返して現在のようになった

と思っています。

 6. 戦争と外交の世界史 知略を養う

出口治明/著

2.出口さんの考え方

「はじめに」や「おわりに」から出口さんの考え方を、少しピック

アップします。 

(1)「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とビスマルクは言

いました。

 自分の経験だけで考えずに、戦争と条約締結の裏側で展開された

人間模様を学ぶことが、人生の急場を救ってくれるかもしれない。(p4)

 (自分や、大切な人の命がかかっていますから、戦争は真剣その

  もの、その後の交渉含め、そこに人間模様は出ますよね.)

(2) 戦争と外交の歴史は、僕たちの人生の歴史と合わせ鏡のような

 関係にあるような気がします。

 財産や恋人をめぐる争い、横暴で強欲な隣人や上役との人間関係

 などそれに対応する知恵もまた、 戦争と外交の歴史の中に隠さ

 れています(P362)

  (3)(不本意な異動の際世界史の知識が役立ったという事例)

 実に多くの優秀な政治家や軍人が、理不尽な理由で左遷された

 り殺されたりした事実を知っていたからです。

 絶望しないためには、世界の知識を広く深く身につ付けている

 こと、理不尽な状況に置かれても自分を失わないタフネスは、

 豊富な知的財産から生まれると思います。(P365)

 7.最後に

したり顔で、私がどうこう解説するより、まず、いろんな考え方に

たくさん触れることでしょう。

出来れば、ある程度の評価が固まっている書籍が、そのなかに含まれ

るといいと思います。

自分が賢くなるためには、「賢い」と思っている人の考え方をたくさ

ん知ることが、一つの道だと、改めて思います。


 


 

雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型へ 総論では解るが各論は様々、個々人で何とか生き残るべし

f:id:xmichi0:20200610121429j:plain

資本に働いてもらうのでなく、ヒトの労働力の使い方の話

1.働き方も変わる、ただし徐々に。
「コロナ以降、働き方がメンバーシップ型からジョブ型や新形態に移

行が加速か?」とも、とよく巷で言われているようです。

今日は、「資本に働いてもらう」のではなく、「ヒトの労働力を、本

人がどう使って稼いでいくか」の話。

私見の結論は、

大きな組織もジョブ型正社員がますます増えるのでは?

  地域限定社員とか、ジョブの一部適用とか)

・ダブルワーク、トリプルワークがますます広がるのでは?

というもの。

一般的な見解を紹介し、そのあと私見を書いてみたいと思います。

2.メンバーシップ型雇用とは

(1)私は、この労働形態が「日本で一般的」とは思っていません。

但し、大企業中心に、雇用人数が多いのは確かであり、「経営学の解

説」が好むところでしょうが、いわいる高度成長期から今までの日本

経済を引っ張ってきた雇用形態の一つだとは、認めています。

メンバーシップ型雇用は「人に仕事を割り当てる雇用の形」です。

日本特有の「年功序列」や「終身雇用」、「新卒一括採用」など制度

前提の雇用方法です。

 (2)メンバーシップ型雇用の特徴

職務         職務や勤務地などは限定されない

採用         新卒一括採用や定期採用

雇用保障        強い

給料         職務遂行能力によって決まる=職能給、年功によって

      昇進がある

教育         OJTや研修など社内教育が多い

メンバーシップ型雇用では、専門知識を持っていない新卒の学生を雇

用します。

社内研修やOJT(On the Job Trainig)を行い、仕事に必要な技能を身

につけさせます。

 職務範囲や労働時間、勤務地は限定されていません。会社が転勤や

残業を命じれば、労働者は従わなければなりません。

(3)メンバーシップ型雇用の3つのメリット。

➀ 雇用の安定

   職務の範囲の取り決めがない。 

   業務がなければ即解雇ということはない。 

②手厚い教育

  「終身雇用」が前提、企業に従業員を育てる意識あり。

  新卒研修や、中堅社員のスキルアップ研修などあり。

③職能による給料支払

  職務遂行能力を基準に給料が支払われる「職能給」が特徴。

  職能は勤続年数が長くなれば向上すると考える前提がある。

 そのため年功に応じて給料が上がっていく。

 (4)メンバーシップ型雇用のデメリット

 ➀会社都合の転勤や転属、残業がある

  仕事内容、勤務地、働く時間に明確な取り決めなし。

  仕事の範囲が不明瞭、長時間労働につながりやすい。

②「年功序列」や「終身雇用」などの前提条件が揺らいでいる 

  従業員は会社の転勤や残業などの命令に従う、交換条件として

 昇進や昇給があり、「終身雇用」で長期間の雇用が約束。

2.ジョブ型 雇用とは

(1)「仕事に人を割り当てる雇用の形」といえる。

 「日本以外の多くの国で採用されている雇用方法」という

 説明の仕方が多いが、私見では、実際は「ジョブディスクリプ

ション(職務記述書)」があまり 明確でない、雇用形態は、日本で

も多いと覆う。

(2)ジョブ型雇用の特徴

職務         職務や勤務地が限定されている

採用         欠員補充時に募集をかける

雇用保障           弱い

給料         職務によって決まる=職務給

教育         社内教育は少ない

ジョブ型雇用では、「ジョブディスクリプション(職務記述

 書)」で職務や勤務地、労働時間などを明確に定めて雇用契約

 を結ぶ。

・労働者は、ジョブディスクリプションに書かれていない命令に従う

 義務はなし。例えば、転勤や職務の変更、残業など。

・労働者は、特定の仕事(ジョブ)を得るという意識で働く。

 また、給料は職務の内容によって定められている。

職務が限定されているので所属している会社でのキャリアアップや

 昇給は滅多にない。

 そのため一つの会社で3年ほど働いたらキャリアアップのために

 転職。

 人材の流動性が高くなる特徴がある。

 (3)ジョブ型雇用の5つのメリット

 ➀自分の能力を活かし、深められる

   働く人のスキルと仕事内容とにミスマッチが生じない。

②スキルや経験で給料が決まる

   経験豊富でスキルがあって結果を残せる人ほど高収入を得ら

   れる。

   職務を遂行できる能力さえあれば、若くても重要な仕事に就く

   こととなるす。

③新鮮な経験や考え方の取り入れ

   人材の流動性が高いので、会社にいる人の顔ぶれが頻繁に変化

   し、多様な経歴を持つ人材と出会える環境になっている。

長時間労働になりにくい

   ジョブディスクリプション(職務記述書)で労働条件が詳細に

   決まっている。

  労働者は、契約にない残業や業務、転勤をする義務はない。

⑤欠員が出た際に最適な人材を確保しやすい

  企業としては、求める人材に出会いやすくなる

  労働側は、「自分にマッチした仕事や会社を見つけやすい

(4)ジョブ型雇用の5つのデメリット

➀職場内でのキャリアップが難しい

   職場内でのキャリアアップは、自分がスキルアップした際に

     ちょうどよくポストが空いていなければ実現できない。

  そのため、キャリアアップの手段は転職。

②職務がなくなった際に、解雇されやすい

  会社の方針転換や経済状況が変化した際に、契約終了になる可能

  性が高い

スキルアップは自分次第

   労働者は社外で主体的にスキルアップの努力をする必要あり。

④新卒者は仕事を得にくい

   就職の際に自分ができることをアピールできなければ希望する

  仕事には就けない。

⑤契約にない仕事を依頼するのは難しい

  次の人を確保できるまで仕事が止まってしまう。

3.新しい道、おそらく折衷型 

 ジョブ型、メンバーシップ型に次ぐ新しい形が模索されています。

 (1)ジョブ型正社員

 ➀「ジョブ型正社員」とは、職務、勤務地、労働時間のいずれかの

要素(又は複数の要素)が限定されている正社員のこと。

 (※一般的な正社員は無限定正社員と呼ばれている。)

 ②ジョブ型正社員は以下のような人たちのニーズを解決めざす。

  ・専門スキルを活かして働きたい人

 ・専門スキルを磨きづつけたい人

 ・転勤をしたくない人

 ・子育てをしながら働きたい人

 (2)タスク型雇用

   プラットフォーム・エコノミーに代表されるように情報通信技術

  が  発達し、ジョブ型雇用でなくともスポット的に人を使えば

  物事が回るのではないかという声が急激に浮上している。

   アメリカでは今まさにジョブからタスクへの変遷が起こってい

  る。

    タスク型が広がっていくと、プラットフォームの創造者とプラ

  ットフォームを利用する労働者に2分化されるかもしれない。

(3)ホラクラシー

  ホラクラシーとは役職や肩書、上司・部下などの関係が存在しな

  い  フラットな組織の形。

 中央集権型のヒエラルキーとは真逆な考え方。

 4.私見はやはり年代別対応

(1)メンバーシップ型とジョブ型を対比させると、講学上の説明

としては解りやすいですが、「実務家」として、渦中にいた一人の

感想は少し違います。

「雇用条件は折衷型、というか、いいとこどりが常に行われてきた。

組織が収益を維持し生き残っていくは大変であり、常に試行錯誤状

態」だったかと思います。

とはいえ。技術革新、人口動態の少子高齢化、コロナ問題といった契

機等々の要因で、徐々にですが、日本の雇用市場も変わっていくこと

でしょう。

(2)年代別に対応を見てみましょう。

なお、流れにそっって、自営業者の方でなく、雇用される側「サラリ

ーマン・サラリーウーマン」を前提とします。

➀20代から40代前半といった相対的に若い人

「サラリーマンとは気楽な商売」というのは、過去の歴史的産物であること

を、再認識し個々人の「ジョブディスクリプション(職務記述書)」の充実を、継続させることが必要でしょう。

「本業」が中心であることは、大切ですが、「複数の生活の糧」を

意識することも必要です。

人生は上り坂、下り坂だけでなく、「まさか」は常に起こりえます。

②40歳後半以上の方。

大企業の「45歳定年説」のこだわっている訳ではありません。

私が何度か、書いているホモデウスの話でははないですが、「あなた

の仕事はない」という厳しい現実が突き付けられる、覚悟は常に必

要。

しかし、すでに十分な経済基盤があり「逃げ切り」体制が可能な方

は、別として「もがいている」こととが必要。

(闇雲に、もがくのでなく、「自分に何ができるか」と常に問う。)

オアシスの「逃げ水」のようなもので、「楽な老後」は、あきらめ

ましょう。

できれば前期高齢者くらいまでは、社会に働きかけて、「何らかの

経済的対価」を得られるようにしたいもの。 

株式投資の基礎 10回目です ガバナンス(企業統治)と企業業績の関係は? 上場会社としてルールは守るのは当然

f:id:xmichi0:20200519134454j:plain

形式論でなく、組織や意思決定過程の確りした企業は長期的に儲かりそう
1.ガバナンス(企業統治)は危機の時に生きてくる
今日の結論は、「企業統治がしっかりした企業は、中長期的には儲かる」
というものですが、あまりに「あたりまえ」とおもわれるでしょうか。
先般の東日本大震災や、今回の新型コロナ対応とか、危機管理において、
やはり「ガバナナンス(企業統治)がしっかりした」企業ほど、生き残
っていく確立高いと思います。
とはいえ今、この全容を、データをもとに、論証することなどできません。
株式市場を長く見てきた私の経験と書かいても・・・・これでは、あまり
にいい加減というか、説得性がありません。
そこで、さる雑誌に社外取締役設置が企業業績与える影響
という論説を見ましたので、これをネタに、換骨奪胎的に、少し語って
みます。
 

2.社外取締役設置は収益に影響?

結論は、大会社では、大きな影響?

 (1)成熟企業と、スタートアップで分けて考えます。
・投資機会が限られ、現金を豊富に保有している成熟した企業であれば、
取締役にもっとも求められる資質は独立性であり、
多くの社外取締役を設置することが最適である。
 ・一方で、投資機会が豊富にあるが厳禁が不足しているスタートアップ
のような企業であれば、内部情報が重要であり、事業について理解度が低い
社外取締役が増えると意思決定が非効率になる可能性がある。
 (2)海外事例紹介
英国や韓国など多くの国で最低限の社外取締役人数や比率を定める規制を
実施した結果、その規制を満たしていなかった企業が社外取締役を増員し
それら他の企業で企業業績が向上したことが報告されている。
 (3)素直に、納得
 スタートアップで「役立たずの可能性」は、感覚的に解ります。
 「事業について理解度が低い社外取締役が増えると意思決定が非効率
になる可能性」ということですね。
 
3.日本企業の取締役会の変遷
少し歴史を見てみましょう。
(1)日本企業の取締役会は取締役の人数が多く、
また、取締役のほとんどを社内者が占めてきた。
取締役就任が、生え抜きサラリーマンの「あがり」
意識は、諸先輩の時代は、強かったと思います。
(2)1997年 ソニー執行役員制を導入した。
 38人いた取締役を10名に減らし、取締役を外れたものは
 執行役員にした。
 狙いとしては「取締役会を活性化し、経営の意思決定を
 迅速に行うため」とのことです。
 (3)2003年 トヨタの張社長の発言
社外取締役は現場重視の社風になじまない
良く解ります。
本音ですよね。
 (4)1997年自民党の太田議員の見解
日本企業の取締役会に独立した人がいないのは問題だ。
日本には自己統治能力を欠く企業があり、これを常識的な形に
直すは、取締役会のありかたについても検討が必要
代表訴訟制度の見直しをみすえながら、社外取締役の法制化
の議論を進めたい
 これも、経営者サイドからは出にくい正論ですよね。
 (5)2003年4月の改正商法
新たな期間設計として委員会設置会社が創設
指名委員会、」監査委員会、報酬委員会
委員会の過半数社外取締役が占めなければならない
 (6)東証一部の上場企業の平均取締役人数は9から10人
前後で安定
社外取締役は2004年からに功コーポレートガバナンスコードが
導入される2015年まで、法的な施策はなかったが、徐々に増え
ていった
(7)2015年6月にコードが施行され、少なくとも2名以上の独立
社外取締役の選任が求められ、選任しない場合はその理由を説明
せねばならなくなると、ほとんどの企業が説明を避けて、社外取
締役の選任を進めた。
 
 4.業績比較実験の事例
やり方は、A,Bとグループ分けして
業績の変化を比較することにより、社外取締役の選任が企業業績に与える
影響を推計した。
(A)コーポレートガバナンスコード導入前の時点で社外取締役を1名以下しか
選任しておらずコード導入の影響を受けるグループ
(B)コード導入時点ですでに社外取締役を2名以上選任しておりコーポレート
ガバナンスコード要求を満たしているグループ
(結果と考察)
総資産利益率ROA)や、株主資本利益率ROE)当の業績変化は確認できず。
つまり、明確な差異は出なかった。
考察としては
・コードの導入が遅かったためにすでに社外取締役を選任すべき企業では
 選任が進んでいた可能性
・検証した年数が短い点が
・監査等委員会設置会社への意向などにより実態が変化していな企業が
 存在した。
 5. 実際効果が出たケース
一方で、機関投資家の持ち分が低い企業やファミリー企業のように資本市場
の規律付けの弱い企業では社外取締役の選任が進んでおらず、コードの導入
に伴い社外取締役の選任が進み、企業業績が改善される傾向がみられた。
 
6. 論文の主張と私見
 (主張)
社外取締役は設置しただけでは機能しない
会社側が、社外取締役が情報を取得できる体制を整え、社外取締役本人も
内部情報を獲得するための行動を率先して行うことが必要。
私見)・・・・結びに代えて
 コーポレートガバナンスコードは、経営者にとって「益々窮屈」となりすれ
「緩和」方向にはないようです。
「イヤ」とか、「耐えられない」なら。上場廃止すれば、ということで
投資家にとっては、結果として、「市場に残ってる企業」はより確りした
投資に耐えうる企業になってくると思います。
 

日本の思想(読書感想文もどき) 丸山真男です 中高年の方は、昔「現代文の試験」で苦しめられた?

f:id:xmichi0:20200530181401j:plain

政治学、日本政治思想史の丸山真男、イラストは東大

日本の思想 

丸山真男/著  

出版者    岩波書店 1992.2

1.概要(感想ぶくみ)

タイトルにも、書きましたが、この本からの抜粋で、よく国語の「現

代文」の試験問題ができたとか。

「懐かしい」と言う方も多いのでは?

手元の岩波新書に「1961年11月20日第1刷発行」とあります。

「現代文」の試験とは言え、もう60年近くになるわけですね。

現代の「古典」と言ってもいいのでしょう。

なお、論文形式はともかく、講演会形式は、問題が作りやすいのかも

しれません。

さて、考えてみると「日本の思想」とは、新書形式の著作にしては、

たいそうな響きも感じますが、丸山真男ですからね・・・・

まえがき冒頭に下記文章があります。

外国人の日本研究者から、日本の「インテレクチュアル・

ヒストリィ」を通観した書物はないかとよく聞かれるが、

そのたび私ははなはだ困惑の思いをさせられる

 それなら、私が書こう、というこでしょうか。

2.目次

Ⅰ 日本の思想

Ⅱ 近代日本の思想と文学

   一つのケース・スタディとして

Ⅲ 思想のあり方について

Ⅳ 「である」ことと「する」こと

3.ピックアップ

 Ⅰ 日本の思想

むしろ過去は自覚的に対象化されて現在の中に「止揚されないからこそ、
それはいわば背後から現在のなかにすべりこむのである。
思想が伝統として蓄積されないということと、「伝統」思想のズルズル
べったりの無関連な潜入とは実は同じことの両面にすぎない。 P11
 
 異質なものを思想的に接合する俗流化した適用、を論じたあと
「無限抱擁」してこれを精神的履歴のなかに
「平和共存」させる思想的「寛容」の伝統にとって唯一の異質的なも
のは、精神的雑居性を否認し、世界経験の、論理的および価値的な秩
序を内面的に強制する思想。
明治のキリスト教、大正末期からのマルクス主義  P14,15

 Ⅱ 近代日本の思想と文学

日本ではまさに体系とが概念組織を代表していたのが、へーゲルでな

くてマルクスであった。

だからこそ小林秀雄は「意匠」によって武装された、「思想の制度」

としてのマルクス主義と主義者に激しく敵致しつつ、通貨形態をとら

ぬ前のマルクスエンゲルスの個性的思考と「文体」の前に脱帽し、

またコトバとなった弁証法を極度に忌み嫌う反面において、曰く言い

難い究極のものに絶句したあげく奔り出た逆説としての弁証法を認めた

のである。  P118

 Ⅲ 思想のあり方について
近代日本の学問とか文化とか、あるいはいろいろな社会の組織形態と
言うものがササラ型でなくてタコツボ型であるということが、先ほど言
ったイメージの巨大な役割とということと関係してくるんじゃないかと
思うわけです。  P120
 
われわれの国におけるこういう組織なり集団なりのタコツボ化は、封
建的とかまた家族主義というような言葉で言われますけれども、単なる
封建的とかまた家族主義とかいった、いわば前近代的なものが、純
粋にそれ自体として発現しているというより、実は近代社会における
組織的な機能分化が同時にタコツボ化として現れるという近代と前近代
との逆説的な結合としてとらえなければいけないんじゃないか。
P139
 
全体状況についての鳥瞰をいわばモンタージュ式に合成していくような、
そういうテクニックと思考法というものを、われわれが要求されている
んじゃないか。   P150
Ⅳ 「である」ことと「する」こと
この規定の根拠には、権利の上に長く眠っているものは民法の保護に
値しないという趣旨も含まれている、というお話だったのです。
この説明に私はなるほどと思うと同時に、「権利の上にねむる者」と
いう言葉が妙に印象に残りました。   P154
 
私たち日本人が「である」行動様式と「する」行動様式とのゴッダ
返しのなかで多少ともノイローゼ症状を呈していることは、すでに
明治末年に漱石がするどく見抜いていたところです。  P175
 
 現代日本の知的社会に切実に不足し、もっとも要求されるのは、
ディカル(根底的)な精神的貴族主義がラディカルな民主主義と内面的
に結びつくことでないかと。     P179
4.最後にまた感想
何回読んでも、難しい。
長い一文の中に、単なる言葉のいい替えでなく、範囲を限定したり、
条件を明確にしたりして、文章の密度を高めるともに、より解り易く
したいとの、筆者の意図は解るのですが、何せ私が意図する概念につ
いていけない、正確に把握できない部分多々です。
読んでいて、頭脳の筋力トレーニングをしているように、感じます。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

日本の思想【電子書籍】[ 丸山真男 ]
価格:814円 (2020/5/30時点)

楽天で購入

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

日本の思想 岩波新書 / 丸山眞男 【新書】
価格:858円(税込、送料別) (2020/5/30時点)

楽天で購入

 

「消えゆくトレーディングフロア コロナ後も在宅勤務で」 という記事から思うこと 転機だった

f:id:xmichi0:20200608145854j:plain

トレードしている個人投資家のイメージ


1.証券会社のトレーディングという業務

2020/6/8 2:00日本経済新聞 電子版なのですが

「消えゆくトレーディングフロア コロナ後も在宅勤務で」

 という記事がありました。

消えゆくトレーディングフロア コロナ後も在宅勤務で :日本経済新聞

容易に想定される話であり、業界や当該業務に特に「思い入れ」が

ない場合、「アタリマエ記事」の印象でしょう。

しかしながら、リアルによる主題されていると思えて、少し、引用

させてもらいます。

(1)記事趣旨は以下の通り

 ・大きな部屋のトレーディングフロアにずらりと並んだ端末と人間

 新型コロナウイルスの感染拡大で、そんな証券会社のトレーダーの

 働き方が一変している。

・3月以降、在宅勤務を余儀なくされ、今もなお多くが継続する。

・分かったのは、当初は在宅では困難と思われたトレーディング業務

 が問題なくこなせるという事実だ。

・在宅で生産性が上がったとの見方も多い。

・コロナ収束後もトレーダーたちの働き方は元には戻らず、証券各社

 が都心の一等地に構える広大なトレーディングフロアは不要にな

 る可能性がある。

(2)証券会社のトレーダー観点

 ・結論は、「在宅でも支障なく(トレーディング業務が)こなせ

  る」 ようだ。

・従来は

  会社のトレーディングフロアでは4枚のコンピューターのモニター

 画面に映し出されるマーケットのデータやニュースをくまなく

 チェックし、 机を並べるチームのメンバーたちと声を掛け合って

 注文をこなしてきた。

・ 現在彼は、

 会社とほぼ同等の装備で在宅勤務をこなす

  チームのメンバーが隣にいなくても、ビジネス用チャットやビデオ

 会議システムなどを使ってリアルタイムでコミュニケーションを交

 わせる。

 顧客との間で通信がダウンしても、他のメンバーが即座にカバー

 してくれる。

トレーダー本人の感想

「スペースの制約でモニターの数が1枚少ないのにはちょっとストレ

スを感じるが、それ以外はおおむね支障なく仕事をこなすことができ

る」

「在宅で仕事の質は落とさない一方、生活の質は改善した」

(3)組織(証券会社)の視点

・フロアの勤務人数は平時の15%となった

 野村証券では、大手町本社が入るアーバンネット大手町ビル

(東京・ 千代田)の3~4階を打ち抜いた巨大な株式トレーディング

フロアに、

 300人を超える社員たちがずらりと机を並べて働いてきた。

・2月下旬、野村は社会や社員の安全を高めるためだけでなく、コロ

 ナ禍に動揺するマーケットに流動性を与え続けるためには、多少

 無理 があってもトレーダーを在宅勤務に移行させるしか選択肢が

 ないと判断して準備を進めた

・出社するのは、自己勘定取引や複雑な店頭デリバティブ(金融派生

商品)取引の執行など、在宅ではどうしても難しい業務を手掛ける

約3割の社員に絞った。

その出社組も半数の社員は都内の別の場所に設けたバックアップ

オフィスに勤務地を変え、大手町のトレーディングフロアは平時の

15%の社員しか出社しないようにした。

 他の大手や外資系も同様の動きのようだ。

(4)相手方(お客さん)のほうは?

証券会社に注文を出す機関投資家も状況は同じだ。

野村証券が4月10~14日に株、債券、為替を運用する100人超の

機関投資家にアンケート調査したところ、完全に在宅勤務に移行

した人は27%、週に数日だけやチーム内の一部だけという部分導入

を含めると、全体の93%が在宅勤務に移行していた。

(5)社内の評価と今後の想定 

・在宅のほうが生産性高く、なっている(後述)

・(足元でなく)その先はどうか。

 証券各社は「長期的にみてもコロナ前に戻ることはない」と口を

 そろえる。

「トレーダーの在宅勤務が想定していた以上に機能することが今回

 わかった。

 働き方の選択肢として、在宅勤務は残していく」と話す。

・背景には、通勤時間がなくなることで在宅のトレーダーの生産性

が上がったという認識がある。

「在宅比率が高まった後のほうがむしろ社員のパフォーマンスは良く

なっている。

セールス担当の社員が通勤に使っていた時間を活用して新たな提案

資料を作成し、大きな注文の獲得につなげた例もあった」。

 「コロナの影響で企業の決算説明会や対面取材がビデオ会議に置き

換わり、出張や移動にかけてきた時間を別に生かせる。

調査対象企業数を増やすことが可能になり、多くがこのまま在宅

勤務を積極的に活用したいと言っている」。

「在宅勤務には、これまで無意識に続けてきたムダな仕事をあぶり

出す効果があった」

 (6)人材の育成は難しく

もちろんデメリットもある。

「在宅勤務では難しいことがひとつだけある。人材の育成だ。」

2.今後をにらむと

(1)電子化時代の必然かと思われる。

電子化の流れは、以前から継続して続いてきたが

99年4月に東証は立会場を廃止。

取引所の注文処理は完全に電子化され、物理的な場としての株式

市場は事実上消滅した。

今では投資家の発注と証券会社の執行も多くがコンピューターで

自動化され、株式取引の大半は全く人の手を介さない電子空間内の

データ処理になっている。

 (2)タイミングの問題

・フィジカルな場だった20世紀の株式市場の記憶を辛うじて残す証券

会社の巨大なトレーディングフロアがいずれ消えるのは、電子化の歴

の延長線上でおきる時代の必然だろう。

今回のコロナ禍は、そのタイミングを少し早めただけにすぎない。

3.感想と私見

誰しも、かつて自分が知っている業界や業務の変遷には、関心がある

でしょう。

上記記事もそうですが、いろんな変革の中で、今回の問題が起こり、

結果として、変化を速めているとの分析には同感です。

確り取材している様子です。

上記記事で、「今回のコロナ禍は、そのタイミングを少し早めただけ

にすぎない。」とありますが、いろんな業界でも言えます。

おそらく、将来の人簿とが、歴史とて現時点を振り返ると、

「あの頃が転機だった」という事象は、いくつも出てきそうに、

思います。

アンダルシーア風土記(読書感想文もどき) 神話時代からコロンブスまで「定点観測」による通史ですね。

f:id:xmichi0:20200525153414j:plain

アンダルシーアにあるアルハンブラ宮殿です

アンダルシーア風土記

著者       永川玲二/著  

出版者    岩波書店 1999.7

1.概要

著者によると「スペイン文化を見て回る日本人旅行者のために案内

記」の依頼を受けたことから始まったようですが、出来上がりは

ヨーロッパの最南端、スペインのアンダルシーアに視座を据えて、

現代の目で世界史の焦点のひとつを通史的に見直そうとしたエッ

セイです。

著者の深い知識と教養、考え方、スペイン定住の環境等が、重なって

漸く完成のエッセイですが、私には、「ある土地の歴史書」の感覚

です。

 2.ピックアップ

アンダルシーアは不運にもその(ローマとカルタゴの)初幕から終幕

まで檜舞台として利用され、一進一退の戦況とともに両軍が何度も念

入りに町や村を踏みにじって行くという拷問を味わう羽目になった。

 (P17)

 

長い目で見ると、成長期のイベリア文化史のなかで最も重要な、決定

的な時代はスキピオ以降の三百年だったと言えるだろう。  (P23)

 

シーザー32歳、初めてアンダルシーアに来る。

ヘラクレス神殿の中でアレクサンダー大王の彫像をつくづく眺めなが

ら、彼は憮然としてつぶやいた。

「ああ、この男はこの年頃には世界を征服していたのに、俺はまだ何

一つめざましいことをやっていない。」   (P30)

 

セネカのこと)

その最後の一節に、「私としてはもう十分に長く生き、できることは

やったから別に心残りはない。今や死を待つのみ」とある。

かつて宰相だったころには、ストア哲学の信奉者として禁欲の倫理を

力説しながら金銭に汚い偽善者だと非難されていたけれども、死に臨

んでは少なくともストア派の美学を守りぬいたといえるだろう。

(P36)

 

 こうして社会全体の危機と不安が深まるにつれて、人々はローマの軍

事力や体制より宗教を頼りにし始める。

とくに重税と不況とに苦しむ商人、職人、小農民や兵士、女性、奴隷

など下積みの庶民のあいだでは信仰のキリスト教が着々と地盤を広げ

つつあった。 (P43)

 

ゲルマン諸族が権力の座についてからも、ローマ帝国いらいの社会体

制は七世紀の終わりころまでほとんど無傷のまま残っていた。

ほんものの天災地変がおこるのは八世紀前後である。

イスラム教徒が地中海の制海権を握ったため、西欧圏では貿易、産

業、都市生活もラテン語文化も給食に衰え、地域ごとに閉ざされた

貧しい封建社会へと変貌せざるを得なくなった。 (P70)

 

少なくとも十六世紀の末ごろまで、ヨーロッパでは王族どうしの結婚

が国際情勢を左右するきわめて重要な事件だった。

それによって国と国とが合体したり分裂したり、大戦争が起こったり

する。 (P143)

 

どちらもアルフォンソの言語政策を見習って、公文書までラテン語

なく日常の口語で書かせることに決めた。(中略)

庶民の英語をまるで理解しない貴族のほうが多かったのだから

、みんな英語にしろと言うのは思い切った大改革だ。

しかし、この時期(13世紀のこと)に敢えてそれをやったおかげで

英語は複雑な文語から単純明快な口語にまで何にでも使える語彙豊富

な柔軟な言葉になって行く。  (P182)

 

(ペストの猛威)

最初にペストにやられたのはイスラム勢のほうである。

そのせいで恐慌をきたした兵士たちは、敵方にちっとも患者が出ない

のはキリスト教のおかげだろうと思ったらしく、にわかに改宗しはじ

めた。

しかし間もなく再転向するケースが多くなったのは、カスティージャ

側にもペストが蔓延したからだ。   (P198)

 

 彼女(イザベル)の際立った特徴

①公明正大、信賞必罰

人を見る目がおそろしく的確だったこと

③民衆の心のなかで死後にまで残る根強い人気

ルネサンス末期の戦国乱世には史上に名高い女王や王がたくさん登場

したけれども、名声の根強さと広さにおいて彼女に匹敵しうるのは

イギリスのエリザベス1世だけではないだろうか。  (P228)

 3.感想

 下記の出口治明さん野本記載の紹介でした。

彼ほど、歴史のタテヨコが頭に入っている訳でないので、著者永川さ

んの深い素養に基づく「アンダルシーアからの定点観測」をどれくら

い理解したのか心元ないですが、「面白かった」と、出口さん張りの

感想を述べても、いいでしょう。

我々は、当然現在の視点から、「舞台」を見るわけですが、踊り手で

ある当事者は、みな問題解決のために必死。

歴史とは、その積み重ねなのでしょう。 

4.最後に

出口治明さんの一文です。

「本書は実に人間味あるれる良書ですが、残念ながら絶版なので、

図書館や古本屋で入手してください。」

私も図書館から入手。

よって下記に楽天での紹介はありません。