敗者の生命史38億年
著者 稲垣栄洋/著
出版者 PHPエディターズ・グループ 2019.3
PHP研究所(発売)
1.概要
主張はシンプルです。
「38億年に及ぶとされる悠久の生命の歴史の中で、最終的に
生き残ったのは常に敗者の方だった。」
時代を謳歌し繁栄極めていた勝者ではなく、いつの時代も片隅に
追いやられた敗者が、逆境を乗り越え、大逆転劇を演じてきた
ことが繰り返し述べてありますが、とても読みやすく、
「なるほど」の連発です。
著者が、植物学者であることも、従来読んだ本と視点が違い
ました。
なぜ植物は動かないのか。
どうして細胞分裂でなく受精で個体を増やすのか。
なぜ性はオスとメスの二つなのか。
寒冷化に対する落葉樹と針葉樹の戦略の違い。
樹木と草ではどちらが進化しているのか。等々
地球の歴史を振り返り、画期的な生き残り戦略を生物に学ぶ
ことになりました。
2.目次
プロローグ 敗者が紡いだ物語・・・・・38億年前
競争から共生へ・・・・22億年前
単細胞のチーム・ビルディング・・・・10から6億年前
動く人ようがなければ動かない・・・・22億年前
破壊者か創造者主か・・・・27億年前
死の発明・・・・10億年前
逆境の後の飛躍・・・・7億年前
捲土重来の大爆発・・・・5億5千年前
敗者たちの楽園・・・・4億年前
フロンティアへの進出・・・・5億年前
乾いた大地への挑戦・・・・5億年前
そして、恐竜は滅んだ・・・・1億4千年前
恐竜を程ぼした花・・・・2億年前
花と虫の共生関係の出現・・・・2億年前
古いタイプの生きる道・・・・1億年前
哺乳類のニッチ戦略・・・・1億年前
大空というニッチ・・・・2億年前
サルのはじまり・・・・2千6百万年前
逆境で進化した草・・・・6百万年前
ホモ・サピエンスは弱かった・・・・4百万年前
進化が導き出した答え
あとがき 結局、敗者が生き残る
3.ピックアップ
争い合うよりも助け合う方が強い。
これが厳しい
自然淘汰の
中で生命が導いた答えである。
祖先との細胞内における共生だつたのである。 (P28)
(なぜなら、世界でもっとも繁栄しているから) (P33)
大きな変化と過酷な環境が生命を著しく進化させた。
これだけは、事実なのである。
生命は過酷な環境でこそ変化を遂げるのである (P40)
生物の選んだ3つの道
共生を行わなかったもののうち、細胞壁を選択したのが菌類
持たなかったものものが動物、それぞれの祖先 (P47)
生命の38億年の歴史の末に、進化の頂点に立った人類が、
誕生以前の古代の地球の環境を作りつつある。(P57)
この「死」の発明によって、生命は世代を超えて命のリレーを
つなぎながら永遠である続けることが、可能になったのである。
永遠であり続けるために、生命は「限りある命」を作りだした
のである。
(P77)
(時代の強者から逃げ延びる過程で)
我々の祖先は海から汽水域に追われ、川へ逃れ、さらには陸上
に逃れた。
(P91-95)
(隕石による絶滅前に、すでに恐竜時代のピークは過ぎていて)
末期の恐竜たちは追いやられた
裸子植物ともに見つかるという
(P152)
生物学の分野でニッチは「ある生物種が生息する範囲の環境」
(P155)
(哺乳類が爬虫類や鳥類に後れを取っていることを受けて)
何かに挑戦するときに、ゼロであることほど強いものはない
のかもしれない。
何も持っていなかった哺乳類は、様々な環境にあわせて時代
に変化していったのである。 (P165)
すべての生物は、オンリー1であり、ナンバー1でもある。
地球のどこかにニッチを見出すことができた生物は生き残り、
ニッチを見つけることができなかった生物は滅んでいった。
自然界はニッチをめぐる争いなのである。(P195)
(戦いはダメージを受けるし、逆境を克服するエネルギーを奪
われてしまうという説明を受けて)
できる限り「戦わない」というのが生物の戦略の一つになる。
(P198)
生物の歴史を振り返れば、生き延びてきたのは、弱きものたち
であった。そして、
常に、新し時代を作ってきたのは、時代の敗者であった。
そして、敗者たちが逆境を乗り越え、裕福の時を耐え抜いて、
大逆転劇を演じ続けてきたのである。 (P211)
4.まとめ
著者の主張に、改めて納得。
我々人類も、いつか滅ぶのでしょう。
「地球の覇者」となったのは、38億年の歴史からすると、ほんの
短い期間であって、
その人類が、「地球を守ろう」「生物を守ろう」というのは、
上から目線の実に僭越なこと。
人類が滅んでも、そらく地球は存在するし、次の「覇者」が君臨
していることでしょう。
そしてずっと後になり、地球は膨張する太陽に飲み込まれてしま
うのでしょう。
日々の自分の苦悩の小ささを、改めて感じいった次第です。