中高年michiのサバイバル日記

世の中のこと、身の回りのこと、本のこと、還暦の中高年がざっくばらんに書きつける日記

捨てられる宗教(読書感想文もどき) 自分が生きてきた証を何かに求めて

捨てられる宗教

葬式・墓・戒名を捨てた日本人の末路

島田裕巳/著  

出版者    SBクリエイティブ 2020.9

1.概要

島田裕巳さんは、昨年11月に「仏教」について取り上げています。

とても分かりやすい本です。

教養として学んでおきたい仏教(読書感想文もどき) 私にとって仏教は身近 - 中高年michiのサバイバル日記

今回は、長い長い、人類史の中で「生死観の転換が起こった」話です。

未曾有の長寿社会が生まで、結果として信仰に力が急激に、全世界的

に弱まっていくことを、よく示しています。

社会で何が起こっているかを、綿密に分析しながら、誰もが逃れられ

ない生き死にの問題とどのように向き合っていけばいいのか、を問う

ています。

明快な結論が出る話ではありません。

まず、「生死観の変化」を自分の深いところで、捉えることですね。

 

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宗教の役割が変化しつつあります。

2.本文からの引用

 葬式が減った理由

 ・高齢で亡くなると、家族以外に参列者がいない

 (同年代は既に亡くなっているか、病院で動けない、とか)

 ・企業が葬式にかかわらなくなった

 ・経済環境が悪化し、葬式にかねをかけられない人が増えた。

 ・葬式の簡素化が著しく進行した   P44‐47

 

 戦後は(寺院の)世襲の傾向が、その寺の子弟が継ぐことが多く

なったが、檀家が減れば、子供も住職の道を選ぼうとしなくなる。

これから地方を中心に、ますます寺院が消えている事態が起こる

かも知れない。P62

 

トランプ大統領の支持基盤となったアメリカの福音派は、むしろ

中西部の農村地帯に多いが、それは例外で、経済発展が続く国では

福音派は拡大する。

(中略)

経済発展が止まり低成長の時代にはいって、都市化にブレーキがかか

ると事態は変わる。  P73-74

 

神道系や仏教系の既成教団の信者数減も衝撃だが、新宗教の信者の減

り方もすざまじい。(中略)

その原因は、さまざまに考えられるが、大きな理由としては、信者の

高齢化と世代交代の失敗があげられる。  P75

 

宗教は、新宗教を含め、すでに時代遅れのものになっている感があ

る。宗教は用済みになったのかもしれない。日本の宗教は、今や間違

いなく消滅の危機にさらされているのである。  P80

 

生死観A 寿命の短い時代

「いつまで生きられるかわらない」   p92

 

今の私たちは、長寿を持て余すようになっている。人生のあまり長さ

に、かえって不安を感じるようになっている。そんな時代は、これま

で訪れたことがなかった。 P104

 

生死観B

90歳くらいまで生きることを前提に人生設計しなければならない。 P107

  

宗教が生まれたのは、生死観A の時代においてである。それが生死観B

へと転換すると、当然ながら宗教は力を失っていく。人生110年時代

になれば宗教がその力を維持することは難しい。人々は宗教に期待を

持たなくなっていくのだ。  P112

 

宗教は、死後の世界が実在するとし、よりよい世界に生まれ変わるた

めには現世において善行を重ねることが必要であると説いてきた。

今や、そうした宗教の最も重要な武器が通用しなくなっている。

日本の既成仏教が、さらには新宗教が大きく信者を減らすのも必然的

なことである。 P125

 

死生観Bの時代に入った以上、私たちはアリになるしかない。キリギ

リスのように先を考えなければ、未来のは苦しみが待っている。

それがわかっている以上、私たちは未来のことを、長い老後のことを

常に念頭において行動しなけれがならない。死生観Aの昔に戻ることはできないのだP144

 

日本人の信仰の核心には祖霊に対する信仰、祖先崇拝があり、それは

仏教からの影響で生まれたものでなく、伝統的で固有のものだという

のが柳田の主張であった。 P188

(michiコメント:なるほど、祖先崇拝は仏教徒は無関係ですね。)

 

今や家庭のあり方は変わり、それぞれの家からは先祖がいなくなっ

た。家自体が長く続くものでなくなってしまった以上、その家を作り

上げた先祖などいなくなる。

先祖になるという目標が失われた生死観Bの世界で、私たちはどうや

って生きていったらいいのか。  P190

 

死にたくはない。けれども、生きている甲斐はない。死後に、あの世

に生まれ変わることを楽しみにすることも現代人には不可能である。

厄介な時代になったものである。  P228

 

大切なのは、 世界を理解することである。何かを納得できたとき、

私たちは自分の生が決して無駄なものではなかったあことを知るの

ではないだろうか。   P235

 

 3.私の感想

 当たり前のことを書いているが、ショックを受けた本です。

よく知っているが、目をそらしていたことを、改めて突き付けら

ました。

生死観は変わりました。「いつ死ぬかわからない」から、「死に至る

までスケジュール化された人生を歩むしかないのでしょう。」

となります。

恥ずかしながら、自分に引き直すと、「かねの問題」が一番大きい。

一日も早く、対応しておくべき、とは頭でわかっていても・・・。

「ゆっくり身体中に毒が回ってくる」ような読後の快感はなく、

「現実の冷や水」をかけたら「参った」という気分です。

巻末はいいですね。

私も「自分の生が決して無駄ではなかった」と、言いたい。

これからも、長い長い闘い。